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「IoTビジネス共創ラボ」が3年間の取り組みを説明、さまざまな活用事例を紹介
2019年1月23日 06:00
東京エレクトロンデバイスや日本マイクロソフトなどが中心となって活動している「IoTビジネス共創ラボ」は22日、2016年2月の発足から約3年を経過したことにあわせ、これまでの取り組み状況などについて説明した。
東京エレクトロンデバイス クラウドIoTカンバニー バイスプレジデントの福田良平氏は、「いくつかの公表できる事例ができたほか、ワーキンググループの活動成果や、地方版IoTビジネス共創ラボの動きも活発化している。だが、一般会員を1000社にしたいという目標に対しては到達しておらず、もう少し活動を積極化していく必要がある」と、これまでの活動を総括。
「AIやMicrosoft HoloLensなどを活用した事例も生まれている。4年目の活動としては、IoTとオープンデータを連携させた予測ソリューション、Dynamics 365などの業務システムとIoTを組み合わせたソリューションなど、クロステクノロジーによる事例の創出に取り組みたい」と抱負を述べた。
IoTの普及促進の役割を担うことを目指して発足
IoTビジネス共創ラボは、“IoTソリューションの実現には多くの企業の連携が必要である”ことを前提に、IoTエキスパートによるエコシステムの構築、プロジェクトの共同検証によるノウハウの共有、先進事例の共有によるIoT導入促進などを通じ、「日本におけるIoTの普及を促進していく役割を担うことを目指し、発足した」(東京エレクトロンデバイスの福田バイスプレジデント)という。
当初は、日本マイクロソフトを含め14社で発足。東京エレクトロンデバイスが幹事会社、ユニアデックスが副幹事会社となり、日本マイクロソフトが事務局を務めている。
2016年2月の発足と同時に、「ビジネス」「分析」「製造」「物流社会」「ヘルスケア」の5つのワーキンググループを設置したほか、同年7月には「Pepper」ワーキンググループを設置。2017年5月には「ドローン」ワーキンググループ、2018年1月には、仮想現実やMR(Mixed Reality)などを対象にした「xR」ワーキンググループを発足し、活動範囲を広げている。
2019年1月21日時点では、一般会員が560社779人、Connpass登録会員が3411人、Facebook登録会員が1237人となっている。
IoTビジネス共創ラボを起点とした事例を紹介
続いて、IoTビジネス共創ラボを起点とした事例についても説明された。
東京電力パワーグリッドでは、山岳地域や僻地での送電線の保守においてIoTを活用し、ヘリコプターやドローンで撮影した画像をもとにAIを利用して送電線の外観を分析している。
具体的には、画像データから送電線の異常/正常を判定するディープラーニング(深層学習)のシステムを構築し、レポートを自動生成して保守作業に生かすという仕組みだ。テクノスデータサイエンス・エンジニアリングが開発を担当し、人手では労力が伴う点検作業の効率化を実現したという。
エムティーアイでは、解析システムで生成されたタンパク質の分子構成の三次元データを、HoloLensに表示。日本国内の複数の拠点や海外拠点を結ぶことで、研究者同士の情報共有を図り、効率的な研究開発を行う体制を確立したという。
さらに立教大学では、HoloLensを使って、学生と教授が同じものを見ながら授業を進められる環境を用意した。ここでは、3Dプリンタ用に作成したデータをHoloLensに展開することで、大きさの変更や付帯情報を空間に表示できるようにした。いずれも、ナレッジコミュニケーションが開発を担当している。
石川県加賀市では、除雪車の運行管理に、Azureを利用した北菱電興の除雪車運行管理システム「SNOPLO I(スノプロアイ)」を導入。スマートフォンで取得したGPSデータや画像データをクラウドに蓄積し、リアルタイムでの運行状況把握や、報告書管理の効率化を実現しているという。
「除雪対象路線を除雪していることを確認したり、除雪に関する住民からの要望や苦情に対応するために除雪車の位置を確認したり、作業会社からの報告書や請求書などを管理したりできる。パナソニックのタフブックを除雪車のフロントガラスに設置。除雪したあとの写真も撮影し、Azureのデータセンターにデータを蓄積して、自動的にレポートを作成できる。除雪作業後の写真撮影や手書きの日報がなくなり、従来と比べて大幅な効率化を図れる」とした。
こうしたIoTビジネス共創ラボを起点とした案件は、活動に参加する企業が持ち込んだり、日本マイクロソフトから提案が持ち込まれたりといった例のほか、IoTビジネス共創ラボに窓口機能を用意しており、ユーザー企業が相談に訪れるといったこともあるという。
この3年間の間に、さまざまな形でIoTビジネス共創ラボを起点とした事例が生まれているとのことで、すでに2けたの実績があるようだ。
「IoTビジネス共創ラボは、技術的な研究だけでなくビジネスにつなげることを前提とした活動を行っており、会員間で事例を共有して社会課題の解決に貢献したい」としている。
地方版IoTビジネス共創ラボも複数発足
また、地方版IoTビジネス共創ラボを発足する動きも活発化しているという。
ふくしまIoTビジネス共創ラボ、北海道IoTビジネス共創ラボ、中部IoTビジネス共創ラボ、かわさきIoTビジネス共創ラボに続き、2018年には3つの地方版IoTビジネス共創ラボが誕生した。2018年6月に柏の葉IoTビジネス共創ラボ、9月に石川・金沢IoTビジネス共創ラボ、みやぎIoTビジネス共創ラボがそれぞれスタートしている。
このうち柏の葉IoTビジネス共創ラボは、千葉県柏の葉エリアを拠点とし、IoTビジネスに対する意識の高い企業や個人などによりコミュニティを形成。Microsoft AzureをプラットフォームとしたIoTプロジェクトの事業化支援、実証実験、実装支援、地域課題の解決などに取り組んでいる。
「柏の葉エリアは、三井不動産が開発しており、ドローンワークスとともに、三井不動産にも幹事会社に入ってもらった。街のなかに、センサーを設置したいという場合にも、三井不動産にサポートをしてもらっている。さらに、柏市の商工振興課や東京大学にも運営協力として携わってもらい、環境、物流、ヘルスケアの各ワーキンググループを設置して活動を開始している」という。
また石川・金沢IoTビジネス共創ラボは金沢エンジニアリングシステムが、みやぎIoTビジネス共創ラボはSRA東北がそれぞれ幹事会社を担当。各地域での課題をIoTを用いて解決する活動を開始した。
この2つのIoTビジネス共創ラボでは、まだワーキンググループが設置されている段階ではないが、石川・金沢IoTビジネス共創ラボでは同ラボ起点の事例が生まれるなど、すでに成果が上がっているという。