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ソラコム、低トラフィックIoT通信向けの料金体系など4つのアップデートを発表

 株式会社ソラコムは10日、同社が提供するIoT通信プラットフォーム「SORACOM」に関する新たな4つの施策を発表した。ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏は「2015年9月の創業以来、通信の民主化を掲げてIoTビジネスを展開してきたが、現時点顧客数は6000社を超え、北米や欧州などグローバル市場への進出も果たすことができた。今後も顧客のフィードバックを取り入れながらアップデートを繰り返し、日本、そして世界から数多くのIoTプレイヤーが誕生することを支援していきたい」と語り、IoTプラットフォーマーとしてビジネスを拡大していく意向をあらためて明らかにしている。

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

4つのアップデートを発表

 今回発表された4つのアップデートの概要は以下の通り。

「SORACOM Air for セルラー」における低トラフィック用途向けの新料金プラン「Low Data Volume」

 移動体の位置情報トラッキングやインフラ監視など、1カ月に数MB程度の低トラフィック用途向けに「Air SIM(グローバル対応のSIMカード)」の新料金体系「Low Data Volume」を、5月16日からグローバルで提供開始する。

 月額基本料金は0.4ドル(45円程度)、データ通信料金は1Mバイトあたり0.5ドル。グローバル対応を前提にしており2G/3Gにも対応。現行プランとの併用やほかのすべてのSORACOMサービスとの連携も可能。

SORACOM Airの新料金体系「Low Data Volume」は1カ月のデータ通信量が1~3MB程度のユーザーをターゲットにした料金モデル。月額基本料は45円程度
LoRaWANデバイスのオープン化

 ソラコムが提供する開発者向けリファレンスLoRaデバイスに加え、新たにサードパーティ製のLoRaWANデバイスの対応をSORACOMプラットフォームにおいて開始。すでにエイビット、STマイクロエレクトロニクス、GISupply、Braveridge、MultiTechといったサードパーティベンダのLoRaデバイスが対応を表明済み。

SORACMプラットフォームに対応したサードパーティ製LoRaWANデバイスの開発も可能に。さっそく複数のベンダーが名乗りをあげている
「SORACOM Funnel」の機能拡張およびSPSパートナーのIoTソリューションへの連携開始

 Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureといったパブリッククラウド事業者が提供する各種サービスと、SORACOMを接続するリソースアダプタ「SORACOM Funnel」に、パートナー企業がアダプタを開発/提供する「Partner Hosted Adapter」が追加された。

 パートナー企業のIoTソリューションに対し、SORACOMの設定コンソールからスムーズな連携が可能に。すでにアプレッソ「DataSpider」、ウイングアーク1st「MotionBoard」、Kii「Kii」が対応を表明。

パートナープログラム「ソラコムパートナースペース(SPS)」にNECなど4社を追加

 SPS認定済みパートナーとして、Kii、KYOSO、NEC、日置電機の4社が新たに認定された。

新たにSPSパートナーに認定されたNECのIoTソリューション

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 4つのアップデートの中でももっとも注目されるのは、やはりSORACOM Air for セルラーの新料金体系であるLow Data Volumeだろう。顧客のニーズを細やかにすくい上げることをビジネスの基本軸としているソラコムらしい発表だといえる。

 もともとSORACOM Airの料金体系はIoTデバイスが通信の主体であるため、全体的にかなり低く抑えられえてきたが、遠隔監視や動態管理など、デバイスの動きの変化量が極めて少ないユースケースにおいては、月額のデータ通信量が数十MBの前提でも多すぎることになる。

 また、最近では通信モジュールの小型化や低価格化も進んでおり、送信するデータ転送量を小さくしたいというニーズも少なくない。「1カ月に数MB程度で十分というケースは思いのほか多く、そうした顧客からは“もうひと声(安くしてほしい)”という声をいただいていた」と玉川氏。

 現行プラン(Basic)の併用もできるため、通常のIoT通信にはBasicを、遠隔監視の用途にはLow Data Volumeという使い分けが可能になり、ユーザーのIoTにおける選択肢がさらに拡大することになる。

 また、ソラコム自身がトレンドの牽引役となっているLoRaWANデバイスのオープン化も、LoRaという市場そのもの拡大をはかる上で大きなマイルストーンとなる。2月にソラコムが発表したLoRaWAN向けのサービス「SORACOM Air for LoRaWAN」は予想以上に反響が大きく、リファレンスデバイスの生産/出荷が注文に追いつかないという状況が続いていた。

 サードパーティによるモジュールやデバイスが増えることでこうした品不足解消につながるだけでなく、国内のLoRaニーズのさらなる掘り起こしが可能となり、ソラコムが提唱する通信の「共有サービスモデル」の普及/拡大が臨めるようになる。

 「AWSからたくさんのクラウドサービスが生まれたように、ソラコムからたくさんのIoTシステムを生み出していきたい」と語る玉川氏。単なるIoTベンチャーから、次世代のIoTプレイヤーを生み出す“IoTのゆりかご”的な役割を果たすべく、今後もプラットフォーマーを強く意識したサービスのリリースが期待できそうだ。