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Blue Prism、新たなRPAプラットフォームを提供へ コードを記述せずにAIの組み込みを可能に

 RPAベンダーの英Blue Prismは11日、英国本社のCEOで共同創業者でもあるアレスター・バスゲート氏の来日にあわせ、最新のRPA動向を踏まえた同社の事業戦略、および最新の製品展開に関する記者説明会を開催した。

すべてのRPAが同じではない

 そもそもRPAとは、業務を担当しているチームのメンバーが自分自身で、ITによる業務の自動化を、難しいプログラミングコードを記述することなく実現できる仕組みである。

 すでに国内外の多くのベンダーがRPA市場に参入しているが、老舗のRPAベンダーであるBlue Prismは2001年の創業から着実に成長しており、現在は52カ国、42業種で同社のRPAが採用されているという。また2018年の上半期は前年度より140%成長し、社員数も毎年10%ずつ増えているとのこと。

 バスゲート氏は「Blue Prismが目指しているのは『ビジネス主導型のオートメーション』だ。エンタープライズの用途に耐えうる力を持ち、コントロールできるようなRPAの実現に向けた努力をしてきた。そのため、2008年から2012年の4年間をかけ、私たちの製品の拡張性、耐久力、セキュリティ、コンプライアンス機能を強化し、ロボティックオペレーティングモデルを作成した。これによって、ITによる強いガバナンスやITコントロールが実現した」と述べる。

 また、「このコンセプトこそがほかのRPAベンダーとの差別化要素。Blue PrismのRPAを深く見てもらえば、その哲学の違いが明確になる。競合他社のRPAとはまったく異なるものであることが理解してもらえるだろう。すべてのRPAが同じではない」と強くアピールした。

英Blue PrismのCEO、アレスター・バスゲート氏

 一般的にRPAは業務の効率化のための仕組みと認識されているが、Blue PrismのRPAは単に業務の省力化やコスト削減を実現するだけではなく、業務の品質、安全性、コンプライアンスを実現し、ビジネスの生産性を向上することを強く意識して開発されているとする。

 バスゲート氏は、これまで企業は「内製化した業務」や「外部への業務委託」によって生産性を向上してきたが、RPAは第三の手段として「ソフトウェアを通じての自動化」を実現できるようになったと説明する。

 また、このRPAによる生産性の向上について、英国の生活協同組合銀行における事例を紹介した。同行のRPA導入は、顧客のクレジットカードが紛失や盗難された際のオペレーションを効率化することから始まったという。かつては、顧客から電話で連絡を受けたコールセンターが、顧客のクレジットカードを特定するまでに5分の時間を必要とし、その先の事務手続きには25分かかっていた。このプロセスをRPAで自動化したことで、生産性が約6倍へと高まったという。

 さらに、「そもそもなぜオペレーターが5分もかけて電話を受ける必要があるのか」といった気付きを得たことで、オペレーターが関与することなく、顧客自身が紛失や盗難を申告できる仕組みが提供されるに至ったとのこと。

RPAによって真のAI民主化が進む

 また今後、Blue PrismのRPAはAIとの連携によって、「インテリジェントオートメーション」へと進化していくと、バスゲート氏は説明する。

 「知識と知見」「視覚認識」「学習」「プランニングと優先順位付け」「問題解決」「コラボレーション」の6つの技術をデジタルワークフォースと併用することで、AIの高い効果を得られるようになるというのだ。

インテリジェントオートメーションでは、6つの技術をデジタルワークフォースと併用することで、AIの高い効果を得られるようになる

 RPAの進化には、パートナーやコミュニティなどエコシステムも重要である。バスゲート氏はBlue Prismのマーケットプレイスである「Blue Prism Digital Exchange」を紹介し、「われわれが作ったApp Storeのようなもので、パートナーが提供するさまざまなAPIやコネクタを、ベストブリードで別のパートナーや企業が利用目的のためにダウンロードできるようになっている」と説明した。また、MicrosoftやGoogleとの連携により、両社のAI技術をBlue Prism上で活用できるようになると説明する。

 さらにRPAプラットフォームの最新版となる「Blue Prism v6.4」を11月中にも提供を開始し、11月以降には外部のAIサービスを、コードを記述することなくドラッグ&ドロップで容易に活用できるようになるという。

 活用できるサービスの例として、Microsoft Cognitiveのテキスト分析/画像認識/テキスト&音声翻訳/言語認識、Google Cloudの自然言語翻訳/画像機械学習、IBM Watsonの言語翻訳/画像認識/自然言語処理などメジャーで知名度の高いサービスとの連携が挙げられている。

 「ベストオブブリードで容易にAI技術を活用できるようになることで、データサイエンティストなど一部のユーザーだけではなく、多くのユーザーがAI技術の恩恵を受けられる『AIの民主化』を実現できるようになる」とバスゲート氏は述べた。

11月中にも提供を開始する「Blue Prism v6.4」のプロセス・スタジオ。11月以降には外部のAIサービスを、コードを記述することなくドラッグ&ドロップで容易に活用できるようになる

日本の働き方改革がRPA導入の機運につながっている

 Blue Prismは2017年より、日本でも本格的な活動を開始している。日本法人で社長を務めるポール・ワッツ氏は、「現在日本では毎日のように働き方改革への取り組みが報道され、RPAの価値提案と結び付けられる傾向にある。本来、インテリジェントオートメーションは企業全体で戦略的に導入されるべきだが、実際には小さな部門の残業時間削減といった用途にとどまっていることが多い。もちろん、この小さな自動化で生み出された価値を否定するわけではないが、それはあくまでも『業務の効率化』であり、『業務の変革』ではない」と述べた。

 ワッツ氏が述べたように、働き方改革の機運が高まる中、日本企業でもRPAを導入している企業が増えている。しかし、その多くは部門ごとの業務効率化のための導入にとどまっており、中には企業内の小さなグループや多忙な個人の業務を自動化するために独自に導入されるケースもある。しかも、IT部門がRPA導入を把握しておらず、ITガバナンスが効いていない状態になっていることも少なくない。

 しかし、Blue Prismが提唱しているエンタープライズの用途に耐えるRPAは、企業全体でITガバナンスが効き、きちんとコントロールできる状態を維持できることを重視している。

 このコンセプトこそがBlue Prismと競合他社との差別化要素でもあるとのことで、ワッツ氏は「グローバルではエンタープライズレベルの事例が多く紹介されている。私たちにはプロジェクトを成功に導くための知見がある。RPAとしてフォーカスする対象をシフトさせ、より広い視野で成果を高めることを支援していく」と述べ、今後は日本企業のエグゼクティブにBlue Prismを深く理解してもらうため、さまざまな施策を展開していくと説明した。

Blue Prism株式会社 社長 ポール・ワッツ氏

 日本法人が設立されてからまだ1年あまりだが、すでに日本マイクロソフト、アクセンチュア、アビーム、富士通など約30社とパートナー契約を締結しており、博報堂、第一生命、DeNAといった大型の国内事例も増えている。

 今後はカスタマーサクセスプログラムやパートナーサクセスプログラムなどの実施、ユーザーやパートナーを巻き込んだコミュニティ活動、フォーラムの開催なども積極的に行っていく予定であるという。

 日本発の製品も含めて競合が多く存在するRPA分野で、Blue Prismがどう存在感を発揮していけるか、今後も注目していきたい。