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キヤノンMJが中期経営計画を発表、2020年度に売上高7200億円、営業利益380億円を目指す

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は30日、2020年度(2020年1月~12月)を最終年度とした「2018年~2020年中期経営計画」を発表した。2020年度の業績見通しは、売上高が7200億円、営業利益は380億円、経常利益は390億円、当期純利益は261億円を見込む。

 2020年度におけるキヤノン収益向上領域は、3777億円で構成比は52%。キヤノン成長領域は788億円で11%。独自成長領域は2636億円で、構成比は37%を見込んでいる。

 同社では、2016年度にスタートし、2020年度を最終年度とする「長期経営構想フェーズIII」に取り組んでおり、2020年に売上高で8000億円、営業利益で400億円、成長領域の売上比率50%以上、販管比率30%以下、営業利益率5%を目指していた。売上高、営業利益では長期経営構想フェーズIIIの計画を下回るものの、営業利益率では上回る計画を打ち出すことになる。

 「2007年度に達成した、過去最高の370億円の営業利益を上回ることになる。いまは、営業利益が先行しているが、2018年度以降は売り上げの増加にもこだわっていく」(キヤノンMJの坂田正弘社長)とした。

 一方で、3月28日付けで、村瀬治男代表取締役会長が相談役に退く人事も発表。会長職は空席になる。代表取締役は坂田社長に加えて、新たに取締役専務執行役員の臼居裕氏が就く2人体制となる。

 なお同社は2018年1月1日付けで組織体制を一新し、従来のカンパニー制を廃止して、市場や顧客を中心としたビジネスユニット体制へと移行。一般個人ユーザーを対象にした「コンスーマ」、大手企業を対象に業種別ニーズに応じたITソリューション、サービスを提供する「エンタープライズ」、全国の中堅・中小企業を主要顧客としてビジネスを行う「エリア」、プロダクションプリンティングや産業機器、ヘルスケア、映像ソリューションなどの専門領域を担当する「プロフェッショナル」といった4つのビジネスユニットを新設している。

 キヤノンMJの坂田社長は、「昨年から、2018年1月には新たなフレームワークの体制へと変えることを打ち出し、市場対応、顧客対応ができていなかったところをどうカバーするかを考えてきた。これまでの商品別組織体制から、お客さま向け、マーケット別組織体制とし、商品起点から顧客起点に変える」とアピール。

 また、「ITプラットフォームやBPO、コールセンター/サービスといった機能を横ぐしにし、すべてのビジネスユニットに対して、これらの機能を提供する。特にITの領域では、データセンター、クラウド、保守、ITプロダクト、ITセキュリティは、エンタープライズ、エリア、プロフェッショナルのビジネスユニットのすべてにおいて、最適活用を進める。これまでは社内には、縦(商品)のことを考えていた人が多かったが、今後は『キヤノンMJの全チャネルを活用するとどうなるか』ということを考えてもらいたい。お客さまを主導する役割を果たしたい」とした。

 新フレームワークによる新組織の目的として、「お客さまを深く理解し、お客さまとともに発展し、成果を生み出すプロセスを確立する」「より高い付加価値をお客さまにご提供するため、全事業領域で当社の強みであるITソリューション機能の強化を図る」「グループのリソースを有効に活用し、お客さま対応力強化を図るため、商品・サービス、人材をグループ横断的に統括する」という3点を挙げている。

 さらに、これまでは、MFP+保守サービス、LBP+トナーカートリッジ、インクジェットプリンタ+インクシカートリッジが同社収益の中心となっていたが、今後、新たな収益モデルとして成長させるのは、IT保守サービス、クラウドサービス、データセンターサービス、セキュリティなどであり、「ITソリューション技術をベースに、ストックビジネスの強化と創出を図る」という。

 また、「中堅・中小企業に最も多くの顧客基盤を持っているが、これらの市場ではサポートに困っている企業が多いし、セキュリティに困っている中堅・中小企業も多い。そうした課題を解決する役割を担いたい」とした。

2020年に向けたコアテーマは「成長領域の拡大」と「収益向上領域の生産性向上」

 2020年に向けては、「成長領域の拡大」と「収益向上領域の生産性向上」という2つのコアテーマを挙げた。

 「成長領域の拡大」では、「攻めと変革による成長の実現」を掲げ、成長事業へのリソースシフト、成長事業の業容拡大や機能補完を目指したM&A・アライアンスの積極活用、新規事業の創出・拡大に取り組む。

 「収益向上領域の生産性向上」では、筋肉質な収益構造への一層の転換を進め、既存事業の生産性向上、抜本的な構造改革を推進する。

 M&Aや出資、アライアンスについては、セキュリティをはじめとしたIT基盤強化や業種・業務ソリューションの強化、先端技術の獲得といった「ITソリューションビジネスの強化」、これまでにはない「新たな独自成長領域の獲得」、ネットワークカメラや業務用映像といった映像ソリューションビジネスの強化や、商業/工業印刷向けビジネスの基盤強化といった「プロフェッショナル向けソリューションビジネスの強化」を対象にする姿勢をみせた。

 なおキヤノンMJでは、新たな組織体制をスタートするのに伴い、人事を一新。コンスーマ事業を担当していた八木耕一取締役常務執行役員、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)の社長を務め、ITS事業を統括していた神森晶久取締役常務執行役員、エリアビジネスを担当していた神野明彦常務執行役員が退任する。

 新組織となるコンスーマビジネスユニット長には、取締役専務執行役員に就く予定の松阪喜幸氏が就任。エリアビジネスユニット長には久保邦彦上席執行役員が就任するほか、足立正親取締役常務執行役員が、グループITS担当およびITプラットフォーム機能ユニット担当、エンタープライズビジネスユニット長、キヤノンITS社長に兼務で就くとした。

2017年度連結業績は増収増益

 一方、2017年度(2017年1~12月)の連結業績も発表した。売上高は前年比0.5%増の6321億円、営業利益は同9.9%増の304億円、経常利益は同9.7%増の314億円、当期純利益は同13.9%増の206億円となった。

 キヤノンMJの坂田社長は、「営業利益率は4.8%と、過去最高を達成した。B2C市場の改革の遅れや、プロダクションプリンティングで新製品の出荷が遅れたため、売上高は計画に対して未達となり、迫力に欠ける結果となった。成長領域が思うように成長できなかった反省もある。だが、経費の適切な管理を徹底し、営業利益は計画を上回った。筋肉質な体質を目指し、コスト意識を徹底。販管比率は30.6%と0.9%削減でき、ここでは、先行した形で成果が出ている。体質改善はかなり進んできた」と総括。

 また、キヤノンMJ 取締役常務執行役員の松阪喜幸氏は、「ITソリューションや産業機器などの独自成長領域ビジネスが引き続き伸長し、売上高はわずかだが増収となった。これは3期ぶりの増収になる」と述べた。

 セグメント別では、ビジネスソリューションの売上高が前年比1.1%増の3381億円、営業利益が同1.5%増の122億円。ITソリューションの売上高が同4.7%増の1348億円、営業利益が同14.5%増の45億円。イメージングシステムの売上高が同4.3%減の1523億円、営業利益が同7.4%増の116億円。産業・医療の売上高が同6.5%増の343億円、営業利益は同731.3%増の15億円となった。

 ビジネスソリューションでは、オフィスMFP(複合機)において中小企業向け主力カラー機「imageRUNNER ADVANCE C3500」を発売したほか、大手企業向け大型案件を受注。3年連続で過去最高の出荷台数を記録したという。「MFPでは3位のシェアであり、着実に出荷台数を増やしていきたい」(坂田社長)とした。

 プロダクションプリンティングでは、カット紙プリンタは一般オフィス向けや印刷業界向けに好調に推移したものの、連帳プリンタの新製品の出荷が遅れて売り上げは減少。

 レーザープリンタは、複数の大型案件獲得と、特定業種への拡販によって増収になり、26年連続でトップシェアを獲得したという。

 ネットワークカメラは、アクシスやマイルストーンシステムズの製品を組み合わせた提案がさまざまな業種で受け入れられ、業界平均を上回る成長を遂げたとのこと。

 保守サービスは単価下落により、売り上げが前年比微減となった。

 「ネットワークカメラは案件数が増加しているものの、この分野ではもっとしっかりとM&Aを行い、事業拡大に向けた手を打つ必要がある」(坂田社長)との姿勢もみせた。

 なお、同セグメントに含まれるキヤノンシステムアンドサポートは、セキュリティソリューションやIT機器の保守サービス、クラウド関連ビジネスなどのITソリューションビジネスが増加。売上高は前年並の1213億円、営業利益は前年から3億円減の36億円となった。

 ITソリューションは、SIサービス事業において金融業や大学を中心とした文教向け案件が順調に推移。ITインフラ・サービス事業ではデータセンターサービスが好調に推移し、売り上げは増加した。

 エンベデッド事業では、自動車産業向けが好調に推移したものの、製造業の主要顧客向け案件が減少。プロダクト事業では、セキュリティソフトウェアのESETをはじめとするセキュリティ関連製品や、ITプロダクト商材が順調に推移したという。

 ここでは、西東京データセンターの1期棟の満床にめどがついたことも明らかにし、「国内データセンターとして2社目となるM&O(Management and Operations)認証を取得。今後は2期棟の建設に取り組む」(坂田社長)とした。

 なお、連結子会社のキヤノンITSの売上高は前年並の847億円、営業利益は前年から8億円増の54億円となった。

 また、ビジネスソリューションセグメントを含む全社ITソリューションの売上高は前年比4%増の1839億円となり、全社ITセキュリティの売上高は同12%増となった。

 「ITソリューションは、今後もキヤノンMJの大きな柱になっていく事業である」(坂田社長)と位置づけた。

 イメージングシステムでは、2017年10月に発売したミラーレスカメラの入門機「EOS M100」などでの若年層への積極的なプロモーションにより、ミラーレスカメラの売り上げが拡大した。だが、一眼レフカメラはミドルクラスの売り上げは増加したものの、エントリークラスの製品がミラーレスへと移行したことで、レンズ交換式カメラ全体では減収となった。

 「レンズ交換式カメラ市場では、6割という圧倒的なナンバーワンシェアを獲得しているが、ミラーレスでは第2位である。早期にナンバーワンを取りたい。ミラーレスを伸ばすことで、カメラ全体の販売台数を伸ばしたい。製品ラインアップを見ると、減少から回復へと転換するのは2019年になる。将来的には、ミラーレスにおいても、レンズ交換式カメラと同じ規模のシェアを取りたい」(坂田社長)と述べた。

 インクジェットプリンタは、出荷台数の減少により売り上げが減少。インクカートリッジもプリントボリュームの縮小に伴い減少したが、インクジェットプリンタについては4年連続でトップシェアを獲得したという。業務用映像機器は、放送局向け案件が減少したことにより減収になった。

 産業・医療では、半導体市場の活況により、半導体製造装置や検査計測装置、保守サービスが大幅に増加。だが、医療事業はエックス線フィルムや調剤関連商品が低調で減収になった。

2018年度も増収増益を見込む

 なお、2018年度(2018年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比2.0%増の6450億円、営業利益が同5.2%増の320億円、経常利益が同4.8%増の330億円、当期純利益が同4.9%増の217億円と増収増益を見込む。

 2018年度のセグメント別業績見通しでは、コンスーマの売上高が前年比2%増の1634億円、エンタープライズの売上高が同3%増の1827億円、エリアの売上高が同1%増の2633億円、プロフェッショナルの売上高が同13%増の615億円を見込んでいる。

 「BPOビジネスや医療ITにおけるリソースの集約および強化、グループサービスアンドサポートの生産性向上や顧客満足度向上を目指すほか、商業印刷分野の販売、サポート体制の強化、キヤノンとの映像ソリューション共創プロジェクトの発足、クラウド型映像プラットフォームを運営するセーフティーや車載制御関連ソフト開発のAPTJ、プロドローンへの出資および協業の強化を行う。また、企業内起業家育成に向けた事業創出プログラム『Canon i Program』を開始し、キヤノンMJ発の新事業創出にも取り組む」(坂田社長)とした。