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キヤノンMJの2018年度上期連結業績は減収減益、ITソリューションは好調もデジカメや家庭用プリンタで苦戦

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は25日、2018年度上期(2018年1~6月)の連結業績を発表。売上高は前年同期比1.0%減の3005億円、営業利益は同11.8%減の96億円、経常利益は同7.0%減の109億円、当期純利益は同11.2%減の74億円となった。

 キヤノンMJの松阪喜幸取締役専務執行役員は、「第2四半期は、エンタープライズ、エリア、プロフェッショナルのB2Bセグメントが好調であるが、コンスーマにおいて、個人消費の持ち直しに足踏みが見られ、デジタル一眼レフカメラやインクジェットプリンタなどが低調に推移した」と総括した。

 第2四半期(2018年4~6月)の業績は、売上高が前年同期比1%減の1497億円、営業利益は同12%増の59億円、当期純利益は同12%増の49億円となった。

セグメント別業績

 2018年度上期のセグメント別業績では、エンタープライズの売上高が前年同期比6.2%増の946億円、セグメント利益が同35.4%増の48億円。

 金融業向け大型SIが好調に推移するとともに、生保向けの帳票設計ソリューションや、損保向けに調査業務の効率化を図るクラウドシステムが堅調に推移。証券向け開発案件の拡大も寄与したという。

 また製造業向けでは、自動車メーカー向け営業支援システムや建材メーカー向けシステム移行サービスなどが好調に推移。流通業では、鉄道会社における営業支援システムや総合商社向けの貿易関連特定業務ソリューションがけん引。オフィスMFPの複数の大型案件も獲得したという。

 さらに文教では、学内の情報発信、学習管理などのIT基盤システムとして提供している「inCampus」で、複数の案件を獲得。連結子会社のキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)が展開するデータセンターサービス、車載組み込みソフトビジネスも堅調に推移したという。

 「特に金融分野向けには、クレジット系企業のSIや、信用金庫向けの投資商品販売支援システムの『しんきん預かり資産ナビ』の導入が進んでいる」という。

 なお、キヤノンITSの売上高は前年同期比6%増の434億円、営業利益は41%増の36億円となった。「営業利益8.3%に上昇している。システム開発や統合案件、マイグレーション案件が増加している」という。

 エリアの売上高は前年同期比1.3%減の1293億円、セグメント利益が同10.2%増の60億円。

 中小企業向けIT支援クラウドサービス「HOME」や、ウイルス対策ソフト「ESET」、特定業種の開拓によるレーザープリンタカートリッジなどが堅調に推移する一方で、オフィスMFPなどの主力ハードウェアが小規模企業向けで減少するなど、低調に推移。保守単価も下落しており、保守サービスの売り上げは減少した。だがセグメント利益は、高粗利製品の売り上げが伸長したこと、販売管理費の削減などにより増加した。

 「Windows 7の入れ替えに伴うITプロダクトの増加が見られている」という。

 なお、同セグメントに含まれるキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)は、売上高が前年同期比2%減の596億円、営業利益は同5%増の17億円となった。

 エンタープライズとエリアを合計した全社ITソリューションの売上高は、前年同期比9%増となったほか、全社ITセキュリティの売上高は同1%減となった。

 「ITソリューションは全体の33%を占めている。セキュリティでは、前年同期にバックアップソリューションの大型案件の反動があったことでマイナスになっているが、ESETは好調に推移している」という。

 コンスーマは、売上高が前年同期比13.6%減の610億円、セグメント損失は、前年同期の25億円の黒字から、11億円の赤字に転落した。

 2018年3月に発売したEOS Kissシリーズ初のミラーレスカメラ「EOS Kiss M」が好調に推移して、ミラーレスの機種およびメーカーシェアでナンバーワンを獲得するなど、ミラーレスカメラの売り上げは増加したものの、デジタル一眼レフカメラが市場縮小の影響を受けて低調に推移。コンパクトデジカメも、市場の低迷により売り上げが減少した。

 またインクジェットプリンタは、ビジネスプリンタが順調に推移した一方で、家庭用インクジェットプリンタの市場低迷により売り上げが減少。インクカートリッジも、プリントボリュームの低下などに伴い、売り上げが減少した。

 「エントリークラスのデジタル一眼レフの需要が、ミラーレスにシフトしている。ビジネス向けインクジェットプリンタの構成比は少ないが、順調に推移している」という。

 また、B2C向けディストリビューション事業において、ゲーミングPCや周辺機器などのITプロダクトが伸長しているとのこと。

 プロフェッショナルは、売上高が前年同期比12.6%増の289億円、セグメント損失は前年同期の9億円の赤字から改善したものの、2億円の赤字となった。

 産業機器では、半導体製造装置の新規取り扱い製品や、検査計測装置などの増加により売り上げが増加。ヘルスケアも医療システムや眼科機器などが伸長。だが、プロダクションプリンティングは、高速連帳プリンタが低調だったほか、映像ソリューションでは、前年の大型ロット商談の反動があったという。

 ネットワークカメラについては、前年度通期実績では22%増という高い成長をみせていたものの、第2四半期に前年同期比7%減となっており、通期でも5%増の計画としている。「調査会社は2けた増の予測をしているが、今はネットワークカメラ市場全体でも2けた成長はしていない、と考えている。本体と録画装置による小さな規模の商談が中心であり、画像解析や大量データを1カ所に集約するといった動きが出ていない。だが、2020年に向けて、こうした動きが伸びると予測しており、今後の成長は期待できる」(キヤノンMJ プロフェッショナルビジネスユニット映像ソリューション事業部長の三上公一上席執行役員)とした。

通期業績は下方修正

 2018年度の通期見通しは下方修正し、売上高は前年比1.1%減の6250億円(1月公表値は6450億円)、営業利益は同6.3%減の285億円(同320億円)、経常利益は同4.7%減の300億円(同330億円)、当期純利益は同2.3%減の202億円(同217億円)とした。

 これについては、「第2四半期までの進ちょくをもとに年間業績予想を見直したところ、コンスーマセグメントの市場が想定以上に低迷していることに加えて、プロフェッショナルセグメントの一部において、進ちょくが当初計画よりも遅れており、これらの減少分を通期で回復させることは難しいと判断した」という。

 セグメント別では、エンタープライズが前回公表値に対して、売上高が20億円増の1850億円、セグメント利益は据え置き85億円としたが、エリアは、売上高が45億円減の2565億円、セグメント利益は14億円減の118億円と下方修正した。

 エンタープライズでは、保険や証券向けの開発案件が堅調に推移し、増収を見込むほか、製造業向けでは、マイグレーション案件が引き続き堅調に推移。生産管理システムや需要予測システムなどの案件も増加が見込まれるという。京都市のマイグレーション案件も獲得しており、これも業績に貢献するという。

 またキヤノンITSで、SIサービス、ITインフラサービス、エンジニアリングが拡大することで増収を見込んでいるという。

 エリアでは、Windows 10への移行や政府のIT補助金の活用、生産性向上に向けた取り組みが加速しており、中堅・中小企業のIT投資意欲が引き続き高い状況にあるほか、HOMEやESETの拡販、ビジネスPCを中心としたITプロダクトやIT構築、保守などの基盤ソリューションの増加を見込んでいるという。

 キヤノンMJ エリアビジネスユニット長の久保邦彦上席執行役員は、「エリアでは、第1四半期は組織変更による出遅れ感があったのは事実であり、第2四半期から、利益最優先シフトを行い、カートリッジ、ESETが堅調に伸びた。だが、中堅・中小企業では働き方改革や生産性向上を重視しており、機器に入れ替えについては動きがよくない。下期には、コーポレート商談を強化し、クラウド型ソリューションメニューを増加させ、弾みをつけたい」などと述べた。

 なお、コンスーマは売上高で85億円減の1545億円、セグメント利益は22億円減の94億円とし、プロフェッショナルの売上高は55億円減の555億円、セグメント損失は1億円改善し、12億円の赤字に修正した。

 キヤノンMJの松阪取締役専務執行役員は、「新たに追加したレンズが1000本以上の受注残を抱えるほど順調である。ミラーレスカメラのリーディングカンパニーを目指す。またホームプリンタでは、年賀状での利用を含めてドキュメントボリュームが減っている。やみくもに台数シェアを追うのではなく、高付加価値モデルへのシフト、大容量インクタンクモデルへのシフトを行っていく。出遅れているビジネスインクジェットプリンタにも力を注ぎたい」と語った。