ニュース

東芝テック、町田市で電子レシートプラットフォームの実証実験を開始

個人起点の購買履歴を活用した新たな流通システムの実現へ

 東芝テック株式会社は、経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環として、ミニストップ株式会社、ウエルシア薬局株式会社、株式会社ココカラファイン、株式会社東急ハンズ、株式会社三徳、株式会社銀座コージーコーナーの町田市内全域の店舗において、電子レシートの標準データフォーマットおよびAPIに対応した電子レシートプラットフォームの実証実験を実施する。期間は2月13日から2月28日まで。

 2月13日に行われた発表会では、実証実験の目的やシステム概要について説明するとともに、実証実験参加店舗である「三徳 成瀬店」において、電子レシートの実演・体験会が行われた。

「三徳 成瀬店」での電子レシート実証実験の様子

 今回の実証実験は、経済産業省が策定する電子レシートの標準規格の検証作業として、業種、業態の異なる小売店舗における、標準化された電子レシートプラットフォームの有用性を検証するもの。

 新たに開発した標準データフォーマットとAPIを採用することで、従来は個別に開発・利用されていた、各社の電子レシートシステムや電子レシートを活用するアプリケーションが、企業の垣根を越えてシームレスに連携できるようになるという。

 説明会であいさつした経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 課長の林楊哲氏は、「紙のレシートは、消費者が家に持ち帰って家計簿につけるなど、手間がかかり、管理も非常に煩雑だった。今回の電子レシートでは、購買履歴の情報をすべてスマートフォンで簡単に統合管理できるようになる。また、消費者に蓄積されたレシートデータを標準化し、データプールに集めて分析・活用することで、企業や店舗は、消費者に最適なマーケティング展開や、今までにない新たな商品・サービスの開発につなげていくことができると考えている。町田市での実証実験が、“レシートテック”への大きな革新に向けた第一歩になることに期待している」と語った。

経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 課長の林楊哲氏

 続いて、店舗協力企業を代表して、三徳 専務取締役の椿洋一郎氏があいさつ。「当社はスーパーマーケットの事業者として実証実験に参画するが、今まで消費者への利益貢献を使命として、長年にわたって付加価値の提供について研究してきた。その中で、昨今の十人十色のライフスタイルに対応しながら、さらにネット社会と共存していくことを考えると、今回の取り組みが一つの答えとして浮かび上がってくる。この実証実験をぜひ成功させ、消費者を起点とした新たな流通システムの基盤づくりに貢献していきたい」との考えを述べた。

三徳 専務取締役の椿洋一郎氏

 実証実験のシステムとしては、東芝テックが運営している電子レシートシステム「スマートレシート」をベースに、電子レシートの標準データフォーマットおよびAPIを実装した電子レシートプラットフォームを使用する。

 東芝テック 執行役員の古山浩之氏は、「成熟した日本の消費のさらなる拡大と消費者の利便性向上には、一人一人の消費行動を把握することが重要になる。しかし、そのためには個人情報をしっかり保護することが不可欠だ。今回の実証実験では、消費者本人がレシートデータを提供する際に、個人情報を保護できる仕組みとしてプライバシーポリシーマネージャーを搭載し、安心して実証実験に参加できるようにした。また、今まで店舗ごとにバラバラのフォーマットだったレシートデータを標準化することで、企業の垣根を越えたシームレスなデータ連携を実現した。これによって、真に消費者のためのサービスが提供可能となり、小売業者全体の活性化、ひいては持続可能な地域経済の発展にも貢献できると考えている」とした。

東芝テック 執行役員の古山浩之氏

 具体的なシステム概要については、プロジェクトリーダーを務める東芝テック 参事の三部雅法氏が説明した。

 「実証実験のシステムでは、スーパーやコンビニ、ドラッグストア、生活用品店、飲食店など各店舗から発行される買い物レシートを標準データフォーマット仕様で標準化し、消費者個人に蓄積することで、個人が起点となって、各店舗から発行される電子レシートを統合管理することが可能となる。また、この電子レシートを、標準APIを使用して、アプリケーション間でデータ連携できるようにすることで、メーカーや小売業者、データ分析事業者など業種・企業を越えたデータ利活用を実現した」としている。

東芝テック 参事の三部雅法氏

 今回の実証実験でデータ連携するスマホアプリは、マネーフォワードの自動家計簿・資産管理サービス「家計簿マネーフォワード」、大日本印刷の家計簿アプリ「家計簿レシーピ!」、クラウドキャストのクラウド経費精算サービス「Staple(ステイプル)」、アドウェルの買い物補正アプリ「シル+(シルタス)」、LINEのコミュニケーションアプリ「LINE」、グランドデザインの販促ツール「ガッチャモール」の6つ。それぞれ電子レシートのデータを活用したサービスを提供する。

 さらに、IoTデータとの連携も実施する計画で、「店舗に人流解析カメラおよび温度・湿度・照度センサーを設置し、IoTデータの取得を行う。電子レシートのデータにIoTデータを組み合わせることで、今まで見えなかった新たなニーズを見つけられる可能性がある」(三部氏)という。

 なお、人流解析には日本ユニシスの「人流解析サービス」を、温度・湿度・照度データの取得には東京エレクトロンデバイスの「TED Azure IoT PoCキット」を活用する。

 電子レシートのデータ分析と活用の可能性については、「性年代別の買い物の特徴・買い回りがわかる」、「業種・業態での買い物の特徴がわかる」、「商品(分類・アイテム)の購入ボリュームがわかる」、「外部・センサーデータによる可視化」を挙げ、「商圏・生活者のニーズを把握することで、ポテンシャルのある顧客層・ターゲット層の可視化や注力すべき商品や品ぞろえの拡充など、顧客施策および商品・販促施策に活用することができる」(三部氏)としている。

 電子レシートデータを格納するデータプールのセキュリティに関しては、消費者個人の許諾を得て、プライバシーポリシーマネージャーによる個人情報保護処理を施している。また、流通・小売業の企業名、店舗名については、「業種・業態名」に匿名化して蓄積しているという。

 2月13日からスタートした町田市の実証実験に参加している店舗は、ミニストップが9店舗、三徳が4店舗、HACが4店舗、ウエルシアが3店舗、ココカラファインが5店舗、東急ハンズが1店舗、銀座コージーコーナーが1店舗の、合計27店舗となる。発表会の終了後には、「三徳 成瀬店」で電子レシートの実演・体験会が行われた。

電子レシートアプリのログイン画面
電子レシートの画面サンプル

 実際に消費者が電子レシートを利用する流れとしては、まず、スマートフォンに電子レシートアプリをダウンロードし、会員登録を行う。会計前にアプリを開いて、レジでアプリのバーコード画面を提示する。そして、会計が終わると、リアルタイムでアプリから電子レシートを確認することができる。電子レシートには、通常の紙のレシートと同等の情報が記載されており、アプリでは、店舗別の絞り込みや月間集計が行えるほか、家計簿アプリへの電子レシートの取り込みも可能となっている。