週刊海外テックWatch

全米でAIデータセンターに“No” NY州は米国初の一時停止命令

 建設ラッシュが続くAIデータセンターへの反発が、米国で噴出している。ニューヨーク州知事は7月14日、大規模データセンターの新設を一時停止する執行命令に署名した。州レベルの一時停止は米国初だ。背景には、送電網の逼迫(ひっぱく)と電気料金上昇が一般家庭に及ぶという懸念があり、7月18日には全米125カ所超で抗議デモが起きた。だがこの「AIブームと電力網の綱引き」は、アイルランドやオランダが数年先に経験してきた道でもある。欧州の着地点は、禁止ではなく「条件付き再開」だった。

NY州が最長1年のモラトリアム、大統領は即座に反発

 「ハイパースケールAIデータセンターは莫大(ばくだい)な電力を消費し、送電網の容量を上回りかねない。さらに地域の料金支払者の負担を押し上げている」。ニューヨーク州のKathy Hochul知事(民主党)は7月14日、こう述べて、大規模データセンターの新設の一時停止(モラトリアム)を命じる執行命令に署名した。

 知事の危機感は誇張ではない。Goldman Sachsの試算では、米国のデータセンター電力需要は2025年の31ギガワットから2027年には66ギガワットへとわずか2年で倍増する見通しだ。夏季ピーク電力需要に占める割合も2025年の4.1%から2027年には8.5%まで上昇するという。

 ニューヨーク州のモラトリアムの対象は、電力消費50メガワット以上で、DEC(州環境保全局)の許可手続きが完了していないデータセンターだ。該当する許可申請を保留し、その間に州全体の環境影響評価を進める。期間は最長1年とされる。

 州議会は6月に20メガワット以上を対象とする独自法案を可決していたが、知事は執行命令という形で、より対象を絞った50メガワット基準の一時停止に踏み切った。

 州の決定には、賛否両論が出ている。非営利環境団体Food & Water Watchのディレクター、Laura Shindell氏は、「ビッグテックの攻勢から自分たちを守ってほしいという州内の強い世論の圧力を受けた結果」と歓迎した。

 一方、州下院議員Scott Gray氏(共和党)らは知事宛ての書簡で「投資を凍結」「地域から決定権を奪う」と反対を表明。データセンターの業界団体Data Center Coalitionも、投資や雇用、税収が近隣州に流出するとして反対しているという。

 とりわけ強く反応したのがTrump大統領だ。署名翌日の7月15日、SNS「Truth Social」への投稿で、データセンターは州にとって「金のなる木」だとし、知事が政治的な理由でそれを止めたと非難。「直ちに」方針転換するよう求めた。さらにモラトリアムが続けば、投資・雇用・税収が近隣に流出するほか、AI分野で競う中国に後れを取りかねないと警告した。

 これに対してHochul知事は、「AIを支える地域社会こそ、その恩恵を分かち合うべきだ」とXで反論。NBC Newsの取材には、「地元自治体だけではビッグテック企業との交渉力に限界がある」として、州が主導する必要性を強調した。