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富士通の2018年度第1四半期連結業績は6%の減収 退職給付制度変更で営業利益は大幅増

 富士通株式会社は26日、2018年度第1四半期(2018年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比6.0%減の8676億円、営業利益は前年から746億円増の795億円、税引前利益は同895億円増の970億円、当期純利益は同706億円増の727億円となった。

 今回の業績は、本業よりも、再編影響および退職給付制度などの特殊事項が影響する内容になっている。

2018年度第1四半期連結業績

 売上収益では、PCなどのユビキタス事業の再編影響で480億円の減少、本業では国内SIビジネスは増収となったものの、ネットワークやLSIの所要減の影響により約70億円のマイナス影響があるとした。

 一方で営業利益では、本業においては、LSIおよびネットワークを中心に約48億円の減少影響があった一方で、特殊事項として、退職給付制度変更影響で919億円の増加、事業譲渡影響でマイナス125億円があったという。

 事業譲渡の影響の内訳は、ニフティのコンシューマ事業でマイナス約170億円、PC事業で約115億円のプラス、PCおよび携帯端末事業再編影響でマイナス約70億円とした。

営業利益の変動要因

 富士通 代表取締役副社長の塚野英博氏は、「第1四半期は、各セグメントともに社内計画通りの進ちょくであるが、特殊要因を除くと若干の赤字になる。そのなかでも大きな要因がネットワーク事業であり、投資が絞り込まれた点が影響している」と総括した。

富士通 代表取締役副社長の塚野英博氏

セグメント別業績

セグメント別業績

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比1.2%減の6643億円、営業利益は同22.4%減の40億円。そのうちサービス事業の売上収益が前年同期並の5745億円、営業利益が前年同期比33.2%増の110億円。さらに、サービスの内訳となるソリューション/SIの売上収益が同4.6%増の2289億円、インフラサービスの売上収益は同2.7%減の3456億円。

 「ソリューション/SIは前年好調に推移した製造・流通分野がさらに伸長したのに加え、公共分野も増加した。第1四半期の受注も前年実績を上回っている。第2四半期以降もさらに上積みができると期待している。インフラサービスは、国内は実態ベースではほぼ前年並の実績だが、ソリューション/SIに一部プロジェクトを移管した影響があって減少している。海外は欧州、北米が低調で減収になっている。海外は効率化での進展はあるが、新規領域での売り上げ拡大が期待値に届いていない」とした。

テクノロジーソリューションの概況
テクノロジーソリューション(サービス)の概況

 テクノロジーソリューションの内訳となるシステムプラットフォームの売上収益は前年同期比8.7%減の898億円、営業損失は前年から39億円悪化してマイナス70億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益は前年同期比3.5%増の518億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同21.4%減の379億円。

 「システムプロダクトは、IAサーバーが国内、海外ともに増加。ネットワークは国内向け携帯電話基地局を中心に大きく減少している。キャリアの投資抑制がみられており、5Gへの投資が立ち上がるまでは厳しい状況が続くことになる。立ち上がってくるのは2019年度後半になる」とした。

テクノロジーソリューション(システムプロダクト)の概況

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比25.1%減の1153億円、営業利益は同97.1%減の1億円。「売上収益では、携帯端末事業の再編と、個人向けPC事業が連結売上の対象外となり、事業再編影響が約480億円のマイナスとなった。再編影響を除くと、約8%の増収であり、法人向けPCが伸長している。営業利益への再編の影響は約マイナス70億円。これを除くと、国内、海外ともに法人向けPCが好調で、17億円の増益になっている」とした。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比3.0%減の1313億円、営業利益は同79.3%減の7億円となった。LSIの売上収益は同11.7%減の615億円、電子部品の売上収益は同6.3%増の701億円。「スマートフォン向けLSIの所要が低調に推移し、電子部品は、PCや製造装置向けの需要が増加した。また、為替が円高に推移したため減益になった」という。

ユビキタスソリューションの概況
デバイスソリューションの概況

 なお退職給付制度の変更とは、2018年6月21日に、国内の主要な年金制度である富士通企業年金基金の一部制度変更を行い、これまでの確定給付型年金(DB)から、第3の企業年金制度といわれるリスク分担型制度へと移行したことを指す。

 「低金利の継続など、年金の運用環境が変化するなか、将来的な年金体制の悪化に伴う特別掛け金の拠出など、不測のキャッシュアウトが発生するリスクを抑制し、安定的な年金制度を持続することが狙いになる。会社と従業員がリスクを分担する形になる」と説明した。

 2018年度通期では869億円の増益影響になるという。年金債務および年金資産の清算により、2018年3月末には2152億円の積立不足であったものが、2018年6月末には、1141億円の積立不足にまで改善したという。

退職給付制度の変更

通期見通しは据え置き

 一方、2018年度(2018年4月~2019年3月)の通期業績見通しについては据え置き、売上収益が前年比4.8%減の3兆9000億円、営業利益は同23.3%減の1400億円、当期純利益は同35.0%減の1100億円とした。

 「業績見通しは、あくまでも本業による利益の予想である。第1四半期に退職給付制度の変更、PC事業譲渡に関する利益計上はあるものの、ビジネスモデル変革費用を含めたさまざまな施策を検討している段階であり、特殊要因を含めても通期の業績予想の変更は行わない」とした。

業績見通し

 このほか、「あくまでも本業で勝負をしたい。主力となるサービス事業は、数字でここまでよくなったと話せる状態にはなっていないが、かなり改善はしている。一時的な利益は外に置いた形で考えたい。今後、さまざまな施策を考えているが、なにをやるかは現時点では公表できない。だが、『かたちを変える』という点については、2015年度に発表した経営方針に対しては、最長で1年半は遅れている。2018年度中には、しっかりと話をできるようにしたい」と述べている。

 海外事業の利益貢献が遅れていることについては、「私も、とても遅いと感じている」としながら、「組織を変え、人を変え、マネージドインフラサービス、ビジネスアプリケーションサービスの領域から、デジタルサービスの領域へとシフトすることで、利益を高めたいと考えている。だが、デジタルサービスは、先行投資型のビジネスであり、小規模なものが多く、以前からの大型ビジネスを抑えて、新たなものに取り組むと、売上規模が下がってしまうという課題もある。これが払しょくできない。やったことは正しいと思っているが、効果に結び付けるためのスピードが足りないと感じている。海外事業は、権限を委譲するのではなく、私がすべてに手を入れてバランスを取る形にしている。私自身の時間の使い方も、これまでは8~9割を国内に使っていたが、いまは半分に近い時間を使い始めている」と述べた。

 また、2018年5月からサービス提供を開始している「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer(デジタルアニーラ)」については、「PoCの引き合いは多くいただいている。これを、なるべく有償で請け負ったり、リカーリングの形につなげたりしたいと考えている。人材を育成し、協創サービスに育てたい。今年中には、数字が見えたらいいと思っているが、実態としては2019年度以降になるだろう。いまは固く見ているが、一度、花が開けば相当広がるのではないかという期待もある」とした。

 これらに加えて、7月26日に発表した富士通コンポーネントの資本構成の変更についても言及。「将来的には再上場を目指すことになるだろう。富士通ブランドの部品であるという体制を維持することは大切であり、25%の株式を保有することになる。当面は富士通ブランドを維持することになる。これによって、富士通はコア領域に対して、投資を行っていくことができる」とした。

 富士通コンポーネントは、独立系投資会社のロングリーチグループの関連会社であるFCホールディングスから増資を受けるとともに、富士通が富士通コンポーネントの自社株買いに応じることで、富士通の資本持分を25%とし、ロングリーチグループが75%の株式を所有することになる。社名やブランド、従業員および事業体制は今後も変更がないという。

 塚野副社長は、「富士通の中核事業はサービスであリ、セグメントでいえば、テクノロジーソリューションの領域になる。今後、富士通としては、サービスオリエンテッドカンパニーを目指すことになる。ここに、ヒト、モノ、カネの経営資源のすべてを投資していくことになる。一方で、コモディティ化しているユビキタス事業、デバイス事業は、非中核事業であり、そこに資源は集中できない。これらを独立した事業として立て直しをする上で、投資できない以上、外部の資本に依存するしかない。投資が回らない領域、回せない領域は第三者の資本を活用することになる。非中核事業の切り離しはまだ続いている段階にある」と語った。