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RDBを「Db2」ブランドへ統一した理由は――、IBMがデータベース戦略を解説

 日本アイ・ビー・エム株式会社は14日、同社のデータベース戦略について説明した。

 IBMでは、2017年6月にリレーショナルデータベース製品のブランド名を「Db2」に統一。それぞれのデータベースには共通のエンジンとして「Common Analytics Engine」を採用し、共通のアプリケーションインターフェイスを提供することを発表している。

 米IBM IBMアナリティクス クライアント・サクセス・アンド・グローバル・セールス担当バイスプレジデントのレミー・マンドン氏は、「従来のDB2はデータベース製品という位置付けであったが、それが進化し、今では企業のワークロードを強力に支えるものになってきた。Db2は、そうした進化に伴ってリブランディングしたものであり、元素周期表のように、Db2とDだけを大文字にしている。これは、Dが示す『データ』が最も大切であることを示したものであり、最も顧客が重視しているデータに、IBMは注力していく姿勢を込めた」などと語った。

米IBMのレミー・マンドン氏

 またDb2では、「Data without limits」として3つの要素を挙げ、「データの格納場所に関する選択の自由度を提供すること、構造化データだけでなく、さまざまな非構造化データまでを含め、使用するデータの自由度を提供すること、さまざまなコードを使用して、アセンブリができる自由度を提供することができるという3つの要素を提供する」と説明。

 その上で、「Db2によって、どのような場所にあるデータでも、どのような種類のデータでも、これらのデータをどのような形でも使えるようになる。IBMはDb2によって、クライアントのデータを柔軟に活用できるようにするために、境界を設定しないことに取り組んでいく」と述べた。

 また、Db2においてJSONをサポート。既存のSQLスキルを活用して、Db2内のJSONデータの保管、管理、選択を行えるほか、JSONへの索引サポートによって、データの検索を最適化し、クエリのパフォーマンスを向上させることができるという。

 同社では、さまざまなワークロードに広がる多くの製品を、Db2のひとつのブランドに統合することにより、新たなアプリを統合したいといったニーズに対しても、Db2ブランドのもとで柔軟に提供できるようになると説明。「今後数週間で、Db2のファミリにあらゆる製品を統合していくことになる」としている。

 製品強化としては、Db2エンジンのあらゆる機能を試すことができる無償のDeveloper Editionの提供や、簡単に導入可能になるDownload&Go方式の採用を紹介。基幹システムが必要とする、高い可用性を実現する機能への継続的投資、IBM Db2 BLU Accelerationのパフォーマンス改善やインデックス機能の追加など、ハイブリッド・トランザクション・アナリティクス処理(HTAP)への新たな投資を発表している。

 Download&Goは、IBMが提供する新たな高速ダウンロードの仕組みで、Dockerイメージとして取り込むことができる。

 さらに、旧IBM dashDB for TransactionsであるDb2 on Cloudにおいて、柔軟な導入プランや使いやすいGUIを採用してみせた。

 「Db2 on Cloudは、IBMクラウドで利用できるフルマネージドサービスであり、簡単にプロビジョニングができ、週末に拡張したい、あるいはスケールダウンしたいといった設定も簡単である。多くの顧客のニーズに応えるものである。データのハンドリングにおいては、Amazon Auroraよりも40%も早く、またSQL Serverでは、デプロイして管理を開始するために6時間かかるものが、Db2 on Cloudは約20分で完了する」などとした。

 Db2 on Cloudでは、マウスを使って目盛りをスライドするだけで、瞬時にプロセッサの能力や必要されるメモリ、ストレージ容量の増減を行える機能を持つ。

リブランディングと強化機能
Db2 on Cloud Scaling
Webコンソールのデザイン

 また、新たなサービスとして、IBM Event Storeのテクノロジープレビュー版の提供を開始。これにより、オープンソースを活用した高速なデータ抽出と、リアルタイム分析を可能にするという。

 「イベントアプリケーションが、あらゆる産業において、ビジネスの変革と差別化に影響を与え始めている。業務効率、リスク管理、問題検出、詐欺、顧客サービスという5つのユースケースにおいて、マシンラーニングを活用するといった提案を行っている。イベント駆動型アプリには、入出力データ速度やデータ量、データアクセスのパフォーマンスと柔軟性、データ共有の容易さ、TCOと複雑さといった課題があり、これを解決するには、シンプルで、拡張性が高いプラットフォームが必要になる。IBM Event Data Management Systemは、これらの課題解決に最適化したものになる」とした。

Event Store
イベント駆動型アプリの課題
IBM Event Data Management System

 さらに、米IBMのマンドン氏は、「顧客にとっては、5つの重要要素がある。われわれに求められているのは、多くの顧客が関心を持っているデータサイエンスと機械学習を提供すること、そして、ハイブリッドデータ管理、統一されたガバナンス、データアナリティクスとビジュアライゼーションという3つの基盤の提供が重要な意味を持つ。また、ベンダーロックインが発生しないようにするオープンソースへの対応が必要である」とした。

5つの重要要素

 技術基盤のひとつとして掲げた統一したガバナンスへの取り組みとしては、Download&Go方式によるInformation Governance Catalog(IGC)の提供、欧州で2018年5月から適用される一般データ保護規則であるGDPR(General Data Protection Regulation)への対応のほか、Apache Atlasにおけるオープン・データ・ガバナンス・コンソーシアムの立ち上げを主導していることなどを説明。

 またIBM Unified Governance Software Platformは、コグニティブメタデータの取得、リネージュトラッキング、ポリシーの施行、データ統合サービスといったGDPRに含む各種のデータ管理機能で構成していることに触れた。

 「IBMは、コンプライアンス目的のガバナンスと、洞察目的のガバナンスの観点から、統一したガバナンスを提供する。中でも、IGCは、情報ガバナンスの実施手順を作成、実行できるものであり、これを実現するためのツールをDownload&Go方式により、各自のシステムに直接ダウンロードしてインストールし、実行できるようになる。またGDPRは、欧州で事業を展開するすべの企業に適用されるものであり、世界中のグローバル企業がこれに対応する必要がある。そして、Apache Atlas向けへの取り組みにおいては、IBMはコードを提供することで、ベンダーロックインを回避し、強固なガバナンス機能を、一般の人がいつでも利用できるようにする」などと述べた。

IBM Unified Governance Software Platform
GDPRとは

 さらに、データサイエンスの領域においては、PowerAIでのDSX(Data Science Experience)のサポートを行ったことや、ロンドンのデータセンターにおいて、DSX Enterpriseの利用が可能になったことなどを示しながら、「短時間で実装できるほか、フレームワークとライブラリーを活用することで、ピーク時のスループットに対応して最適化したパフォーマンスチューニングの実現、PowerAIによるディープラーニングの活用をサポートすることができる」などとした。