大河原克行のキーマンウォッチ

次の目標は国内パブリッククラウド市場でのトップシェア――、日本マイクロソフト平野拓也社長

 日本マイクロソフトの2018年事業年度(2017年7月~2018年6月)がスタートしている。新たな目標として、2020年には国内パブリッククラウド市場において、リーディングシェア奪取を掲げ、今後、25~30%のシェア獲得を目指す。

 約15年ぶりとなる大規模な組織改革によって、クラウド時代の組織体制をスタート。これによって、クラウドビジネスをさらに加速させる考えだ。

 2015年7月の社長就任以来、3年目に入った日本マイクロソフトの平野拓也社長に同社の事業戦略について聞いた。

日本マイクロソフトの平野拓也社長

ビジネスは想定通りに進んできた

――2015年7月に社長に就任してから2年を経過しました。この間、日本マイクロソフトはどう変わりましたか。

 振り返ってみると、ビジネスは想定通りに進んできたといえます。2017年度はすべての四半期で目標を達成しており、すべての営業部門において目標を達成しています。この点では「花丸」をもらえたのではないでしょうか。

 クラウドビジネスに関しても、多くの製品がそろい、チームが自信を持ってクラウドを提案できる体制が整ってきました。Microsoft AzureやOffice 365はもちろんのこと、EMS(Enterprise Mobility+Security)といった管理、セキュリティ製品、そして一昨年は苦戦していたDynamicsも目標を達成しています。

 社長就任時には7%だったクラウドビジネスの売上構成比は47%となり、まさに、メインストリームのビジネスになってきました。Azureに関しては、まだAWSとの距離はありますが、アプローチの仕方が、ひとつのスタイルとなって構築されつつあります。技術的に見ても、機能や品質面において、劣るどころか勝るところが出てきており、パートナーもお客さまもAzureに対して強い関心を持っていただいています。

 かつては、Azureが商談のテーブルに載らないということもありましたが、2017年度を振り返ると、AzureとAWSの名前が横並びで挙がるということが普通になってきています。市場におけるAzureの存在感が明確に変わってきているのです。

 先日もパートナー企業を訪問した際に、「Office365に加えて、Azureのビジネスがやりやすくなってきた」、あるいは「Azureという言葉がお客さまの方から出てくるようになってきた」という声をいただきました。

 まだまだチャレンジャーではありますが、2年前とはまったく状況が異なるといえます。

社長就任時には7%だったクラウドビジネスの売上構成比は47%まで伸びた

――Azureに対する市場の意識変化は、なにかのきっかけによるものですか。

 特に大きなきっかけがあったというわけではありません。とにかく地道に(笑)、取り組んできた成果ではないでしょうか。CSP(クラウド・ソリューション・プロバイダー)プログラムによって、パートナーがマイクロソフトのクラウド製品を取り扱いやすい制度を用意したり、教育を積極的に行ったり、ISVをはじめとして新たなパートナーに参加していただいたりといったことに加え、日本マイクロソフトの営業部門は、必ず一度はお客さまにAzureの話をし、実際に触っていただこうということを徹底しました。

 さらに、エンタープライズレベルの信頼性を実現しているという評価が浸透してきたことも見逃せません。昨年度は、Azureをクラウド基盤として活用したSAPソリューションマイグレーションサービスを積極的に展開し、SAPのリプラットフォームがかなり進みました。これが進展した背景には、Azureが実現しているエンタープライズレベルの信頼性が認められ、ミッションクリティカルでも活用できるという安心感が生まれてきた点が挙げられます。また、こうした成果を事例として発表することができ、多くのパートナーやお客さまに訴求できたこともプラス効果になっています。

 IoTビジネス共創ラボといったコミュニティの活動も追い風になっています。IoTビジネス共創ラボは、10社を発足メンバーとしてスタートし、1年後には100社の参加を見込んでいたものが、それをはるかに超える企業の方々に参加していただいています。

 このように、ひとつのきっかけというよりも、いくつかの要素が絡み合って、Azureに対する評価や存在感が高まっているのではないでしょうか。パートナーとも、新たに大きな仕掛けの話も出ていますし、チャレンジャーとして、これからもクラウドビジネスを加速していきます。

お客さまやパートナーの関心が高い領域にフォーカスしていく

――コミュニティへの取り組みでは、「Industry"x-Biz"Community」を新たに展開していくことを発表しました。野村総合研究所やFIXERを中心に、金融デジタルイノベーション・コンソーシアムを2017年9月末に設立し、三井情報やリクルートキャリアを中心にHRTechコミュニティを2017年11月に発足する計画ですね。これはまだ増えるのですか。

 必要なだけ増やしていきたいと考えています。具体的にいくつまで増やすという計画はありませんが、業界を軸にして展開していくものや、IoTビジネス共創ラボのように業界の枠を超えたようなコミュニティも想定されます。

 深層学習についても、業界を超えた取り組みとしてやっていきたいですね。デマンドの多いところ、関心の高いところ、あるいは悩みが多い分野を対象に増やしていきたいです。

 いままでのように、WindowsやOfficeという切り口からのプッシュ型提案ではなく、インダストリーソリューションをドライブしたり、事業にインパクトを与えたりするためには、お客さまやパートナーの関心が高い領域にフォーカスしていく必要があります。それに基づいてコミュニティを設置していきたいですね。

 具体的にどんなコミュニティを増やしていくのかは未定であり、その点では「無計画」ともいえますが(笑)。

 クラウドやAIを取り巻く市場は成長期にありますから、それに対して、アジリティ、スピードを持って対応していくという姿勢が、無計画の理由です(笑)。

――パートナー向けには、Partner Success for Japanと呼ぶ新たなパートナー支援プログラムを開始することを発表しました。この狙いはなんですか。

 AIやMR(ミックスドリアリティ)に関するパートナー向けのトレーニングに関して厚みを増し、技術情報を提供していく狙いと、キーとなるインダストリーに展開しているパートナーを中心に、マーケティングリソースを積極的に投下していくことが狙いです。基本的には、米国で開発したパートナープログラムを中心にしたものになりますが、日本独自の密着した内容を加えていきたいと考えています。

「社会変革に貢献する」という言葉に込めた思い

――平野社長か、就任以来掲げてきた「革新的で、親しみやすく、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」という、日本マイクロソフトが目指す企業像の姿を、2017年7月以降、「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジを通して、日本の社会変革に貢献する」と変更しました。社会変革という言葉を加えて、「クラウドとデバイス」を「インテリジェントテクノロジ」に置きかえました。特に、平野社長がこだわっていた「喜んで」という言葉を無くした点には驚きました。新たなメッセージへと変更した狙いはなんでしょうか。

 これは正直悩んだところでした。できるだけ言葉を残したいと思い、「喜んで」という言葉を使いながら、社会変革という言葉を加えたりしたのですが、それで長くなってもかえってわかりにくくなりますし(笑)。

 今回のメッセージでは、「社会変革に貢献する」という言葉にいろいろな思いを込めました。日本の社会自体が大きな変革期にあります。デジタルトランスフォーメーションを通じて、日本の社会や企業の変革にどれだけ貢献できるか、そして、その成果に日本マイクロソフトはこだわっていきたいと考えました。それによって、喜びというものが達成できるのではないかと思っています。

 お客さまと話せば話すほど、お客さまもわれわれも変わらなくてはいけないという危機感を感じます。これはこの2年間の大きな変化だともいえます。そこで、今回、目指すべき企業像のメッセージを変更したわけです。

 また、「クラウドとデバイス」を「インテリジェントテクノロジ」へと言葉を置きかえたのは、これまでの「モバイルファースト、クラウドファースト」から、新たに打ち出した「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」にのっとったものだと理解してください。

 ミッションは変わるものではありませんが、世界観は変わっていくものです。今回の新たな目指すべき企業像は、それを反映したものです。

Microsoftと日本マイクロソフトが目指す企業像を変更している

クラウド時代の組織への変革

――2017年7月から、「クラウド時代の組織」と位置づける新たな体制をスタートしました。これは約15年ぶりの大規模な組織改革となりましたが、経営トップとして、新体制の「ハンドル」を握ってみて、約2カ月間の手応えはどうですか?

 7月は「運転」というよりも、「エンジンの組み立て」という段階でしたね。ここの部品が足りないので調達しないといけないとか(笑)。また、8月は夏期休暇もありましたので、8月下旬からようやく「試運転」という感じでしょうか。

 従来の組織は、WindowsとOfficeを売るための組織であり、その体制のまま、クラウドビジネスを行ってきました。自転車のパンクしたタイヤに20カ所くらいパッチを当てて、無理やり走っていたという感じです。これを、クラウドビジネスを中核とした組織へと変更しました。

 新たな組織においては、社員がどれだけ仕事がやりやすくなったかという点が重要であり、それによって、プロセスが簡便化され、スピード感を持って、パートナーやお客さまのニーズに対応できるようになることが大切です。そして、その結果、パートナーやお客さまから「よくなったね」と言われないと意味がありません。

 現時点では、パートナーに、なにが変わったのかということを理解していただく段階であり、そうした言葉を言われるまでには、少なくとも半年程度の時間がかかるでしょうね。

 従来のパートナーとの話し合いは、「いつまでに、これを、どれぐらい売ってください」という話が中心でした。そのためには、何人に対してトレーニングして、イベントを何回開催して、それをどう支援しましょうか、ということになりがちでした。

 しかし、新体制になってからは、「今後どんなソリューションに注力しますか」、「それにマイクロソフトのテクノロジをどうあわせていきましょうか」、「そのソリューションをマーケットに対してどう展開していきますか」ということになります。

 日本マイクロソフトの各事業本部が一緒になって、市場にアプローチしていく体制へと変化しています。そして、インダストリーイノベーションとして、金融、流通、製造、政府・自治体、教育、ヘルスケアにフォーカスしていくことになります。

 Azureを売るとか、AIを売るという発想は、お客さまにとっては何も意味もありません。どのインダストリーに向けて、どんなソリューションを提供するのか、それを一緒にやっていくための組織となります。従来の売り方、従来の付き合い方から大きく変わるという点で、新たな組織はインパクトをもたらすと考えています。

――インサイドセールス事業本部を新設しました。この狙いはなんですか。

 インサイドセールスは、以前から行っていましたが、インサイドセールス事業本部は、これまで外部委託していたものを内部に取り込み、それを独立組織としたものです。そして、直販を強化するものではありません。むしろ、パートナービジネスの強化につながるものになります。

 いままでのやり方は、ユーザー企業に電話をして、「Officeはご存じですか?」「いまOfficeを使われていますか?」「いまならば、3%安くなりますよ」というものでした。つまり、Officeを売るという発想でした。

 しかし、クラウド時代の売り方は、Officeを売るのではなく、お客さまのビジネスモデルを変えることを支援するというものになります。その場合に、外部委託ではどこまで対応することができるのか。そこに限界を感じました。インサイドセールス事業本部には、テクニカルユニットも組み込みました。

 いままではキャンペーンや価格の提案であったものが、スキルを持った社員が対応することで、ビジネスモデルの変革の提案が行えるようになります。同じインサイドセールスという名称ではありますが、その中身はまったく違うものになります。

 また、インサイドセールス事業本部では、AIの積極的な活用も行います。これは、米国本社で約2年間実証していたもので、コールの回数や内容、お客さまのプロファイルやパターンをもとに分析し、最適な提案を行うことができます。

 米国本社では、このAIエンジンを活用するのとしないのとでは、勝率に大きな差が生まれることが実証されています。日本では、まだ活用を始めたばかりですから、今後、日本の市場にあわせて形でエンジンを進化させていかなくてはなりませんが、そこでも日本マイクロソフト社内にインサイドセールスを取り込んだメリットがあります。このエンジンはブラッシュアップして、将来的には、日本の社会変革への貢献のひとつとして、お客さまに使っていただきたいと考えています。

 日本マイクロソフトは、ほぼ100%がパートナービジネスです。インサイドセールス事業本部を通じて、これまで以上に質が高く、バリューを持った案件を発掘し、パートナーとの協業をより加速させたいですね。いまはまだ第1段階であり、すでに第2段階に向けた準備も始めています。インサイドセールスを内部に取り込んだことで、これまで以上にパートナービジネスの拡大に貢献したいと考えています。

クラウドビジネスが日本マイクロソフトのメインストリームに

――2017年度末(2017年6月末)までに、クラウドの売上構成比を50%にするという目標を掲げ、これはほぼ達成されました。次の目標は、2020年に、国内パブリッククラウド市場でリーディングシェアを獲得するということになりますね。

 50%の目標に対して47%という結果でしたから、「インチキではないか」という声もありますが(笑)、クラウドビジネスが日本マイクロソフトのメインストリームになったという点で、本質的なところは実現できたと考えています。

 また、これまで正式には言及していませんでしたが、3%の未達の裏には、Windows 10搭載デバイスが予想以上に売れたという点があります。これはうれしい誤算でした。そして、次の目標として対外的に示しているのは、2020年に、国内パブリッククラウド市場でのリーディングシェア獲得ということになります。

 3年前の日本マイクロソフトシェアは6位でしたが、いまは2位や3位というポジションまで上がってきました。ただ、1位のAWSとの差はまだあります。

――どれぐらいのシェアが目標になりますか。

 調査会社によってデータが異なるのですが、いまは、12~13%のシェアであり、これを、2020年には25~30%にまで引き上げる必要があります。それによって、リーディングシェアを獲得できると考えています。シェアは倍増ですが、市場はどんどん拡大していますから、売上高では倍増以上の伸びをしなくてはいけないということになります。つまり、クラウドビジネスはこれまで以上の成長を見込まなくてなりません。

――手応えはどうですか。

 数年前までは、日本のクラウドビジネスの成長率は、海外を大きく下回っていました。しかし2017年に入ってから、海外の成長率を日本が上回るようになりました。日本のマーケットが、米国市場に比べて2、3年遅れで広がりを見せるという典型的なパターンのなかに入ってきたともいえます。

 クラウドを活用して、なにを達成するのかということを真剣に考えるお客さまが増えていますから、そこにマイクロソフトのクラウドサービスが最適な解として提供できると考えています。日本は、人口減という課題を抱えており、働き方改革やクラウドの活用が待ったなしの状況にあります。その点でも、日本でのクラウドビジネスの成長が期待できます。

 バニラ(平凡な)のような箱だけを提供するデータセンターはどれだけ価値があるのかということを考えると、私は、この2、3年で、真のクラウドサービスを提供できるベンダーがかなり絞られてくると見ています。

 そこに日本マイクロソフトは存在感を発揮できます。Office 365では圧倒的なシェアを持っていますし、Dynamics 365もマイクロソフトならではの差別化できる製品です。そして、Microsoft 365によって、これまでとは比べものにならないボリュームが期待できます。

 まだまだクラウドの活用は始まったばかりです。大企業、中小企業を問わず、多くのビジネスチャンスが存在します。例えば、Office 365は、2020年までに2倍以上の企業に入るのではないかと想定しています。

 これまでは、いつでも、どこでも仕事ができるという提案でしたが、いまでは、よりクリエイティビティな仕事をするために、仕事のやり方を変え、生産性を高めるためのツールに位置づけられています。これまでとは異なるアプローチが始まっているのです。

 またDynamics 365に関しても、これまでの売り方とは異なってきました。従来のCRM製品のように、カスタママネジメントやセールスマネジメントにとどまるのではなく、そこから得た情報をもとに、誰が、どのタイミングで、どういったアクションを取るのかという点が大切であり、Dynamics 365へと進化したことで、マイクロソフトのノウハウ、ソリューション、テクノロジを活用した次世代のCRMを提供することができます。Office 365が幅広く活用されていることも、Dynamicsのビジネスを加速するための素地(そじ)となります。

――海外では、LinkedInの存在がDynamicsのビジネスに追い風になっていますが、日本では、そのあたりの市場環境が異なりますね。

 確かに海外では、買収したLinkedInの情報を活用することで、Dynamicsのソリューションが強力なものになり、大きなプラス効果になっています。日本では、海外に比べてLinkedInのユーザーが少ないので、メリットは限定的になります。

 一方で、新たに発表したMicrosoft 365のなかにDynamics 365が取り込まれ、統合的な提案ができるようになるという点では、日本においてもプラスの効果が生まれると考えています。

 Microsoft 365は、お客さまの視点で見れば自然な流れであり、個人的には、なぜ、これまでになかったのかという気持ちもあります(笑)。Office 365を使っていれば、当然、セキュリティも必要になりますし、Windowsのバージョン管理もしっかり行いたいという要望も出てきます。

 そして、Dynamics 365との連携により、新たな提案が可能になります。これをひとつのソリューションセットとして提供できるということは、お客さまにとっても大きなメリットがあります。日本マイクロソフトとお客さまが継続的な関係を構築できるということにもつながります。

Windows 10は順調に進ちょく

――2015年7月に、Windows 10の提供を開始して以来、2年を経過しました。社長就任とほほ同じタイミングでの提供開始だったわけですが、Windows 10に関して、この2年間の成果をどう自己評価していますか。

 日本においても、Windows 10のビジネスはうまく進ちょくしていると思っています。大手企業の場合には、導入までに検証期間が必要ですから、最初の1年半はゆっくりとした動きでしたが、2017年4月以降、導入に向けた動きが加速してきています。

 昨年までの間に、日本マイクロソフトが直接PoCに携わったものだけで数百件ありますし、パートナーを通じたPoCはその数倍になります。年度がかわって予算がつき、いよいよ本格導入へと入ってきています。中堅・中小企業やコンシューマ向けのWindows 10搭載PCも順調に売れています。

 Windows 10はひとつのドメインであり、そのなかにPCやタブレット、IoTなどが存在します。PCはWindows 10において重要なもので、2in1 Pcの市場も盛り上がりを見せていますが、その一方で、もはやWindows 10を語るときに、PCだけを指すものではなくなっています。

 今後のWindows 10のエコシステムの構築においては、PC依存ではないビジネスモデルの確立がキーになります。これにあわせて、パートナーとの関係も、次のステージに持っていく必要があります。PCという領域だけで見ると成長は限定的といえますが、デバイスという観点から見れば、今後の成長が期待できます。

 例えば、今後はクルマも、Windows 10が動くデバイスというとらえ方もできるわけです。マイクロソフトは、そうしたWindows 10の新たなエコシステムを支援しながら、Surfaceファミリーによって市場を盛り上げていくことになります。タブレットと2in1 PCが、性能や重さ、バッテリー寿命が同じであれば、生産性の高い2in1 PCを選択すると思います。

――HoloLensを中心としたMRのパートナープログラムを国内で開始することも発表しました。これは日本マイクロソフトにおいて、MRの販売目標が明確に設定されたということですか。

 そう理解をしていただいて構いません。具体的な数字については言及できませんが今後、日本において、積極的に販売をしていくことになります。MRのパートナープログラムでは、米国でのトレーニング、アプリケーションのデザインおよびオプティマイズなどを提供することになります。日本では非常に関心の高い分野ですので、パートナーとともに、積極的に市場を開拓していきます。

――2020年1月にはWindows 7の延長サポートが終了し、2020年10月にはOffice 2010の延長サポートが終了します。これに向けて、早い段階から活動を開始するとの姿勢を打ち出していますが。

 Windows XPのサポート終了時には、「不要な特需」を生み出し、多くのパートナーやお客さまに迷惑をおかけしたという反省があります。それを学習して、2020年に迎えるWindows 7およびOffice 2010のサポート終了に向けたキャンペーンおよびメッセージの発信には、早めに取り組んでいく考えです。まずは、アウェアネス(意識、気づき)の部分に力を注ぐ必要があります。

 振り返ってみますと、Windows XPのときには、特に、中小企業に方々に情報が伝わっていなかったという反省があります。まずはアウェアネスをいかに高めるかが第1フェーズの取り組みになります。もちろん、お客さまによって支援する内容が少しずつ変わってきます。大企業であれば、マイグレーションのための検証支援が必要ですし、中小企業であればWindows 7やOffice 2010を搭載したPCからの乗り換えを支援するキャンペーンも必要でしょう。とにかく、前倒しで進めていきたいと考えています。

 今は、大手企業や公共分野を中心にメッセージングを開始しています。特に公共分野は早く取り組んでいただきたいと考えており、集中的に展開しています。2018年1月には、パートナーにも、新たな環境へのマイグレーションを向けて数多くのメニューをそろえていただき、移行を推進する活動を本格的に進めていきたいと考えています。