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コニカミノルタ社長、自社の強みを生かしたIoT戦略を語る

 ドイツ・ベルリンにて開催した「Spotlight」にて、オフィスのITインフラを統合するプラットフォーム「Workplace Hub」を発表したコニカミノルタ。

 同社 代表執行役社長の山名昌衛氏によると、Workplace Hubは「職場で普及しているデジタル複合機をIoTプラットフォームへと進化させたもので、リアルタイム処理が可能なIoTソリューションを提供するもの」だという。

 Workplace Hubの開発に至った背景や、同社がIoTソリューションを提供する強みについて、日本から同イベントに参加したメディアを前に山名氏が語った。

代表執行役社長の山名昌衛氏

世界でIoTビジネスを成功させる

 Workplace Hubは、最初から世界での展開を視野に開発したものだ。山名氏によると、約200万というコニカミノルタの顧客のうち、約8割は海外の顧客。そのためWorkplace Hubの開発も欧州が中心で、同製品の開発に向けコニカミノルタではヨーロッパ各国に複数の開発拠点を新設している。

 IoTやビッグデータを活用したソリューションは、さまざまな大手IT企業がすでに手がけている。こうした中、世界でIoTビジネスを成功させるにはどうすればいいのか――これは山名氏が常に考えていたことだった。

 「ハードウェアがコモディティ化すると、安価で製造できる企業にシェアをとられる。一方、付加価値をつけたソリューションがすべてクラウド事業者から提供されるようになると、日本の製造業はどうなってしまうのかと不安になった。やはり日本の製造業として、われわれのモノづくりの強みを進化させ、IoTに組み込むことが重要だと考えた」と山名氏は語る。

 その結果、コンセプトとして誕生したのが「IoTデバイスを現場に置き、その場でリアルタイムに課題解決する」ことだった。

 「自らデータを収集し、解析するプラットフォームを現場のデバイスで提供しようと考えた。日本の製造業にはデバイスを作る力がある。そのデバイスを現場のプラットフォームに変革するというビジネスモデルを作れば、世界中のさまざまなITサービスがそのプラットフォームに入るようになる。このようなプラットフォームのあり方を提言し、実現することで、IoTの時代においても製造業から付加価値が提供できる」(山名氏)。

 こうして生まれたのが、デジタル複合機にIoT機能を搭載したプラットフォーム、Workplace Hubだ。

「現場」を知るコニカミノルタならではの強み

 勝算はあった。コニカミノルタには、デジタル複合機で培った現場の顧客との接点がある。「顧客の課題は現場にある。その現場に足を運び、常に顧客の課題に耳を傾けているコニカミノルタならではの顧客との距離が、大手ITベンダーにはないわれわれの強みだ」と山名氏。

 特に同社の顧客は、大手企業がリーチしきれていない中堅中小企業の顧客が中心だ。すでにネットワークプリンティングサービスを従量課金制で提供するコニカミノルタにとって、新たなサービスメニューを追加するような形でWorkplace Hubが提供できれば、顧客にとっても利用しやすいものとなるだろう。

 また、現場のデバイスでデータをリアルタイム処理できる点も強みだと、山名氏は語る。IoTのデータをビッグデータ解析するソリューションはさまざまな企業が提供しているが、それはデータセンターに一度集約させたデータを解析するものだ。こうしたソリューションは、いくら高速処理できるといっても数秒かかってしまう。しかし、「数秒さえ待てない状況も多い」と山名氏は話す。

 「例えばコニカミノルタでは、独自の光学センサーを駆使した自動運転支援技術を手がけているが、自動運転においては歩行者の情報を瞬時に判断する必要があり、データセンターにデータを送り解析するまでの数秒さえ待っていられない。このように、リアルタイムでIoTデータを処理するニーズはさまざまな現場に存在する。日本の技術産業がIoTの時代に活躍するには、現場のプラットフォームで瞬時にデータ解析できるものを提供すべきだ」(山名氏)。

さまざまな企業との連携を視野に

 今回発表したWorkplace Hubの提供にあたり、コニカミノルタはMicrosoft、Hewlett-Packard、Sophosとパートナーシップを結んでいる。各社のソリューションやハードウェアとWorkplace Hubを連携させるためだ。これら企業とのパートナーシップはグローバルで展開するものだが、山名氏によると「地域ごとに特性があるため、その地域に強い企業とのアライアンスを組むことも考えている。また、地域のみならず特定の業界に強い企業と協力することもあるだろう」としている。

 業界別ソリューションとして想定される具体例について、山名氏は次のように語る。「ヘルスケア分野で医療データを統合することもできるだろうし、製造業ではバックオフィスと工場の情報を組み合わせることで、遠隔地からでも製造工程の最適化を指示することができるようになる」(山名氏)。

未来の働き方につながるWorkplace Hub

 昨今のデジタル複合機にはさまざまな機能が備わっており、情報をスキャンして共有し、グループワークするような利用方法も珍しくない。そこに新たなIoT機能が備わることで、「デバイス管理やドキュメント管理が一元化されることはもちろん、その場でIoT分析ができるため、新たなコラボレーションにもつながるだろう」と山名氏は言う。

 「ITのあらゆるサービスを、複合機の形をしたプラットフォームに統合することで、IT管理だけでなく働く人のワークフローが効率化されるほか、コラボレーションによって生産性が向上する。また、AIやディープラーニングによる解析技術で、自動的に情報が結びつき、経営判断にもつながっていくだろう」――山名氏が描く未来の働き方の可能性は、Workplace Hubを通じて広がっていく。