ニュース

富士通研究所、ブロックチェーン同士を安全につなげるセキュリティ技術を開発

 株式会社富士通研究所は15日、異なる仮想通貨の交換や決済を簡単・安全に実行できるセキュリティ技術として「コネクションチェーン」を開発したと発表した。

 富士通研究所では、発注や支払いなどの業務手続や契約処理を自動化するスマートコントラクトを、複数のブロックチェーンが関わる処理にも適用できるように拡張した。新たにブロックチェーン同士を連携させるためのノードを立て、接続用のブロックチェーンであるコネクションチェーンを構築。この連携ノードを経由して、2つのブロックチェーンから該当する取引処理が含まれるブロックのデータを抽出して各取処理をひも付ける。

 これにより、コネクションチェーン上で業務処理を含む一連の取引が1つのスマートコントラクトとして自動実行可能になり、アプリケーションではなくブロックチェーンそのものの仕組みを使ってひも付けや業務処理を実行することで、透明性が確保され処理の正しさが確認できる。

 加えて、これまでのブロックチェーン取引には無い、資産の保留状態を実現する資産預託の概念を設計し、システムを構成する全ブロックチェーンの取引処理に応じて資産の移動を制御する技術を開発した。資産移転元では取引処理を確定させずに資産を一旦保留状態にして、移転先の通貨移動を確認してから資産移転元の取引状態を確定させるなど、各チェーンでの取引処理のタイミングを制御する。これにより、従来のブロックチェーンでは困難であった取引処理の待ち状態を発生させ、全体の成否に応じた取引処理の確定もしくは取消を実現できる。

 開発した技術を用いた模擬的な仮想通貨の交換システムによる実験では、2つの異なるアーキテクチャーのブロックチェーンを相互接続し、仮想通貨の交換による資産移転を実行した結果、資産移転に関わる取引記録として各ブロックチェーンの取引IDや移転資産の数量、結果などが1つの取引としてコネクションチェーンに記録されることを確認した。また、支払いや決済ができないなどの理由でチェーンを横断する取引が途中で失敗する場合は、保留状態の資産を元に戻す取引処理のIDやタイムスタンプが記録されることも確認した。

 富士通研究所では、今回の技術により、個人が運営するような仮想通貨を扱う小規模ネットショップなどで新たな地域通貨に対応することが容易となり、さらに特定の仮想通貨を保有している利用者を対象とした優遇交換のキャンペーンなど変換レートを自由に定義できると説明。今後は、技術を通貨交換のみならず、企業間の高信頼なデータ交換や契約自動化などへ発展させ、金融分野をはじめとしたさまざま分野でブロックチェーンの業務適用を想定した検証を進め、2018年度以降の実用化を目指すとしている。