ニュース

JEITA、2016年度のIAサーバー出荷は台数、金額よりも前年割れ 仮想化の影響か

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA) ITプラットフォーム事業委員会は30日、2016年度(2016年4月~2017年3月)のサーバー出荷実績を発表した。

 IAサーバーの出荷実績は、台数、金額ともに対前年同期比で増加した2015年度から反転し、台数は前年比9%減の28万5597台、金額は同9%減の2023億3800万円となった。金額が前年よりも下回るのは6年ぶりで、「好調だった2015年度の反動。また、サーバー仮想化の影響も見受けられる」(JEITA ITプラットフォーム事業委員会 プラットフォーム市場 専門委員会委員長の香川弘一氏)と原因を分析している。

JEITA ITプラットフォーム事業委員会 プラットフォーム市場 専門委員会委員長の香川弘一氏

 今回、1999年から実施しているITプラットフォーム導入ユーザーの動向についても調査結果を発表し、2016年度のIT投資は前年度から若干減少し、2017年度も横ばいとなる見通し。クラウドの活用、仮想化の導入は順調に伸長するとともに、サーバーの性能向上によって登載する仮想OSの数が増加し、IT投資は大きな伸長とはならなくても、拡大するIT需要に確実に対応している傾向が現れている。

 JEITAのサーバー出荷実績は、統計に参加する11社のITベンダーの実績データを集計したもの。予測、推測値は一切含まれていないことが特徴となっている。

 「出荷実績の中には、海外のデータセンターへの出荷分は含まれていないものの、国内のクラウドで使われているサーバーの出荷台数は含まれている。仮想化による。1台の物理サーバーにおける稼働OS数など、出荷台数という量ばかり追うのではなく、質についても考慮すべき時期に来ている」(JEITA ITプラットフォーム事業委員会 委員長の村野井剛氏)。

JEITA ITプラットフォーム事業委員会 委員長の村野井剛氏
調査対象の範囲

 2016年度のサーバー出荷実績は以下の通り。

IAサーバー:
2016年度上半期 13万2101台(12%減)、949億3400万円(8%減)
2016年度下半期 15億3496台(7%減)、1074億0400万円(10%減)
2016年度通期  28万5597台(9%減)、2023億3800万円(9%減)

UNIXサーバー:
2016年度上半期 2041台(20%減)、212億0800万円(2%増)
2016年度下半期 2186台(10%減)、253億7300万円(12%減)
2016年度通期  4227台(15%減)、465億8100万円(6%減)

メインフレーム:
2016年度上半期 109台(0%)、119億6200万円(44%減)
2016年度下半期 119台(7%減)、195億9000万円(15%減)
2016年度通期  228台(4%減)、315億5200万円(29%減)

独自OSサーバーほか:
2016年度上半期 175台(26%減)、13億1800万円(21%減)
2016年度下半期 211台(17%減)、15億0100万円(16%減)
2016年度通期  386台(21%減)、28億1900万円(18%減)

 IAサーバーは、台数、金額ともに2015年度を下回ったが、100万円から300万円未満の上位機種の出荷実績は、台数で91%増となる2万1556台、金額で25%増となる281億6400万円と大きく伸長している。アンケート調査で「仮想化への取り組み」は年々増加しており、出荷実績のIAサーバーの単価はそれに呼応するように上昇傾向にある。

 こうした結果からJEITAでは仮想サーバー台数を推計したところ、「仮想化が始まる前に出荷台数が最大だった2007年度のIAサーバーが32万台だったのに対し、2016年度にはその2.4倍程度のシステムが稼働していると推測できる」(香川氏)としている。出荷台数に比べ、仮想化されたサーバーがそれを上回って利用されていると見ている。

アンケート調査によるサーバー統合、仮想化の取り組み状況
購入サーバーにおける仮想化の割合と稼働OS数
仮想化システムに望まれるサーバー

 UNIXサーバーについては、「2016年度は台数、金額ともに前年を下回ったが、単価は上昇している。減少数もこれまでよりも緩やかになり、下げ止まり傾向が出ている」という。

 メインフレームは前年に続いて台数、金額とも減少しているが、「買い換え、リプレース需要は安定している」との見方を示している。

 アンケート調査による、「ITユーザートレンド調査」では、主に情報システム部門担当者向けの郵送による調査を2016年11月に、郵送調査では把握が難しいエンドユーザーの動向調査を目的としたインターネット調査を2017年3月に、2種類の調査を実施した。

 需要動向では、2016年度のIT投資は2015年度に比べ若干減少傾向となった。2017年度の見通しは2016年度から大きな変化はなく、「横ばい」との見通しをしている人の割合が増加している。

需要動向

 IT化関連テーマの中で注目度が最も高いのは、「ネットワークセキュリティ」が67%と最も高く、「すでに取り組み済み」という回答も44%となった。「元々関心が高いテーマだったが、さらに高まる傾向にある」(JEITA ITプラットフォーム事業委員会 企画専門委員会 委員長の三木和穂氏)。

JEITA ITプラットフォーム事業委員会 企画専門委員会 委員長の三木和穂氏
IT化関連テーマ

 クラウドに注目しているとの回答は54%となり、このアンケート調査で初めて50%を超えた。クラウドを既に取り組み済みとの回答は24%で、これから取り組む傾向がまだ強い。

 クラウドの利用状況についても調査しており、2016年度はパブリッククラウドの利用が39%と伸長しているのに対し、プライベートクラウドは2015年度の26%から22%と減少している。これは、「アンケート回答者のうち、大企業の割合が減っていることも要因の一つと考えられる」(三木氏)と説明している。

クラウドサービスの利用状況

 プラットフォーム別で、「社内保有のサーバー」、「データセンター」、「クラウド全体」のどれを利用しているのかについてインターネット調査で調査したところ、「今後活用したいプラットフォーム」でクラウドの比率が高いのは、「マーケティング強化」、「グローバルでの情報管理」、「情報共有の進展」、「顧客サポートやアフターフォローの強化」、「営業の支援」、「顧客との関係性の強化」。

 一方、クラウドよりも社内サーバーを利用したいという回答が多かったのが、「セキュリティ対策の強化」、「商品/製品企画の強化」、「業務や伝票処理の高速化」、「品質の強化」、「生産・物流の効率化、見直し」、「研究・開発の強化」。

 今回の調査では初めて、「IoTへの取り組み」、「AI技術の活用」をテーマの中に設けた。IoTは27%、AIは24%の人が注目していると答えたものの、取り組み済みはIoTが5%、AIが2%と取り組みが進むのはこれからであることも明らかになった。

 ビッグデータ、IoT、AIに対してはインターネット調査で5年後の利用率について調査した。その結果、「現在は1割前後だが、5年後には2倍以上、現在の1割から3割弱へと利用率が増加するとの回答となっている。最新技術を活用する追加需要が3割前後増加すると見ることができる(三木氏)と今後、高い需要がある分野となっている。

ビッグデータ、IoT、AIの5年度の利用率

 また、今回、2001年から取り組んでいるサーバーの年間賞消費電力量に関する試算も発表した。

 サーバーの消費電力を年度別で比較すると2008年度が稼働台数291万台に対し72億キロワットと最大だったのに対し、2016年度は275万台で67億キロワットとなった。

 「ピークだった2008年度からは減少傾向にあるものの、2015年度、2016年度は、消費電力は微増している。ただし、物理台数は今後も大きく増加しないので、1台辺りの消費電力量をいかに抑えていくのかが、環境への貢献という観点から必要になるのではないか」(JEITA ITプラットフォーム事業委員会 プラットフォームグリーンIT専門委員会 委員長の岡田英彦氏)。

JEITA ITプラットフォーム事業委員会 プラットフォームグリーンIT専門委員会 委員長の岡田英彦氏