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AIの開発や活用にはデータプラットフォームが重要――、日本IBMがアナリティクス事業の強みをアピール

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は4日、アナリティクス事業に関する説明を開催。その中で、日本IBM IBMクラウド事業本部長の三澤智光取締役専務執行役員は、「どこでも、誰もがAIを開発し活用するためには、データプラットフォームが重要になる。IBMはIBM Analyticsの中で、それを構築するための製品やサービスを用意している」と強調した。

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業において必須の取り組みとなっているが、実際には、デジタライゼーションを推進したいというよりも、『360度の顧客分析をやりたいが何をそろえればいいのか』『AIを活用したいがどうしたらいいのか』といった問い合わせが多い。それを実行するには、データプラットフォームをしっかり作っていくことが大切である。IBMは企業のデジタル化を推進し、データが新たな収益基盤となる、次世代のデータプラットフォームを提供していくことになる」とした。

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏

第1ステップから第2ステップへ進む際の課題

 三澤氏によれば、企業におけるアナリティクスの活用においては、データから現状をひもとくという第1ステップから、洞察を導き出す第2ステップに行く段階において、利用するためのデータがないという問題にぶつかるという。

 三澤氏は、「これまでのWatsonの導入事例をもとにすると、第2ステップにおいてAIを活用する際に、そのまま利用できるデータは30%以下であり、ほとんどの企業がAI Readyになっていないのが現状である。この課題を解決するには、データ整備が必要である」とする。

IBM Watson導入が目指したゴールと現実

 では、そのためには何をすればいいのか。日本IBMでは「集める、つなげるデータにアクセス」「データの検索」「分析のためのデータ理解・準備」「データの定義と規定、予測モデルの作成」「モデルの管理と配備」、「AIへのデータ活用、アプリの作成」という6つのステップを踏むことで、データを整備でき、スムーズなAIの活用につなげることができるとする。

 三澤氏は、「IBMはそのために、自社およびサードパーティーのさまざまな製品を用意しており、しかも、それらの製品は高い評価を得ている。データを整備するための、最も優れたデータプラットフォーム製品群を用意している」とした。

AI Readyを実現するための必要プロセスと要件
AI Readyを実現するIBM Data Platform

 ここでは、Db2やOracle、SQL Server、Cloudant、Horton、Streamsなどのあらゆるデータとファイルシステムに対応する「Any Data」、データサイエンティスト、アプリ開発者、業務の専門家、ビジネスアナリストといった誰もが開発者になる「Any One」を実現することで、「Any AI」を提供することができるとアピール。

 「日本IBMでは、Any DataからAny AIを実現するためにEnterprise Catalogを用意しており、データ構造の理解のためなメタデータ管理の仕組みを提供するとともに、どのように作られたかを管理する“データリネージュ”、来歴管理、データ利用者が理解できる言葉にする“ビジネス・グロッサリー”を提供できる。多くのデータソースをカタログ化することで、さまざまな人が使える基盤を整え、AIに対し、正しくてきれいなデータを流すことができる。こうして、AIを活用するためのデータ基盤を提供することが可能だ。同時に、ガバナンスの強化、分析基盤の構築、統合UIの実現といった効果ももたらすことができる」などとした。

組織横断的にさまざまなデータソースを活用
Any DataからAny AIを実現するEnterprise Catalog
Enterprise Catalogを実現するデータプラットフォーム

Any AIを実現するための2つの仕組み

 Any AIを実現するために、日本IBMでは、2つの仕組みを提供しているという。

 ひとつは、パブリッククラウド上で提供する「Watson Studio」である。データ準備、加工、蓄積、分析、機械学習、深層学習、AIまでをひとつのコンポーネントとして提供するという。

コンテナ/Kubernetesによるハイブリッド&マルチクラウド
Watson Studio

 もうひとつのIBM Cloud Private for Dataでは、Kubernetesによって、IBM Watson Studioとデータ、アプリケーションを連携でき、ハイブリッドクラウドおよびマルチクラウド環境を実現。クラウドロックオンを起こさずに、データとアプリを最適な場所に置いたり、移動したりできるとする。

 三澤氏はこの価値について、「GDPRの施行により、パブリッククラウドにすべてのデータを乗せておくだけでなく、自社のクラウドでコントロールしたいというニーズが出てくる。そうした点でも、IBM Cloud Private for Dataが役割を果たすことになる」と説明した。

IBM Cloud Private for Data

 一方で、データの収益化に向けたデータのマネタイズ化についても言及。「高付加価値データの創出によって、これをどうマネタイズするのかといった点にも企業の関心が集まっている」とする。

 その例として「APIを公開することで、APIエコシステムを構築するというのが一般的であるが、トーラスという企業では、不動産ビッグデータをAPIで提供する中で、単に、データそのものの公開するのではなく、ステークホルダーが欲しいと思える状態にデータを加工するAPIアプリ化している点が特徴。これによって、データのマネタイズ化を実現している」としたほか、「IBMは、世界のAPIマネジメント市場では世界ナンバーワンシェアである。データのマネタイズ化に対しても支援できる体制を整えている」と強調した。

トーラスの活用事例

次世代基盤構築のためのコンサル「DFM」

 また三澤氏は、次世代プラットフォーム構築のためのコンサルティングサービスとして「DFM(DataFirst Method)」を提供していることにも触れた。

 DFMでは、データプラットフォームの要件に必要なビジネスプランと方針、データの現状と“あるべき論”の方針、実施ロードマップの策定を支援。現状の課題とビジネス方針をあらためて整理し、ギャップを正確に知ることができるため、短期間で課題抽出や重点施策立案を実現する。また、特定業務にフォーカスし、最小限のコンポーネント追加を実装するなど、ファーストアクションを明確化できるという。

 「IBMは単に製品を提供するだけでなく、サービスを提供するナンバーワン企業であるという点も強調しておきたい。DFMでは、IBMが持つメソッドをより多くのパートナーに公開することで、データプラットフォームを構築したい企業を支援する」と述べた。

DataFirst Metho

 さらに、顧客のデータ利活用を促進するIBMデータサイエンティストチーム「Data Science Elite Team」を、データサイエンスの専門家100人で構成していることも説明。プロトタイプの構築、顧客内のデータサイエンティスト育成、グローバルコミュニティとのエンゲージメントを図る。

 「日本からも、7人の専門家が参加しており、ワールドワイドの最新事例や知見などを、日本の企業にも紹介できる」と述べた。

Data Science Elite Team

新たな協業プログラムも発表、パートナー戦略も強化

 さらに、ビジネスパートナーとの新たな協業プログラムとして、IBM Cloud League for Dataを発表。「データそのものを提供するパートナー、データカタログをインプリメンテーションできるパートナー、データ分析を得意とするパートナーを育成することになる。これらのパートナーに対しては、DataFirst Methodのメソッドも提供していくことになる。データプラットフォームに特化したパートナー集団にしたい」と語った。

 約30社でスタートし、50社程度にまで拡大する予定だという。

IBM Cloud League for Data

 アナリティクスにおけるパートナー戦略としては、すでに、VMwareからの移行を支援するIBM Cloud League for VMware on IBM Cloud、パートナーが持つアプリケーションをIBM Cloud上で動作するIBM Solution Leagueをスタートしており、今回のIBM Cloud League for Dataは第3弾となる。

 なお、Watsonについては、「名前を明かせる企業だけで、利用が約200社に達している。さまざまな用途で利用されており、プロダクションシステムとして活用されているAIエンジンではWatsonが圧倒的。8割を占めているのではないか」とした。

Watsonの国内採用事例