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IAサーバーでは1台あたりの単価が右肩上がりに――、JEITAの国内ITプラットフォームの出荷実績調査

仮想化・サーバー統合によるメモリ/ネットワークの増強が影響

 業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のITプラットフォーム事業委員会(旧サーバ事業委員会)は28日、2018年度(2018年4月~2019年3月)における、IAサーバーをはじめとする国内ITプラットフォームの出荷実績を発表した。

 これによるとIAサーバーの出荷台数は、前年比5%減の25万1335台と前年実績を下回ったものの、出荷金額は前年比10%増の2143億0600万円となり、2年ぶりに前年実績を上回った。またUNIXサーバーは、出荷台数が前年比10%増の4132台、出荷金額が同5%減の433億5400万円となった。メインフレームの出荷台数は前年比7%減の203台、出荷金額は同22%減の303億7200万円となった。

2018年度総出荷実績

 JEITA プラットフォーム市場専門委員会の香川弘一委員長(東芝デジタルソリューションズ)は、「IAサーバーは2013年度をピークに台数が減少しているが、1台あたりの単価は右肩上がりになっている。特に2018年度の単価上昇が大きく、前年度の73万6000円に対して85万3000円となっている。もともと当委員会では、2010年度時点で、サーバー単価は減少を続けると予測していたが、これに反して上昇傾向にある。全世界の市場動向は台数が増えて単価が下がっており、日本は逆の傾向にある。日本では仮想化への取り組みやサーバー統合の動きにより、メモリやネットワークを増強することが多く、これによってサーバーの単価が上昇している。今後は、AIを活用するためにGPUを搭載するなどの動きも増えてくるだろう。日本でのサーバーの使い方がリッチになっている」と総括した。

 特に、ミッドレンジ(50~100万円の価格帯)の過去5年間の平均成長率は6.87%となっており、単価の上昇率が高まっているという。「IAサーバーの単価が上昇する傾向はこれからも続きそうだ」と予測した。

JEITA プラットフォーム市場専門委員会の香川弘一委員長(東芝デジタルソリューションズ)
IAサーバーの出荷実績(台数・金額)
IAサーバーの単価推移

 また、「UNIXでは、金額や単価は下落したものの台数は増加した。メインフレームは、通期では前年実績を下回ったが、下期には台数、金額ともに増加となった。リプレース案件に左右されている」と述べている。

UNIXサーバーの出荷実績(台数・金額)
メインフレームの出荷実績(台数・金額)

 IAサーバーを取り巻く今後の動向として、クラウドを活用したシステムや、サービスの拡大に対応したデータセンター構築・増強といった動きのほか、「高度なサイバーセキュリティへの対応」「システム運用効率化に向けたサーバー統合」「仮想化からシステムへの取り組みの拡大」「企業内ユーザー部門での利用拡大に伴う新たなサーバーの導入」「5Gなどの通信インフラの整備やIoTデバイスの浸透に伴うデータ量の増加などの市場変化への対応」「ビッグデータの高速解析や人工知能による新たな価値創造への取り組み」「働き方改革に伴うRPAなどのITを活用した企業の生産性向上に向けた取り組み」などが影響すると予測した。

2019年度以降の見通しについて

 「IAサーバーについては、国内の企業ユーザーの投資意欲が旺盛で、データセンターへの投資増加などにより、継続的な需要が期待される」としたが、「UNIXサーバーは、企業の基幹システムを担う需要があるものの、IAサーバーへの需要分散などもあり、減少が予想されている。メインフレームは、高度の信頼性が要求される社会インフラシステムの中核として、今後も一定の需要が見込まれる」と、それぞれを展望している。

 JEITA ITプラットフォーム事業委員会の石井昌宏委員長(三菱電機インフォメーションネットワーク)は、「ITプラットフォームの中核となるIAサーバーは、過去2年間にわたって前年実績を下回っていたが、出荷金額では前年実績を大幅に上回っている。また企業ユーザーへのアンケート調査では、今後の投資意欲も旺盛である。Society 5.0への変革が求められており、ITプラットフォームのさらなる需要拡大が期待される」と述べた。

JEITA ITプラットフォーム事業委員会の石井昌宏委員長(三菱電機インフォメーションネットワーク)

 なお、同調査は、参加企業による自主統計としており、IAサーバーでは7社、UNIXサーバーでは8社、メインフレームでは5社が参加している。IAサーバーの調査では、市場カバー率は約7割になっている。

ITユーザートレンド調査

 一方、同協会では、ITユーザートレンド調査についても発表した。同調査は、情報システム部門や業務部門などを対象に、アンケート調査を実施。書面回答とした情報システム部門からは376件、オンライン回答とした業務部門からは275件の有効回答を得ている。

 これによると、2018年度のIT投資が2017年度から増加している企業は44%、2019年度も増加するとした企業は41%に達しており、特に、ネットワークセキュリティ、自然災害や事故に対するシステム強化対策、運用コストの削減などに高い関心が集まっているという。

需要動向

 JEITA プラットフォーム企画専門委員会の三木和穂委員長(日立製作所)は、「昨年は日本での自然災害が多かったことで、自然災害や事故に対するシステム強化対策に関心が集まっていることが理由。またクラウドの活用に対する関心も、ここ数年の注目点になっており、ビッグデータ、AI、IoTに対する関心も高まっている。そして、新たな対象項目として追加したRPAに対する関心も高い。一方で、サーバー統合や仮想化システムの構築には約6割の企業が取り組んでいる。デジタル化にかかわる取り組みはまだ遅れているが、関心は高まっている」とした。

JEITA プラットフォーム企画専門委員会の三木和穂委員長(日立製作所)
IT化関連テーマの注目度

 サーバー統合では61%、仮想化では65%の企業が取り組んでいるという。また、クラウドサービスの利用状況では、パブリッククラウドが57%、プライベートクラウドは33%に達している。「プライベートクラウドは下がるかと考えていたが、継続的に成長している」と分析した。

サーバー統合、仮想化の取り組み推移
クラウドサービスの利用状況

 ビッグデータでは、経営の意思決定支援や顧客動向およびニーズ分析、売り上げ分析で活用。IoTやAIは、業務の効率化での利用が期待されているという。ただ業務部門においては、ビッグデータの活用に関しては業務効率化を重視する傾向が高いこともわかった。

 「ビッグデータやIoT、AIについては、費用対効果や活用目的の明確化、データ収集や分析技術の確立に課題を感じている。特にAIでは、AI人材の確保に対して課題を感じている傾向が出ている」としたほか、「調査では、5年後には1割以上のシステムでビッグデータやIoT、AIが利用されるとの意向が出ている」という。

AIの活用における課題
5年後には1割以上のシステムでビッグデータやIoT、AIが利用されるとの意向が出ている

 さらに、部門独自でITシステムの利用する進める理由としては、「コストに見合った利用」が48%とほぼ半数を占め、「迅速な利用」が42%、「部門に見合った品質」が40%となる一方で、実際に部門独自で導入してみたものの、「部門内に知識、スキルを持った人材が少ない」との回答が47%に達している。「想定したよりも導入コストが高かった」「想定したよりも導入までに時間を要した」という回答も多かった。

 だが、「業務部門によるIT投資が増える傾向にある。部門独自のITシステム導入では、情報システム部門として連携して導入することが求められており、ベンダーもその一翼を担う必要がある。今後も、こうしたニーズをとらえた活動が、業界としても重要である」とした。

部門独自のITシステム(利用理由)
部門独自のITシステム(導入方法と今後の意向/方向性)

 さらに、2018年度のサーバーの年間総消費電力量についても試算。2018年度は72億kWhとなり、前年比2億kWhの増加となったという。また、2019年度の年間総消費電力量は75kWhと上昇するが、2021年度には71kWhにまで減少すると予測した。

 JEITA プラットフォームグリーンIT専門委員会の上原淳委員長(NEC)は、「物理サーバー1台あたりの年間消費電力量は増加傾向にある。これは、仮想化用途などにより、IAサーバーの高機能化が進展。平均定格電力が大きくなっているためである。ただし、仮想化システムの普及により、論理サーバー1台あたりの電力量は減少していると推定される。また今後については、仮想化の進展により、物理サーバーあたりの電力量は高まるものの、稼働台数は減少するとみており、2021年度にかけてのサーバー年間総消費電力量は14%削減すると見込んでいる」とした。

JEITA プラットフォームグリーンIT専門委員会の上原淳委員長(NEC)
サーバーの年間総消費電力量推移