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JEITAが2018~19年度の「利活用分野別ソリューションサービス市場規模」を発表、国内売上は2年連続で6兆円超え

 一般社団法人電子情報技術産業協会(以下、JEITA)は17日、「利活用分野別ソリューションサービス市場規模(2018-2019年度)」を発表した。

 これによると、2019年度の国内企業のソリューションサービス市場規模は、前年比0.5%増の7兆7752億円となった。

 そのうち国内売り上げは、前年比3.3%増の6兆5432億円となり、全体の84.2%を占めた。同調査で国内の売り上げが6兆円を突破したのは2年連続。海外売り上げは同12.1%減の1兆2320億円となった。

ソリューションサービス市場規模の調査結果

 JEITA ソリューションサービス事業委員会 委員長の馬場俊介氏(富士通 理事 サービステクノロジー本部長)は、「ソリューションサービス市場は、過去には、リーマンショックの影響を受けて縮小したことがあったが、大きなトレンドとしては拡大傾向を続けている。特にSI開発が堅調に推移しているほか、利活用分野別でも、主要分野は軒並み伸長している」と総括した。

 また、JEITA ソリューションサービス事業委員会 副委員長の込宮信治氏(沖電気工業 ソリューションシステム事業本部企画管理部 シニアスペシャリスト)は、「2009年からの3年間は、リーマンショックや東日本大震災の影響もあり、5兆円規模であったが、その後は、アベノミクスや金融緩和政策といった政府施策、企業のIT利活用の促進によりIT投資が活発化している。2018年以降、6兆円規模に達したのは、東京オリンピック/パラリンピックを契機とし、インバウンド向けIT投資も活発化していたことなどが影響している」と述べた。

JEITA ソリューションサービス事業委員会 委員長の馬場俊介氏(富士通 理事 サービステクノロジー本部長)
JEITA ソリューションサービス事業委員会 副委員長の込宮信治氏(沖電気工業 ソリューションシステム事業本部企画管理部 シニアスペシャリスト)

利活用分野別の国内市場規模

 利活用分野別では、市場全体の17%を占める「製造」が、前年比7.0%増の1兆3158億円。そのうち、「自動車」が同9.3%増の1062億円となった。

 「スマートファクトリーの進展により、工場でのデジタルデータを活用した見える化が進んでいる。生産性向上、省人化、技術継承などにおいて、デジタルを活用しているケースが増えている」とした。

 同じく構成比が17%となっている「公務」は、前年比3.9%増の1兆3023億円。「政府のインフラ投資への活発化が背景にある。この分野では、クラウド化への投資も進んでいる」と分析した。

 「金融」は構成比が14%を占め、前年比1.6%増の1兆1066億円。「サービス」は同5.4%増の2941億円、そのうち「医療」が同7.8%増の2028億円。「流通」は同1.0%減の4127億円。

 また、「社会インフラ」は、前年比8.4%増の7245億円。そのうち「放送・通信」が同7.7%増の3378億円、「エネルギー」が同13.3%増の1649億円、「交通・運輸」が同6.3%増の1127億円となった。

 その他は、前年比0.7%減の1兆3772億円。そのうち、建設が同4.2%減の211億円となった。

ソリューションサービス市場の利活用分野別と海外向け
利活用分野別 国内市場規模(2018~2019)

 馬場委員長は、「新型コロナウイルスの影響により、製造業やサービス業では業界全体が厳しいという側面がある。ソリューションサービス市場では、その影響が遅れて発生する。市場への影響が出てくるのは2020年下期からになるだろう。だが原因が明らかである。いかに新たなトレンドでカバーできるかといったことに取り組むことが必要だ。ここでは、Society5.0という切り口から、バーチャルとリアルをどう融合させるかといった提案を進めたい。これまで注目を集めなかったり、必要とされていなかったりした分野においても、テクノロジーが果たせる役割は大きいだろう」などと述べた。

 一方、国内における種類別では、全体の51.2%を占める「SI開発」が前年比6.0%増の3兆3521億円。クラウドサービスを含む「アウトソーシング・その他サービス」は前年比2.3%減の2兆4015億円、「ソフトウェア」は、前年比10.6%増の7896億円となった。

種類別 国内市場規模推移(2018~2019)

 同調査は、JEITA会員企業を対象とした国内主要ソリューションサービス企業の協力を得て集計している自主統計で、2002年度から調査を開始しており、過去18年間の蓄積がある。今回の調査では、富士通やNEC、日立製作所、日本IBMなど、30社が参加している。予測や推測は含まれておらず、市場全体の約7割弱を網羅している。

 なお、昨年の調査の参加企業は25社であったが、今年は4社減少する一方、新たに9社が参加。全体では5社増えて30社となっている。レノボ・ジャパン、大泉製作所、東陽テクニカ、アロマジョインが不参加となり、パイオニア、デンソーテン、東芝映像ソリューション、インターネットイニシアティブ、シンクレイヤ、日立国際電気、DXアンテナ、JECC、竹中工務店が新たに参加した。昨年調査分についても、今回の参加企業を対象に再集計し、前年度比較では参加企業数の変更による差分がないようにしている。

調査対象の30社

 なお同協会では毎年12月に、「電子情報産業の世界生産見通し」として予測値を発表しているが、これによると2020年の国内ソリューションサービスは前年比3.5%増の成長を見込んでいた。

 「新型コロナウイルスの影響により、この予測値よりも伸びは鈍化すると見ている。だが、ニューノーマルの時代に向けて、リモート活用などを通じて、ソリューションサービスの利活用が増加するという側面もある。ローカル5Gなどの高速通信を活用したソリューションも増加するだろう。スポーツ中継でもVRが活用されている。この領域も伸びていくだろう」(込宮副委員長)などとした。

 今後2020年12月16日には、「電子情報産業の世界生産見通し」のなかで、新たな予測値を発表する予定である。