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米HP、HPC製品群「HP Apollo」やオールフラッシュ製品などハードウェアを拡充~HP APJ Media Summit 2014レポート

 米Hewlett-Packard(HP)がインド ムンバイにて開催したアジア太平洋地域のメディア向けイベント「HP APJ Media Summit 2014」では、同社の推進する「New Style of IT」戦略に基づく新製品が続々と発表された。

 New Style of ITとは、クラウド、モバイル、ビッグデータ、セキュリティという4つの大きなトレンドの中で、このトレンドと柔軟なITを活用して企業の変革を目指すという考えだ。

New Style of IT戦略を中心にさまざまな新製品を用意するHP

HPC新製品「HP Apolloファミリ」が登場

HP アジアパシフィック&ジャパン サーバー担当バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャ Stephen Bovis氏

 7月2日の基調講演にて、HP アジアパシフィック&ジャパン サーバー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのStephen Bovis氏は、New Style of ITを目指す企業に向けた製品のひとつとして、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システムの「HP Apolloファミリ」を発表した。

 「HPCは、自動車業界や電子機器における設計分野や金融サービス、医療分野などを中心に成長してきたが、HPCの需要は拡大してきている。HP Apollo製品群は、どんな企業でもHPCが活用できることを目指したシステムだ」とBovis氏は説明する。

 今回発表したのは、一般企業にHPCのパフォーマンスを提供するためのシステム「HP Apollo 6000」と、スーパーコンピュータシステム「HP Apollo 8000」の2製品だ。

HP Apollo 8000について説明するBovis氏

 Apollo 6000は、1ラックあたり最大160サーバーが格納できるシステムで、空冷サーバーラックデザインや外付け電源シェルフを採用。競合製品となるデルのブレードソリューション「Dell M620」と比較した場合、エネルギー消費量を最大46%削減できるという。Bovis氏は、「Apollo 6000によって企業のワークロードが大幅に削減でき、さまざまな企業でHPCが活用できるようになる」とした。

 一方Apollo 8000は、冷却媒体として水冷方式を採用したことが最大の特徴だ。Bovis氏によると、このシステムは本来米National Renewable Energy Labs(NREL)に向けて開発したもので、この成功事例を元に製品化したものがApollo 8000だという。

 Bovis氏は日本のメディアに向けたインタビューにて、「ハードウェア内で一番熱が発生する場所は、メモリ部分とプロセッサ部分。この2カ所を囲むように水が流れるパイプを通し、データセンター外に熱を排出する。万が一パイプが壊れることがあってもすぐに蒸発する仕組みを採用しており、ハードウェアに影響が出ることはない」と、実機を示しながら水冷システムの仕組みを解説した。

 Apollo 8000は、1ラックあたり最大144台のサーバーが格納可能で、空冷式のシステムより1ラックあたり4倍のテラフロップ性能が提供できるという。水冷方式で取り込んだ温水は、冬にはヒーターとして再利用でき、データセンターからの二酸化炭素排出量が年間最大3800トン削減できるとしている。NRELでは、実際に水冷システムによる廃熱を隣接するオフィスやラボスペースの熱源に利用しているという。

HP Apollo 8000の水冷システム。オレンジ色のパイプの中で水が走るようになっている

オールフラッシュストレージ製品を拡張

HP アジアパシフィック&ジャパン HPネットワーク・チャネル担当 バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャ Paul Haverfield氏

 HPではさらに、オールフラッシュのストレージ製品を拡張すると発表した。HP アジアパシフィック&ジャパン HPネットワーク・チャネル担当 バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのPaul Haverfield氏は、「オールフラッシュがメインストリームとなるには、ミッションクリティカルな可用性が求められるのはもちろん、一般のハードディスクドライブに匹敵するような価格帯になる必要があった。オールフラッシュ専門のベンダーも存在するが、成熟しておらず、スケールも可用性もニーズに合っていなかった」と、オールフラッシュの課題を指摘する。

 しかし、このような課題は「昨日までの話だ」とHaverfield氏。今回発表した「HP 3PAR StoreServ 7450アレイ」は、価格や可用性なども顧客のニーズを満たすものになるという。

 HP 3PAR StoreServ 7450アレイは、「HP 3PAR Thin Deduplication」および「HP 3PAR Thin Clonesソフトウェア」などの新たな圧縮技術を採用。データ圧縮技術を使用しない場合と比べ、使用可能な容量要件が75%以上削減できるという。これにより、「ギガバイトあたりの価格が2ドルにまで低減できる」とHaverfield氏は説明。同氏は、フラッシュの頭文字から、新製品が「F:Fast(高速)、L:Low Cost(低価格)、A:Automatic(自動化)、S:Scalable(スケーラブル)、H:Highly Available(高可用性)な製品だ」と述べた。

 Haverfield氏によると、オールフラッシュストレージ市場は成長しているという。日本人メディア向けのインタビューでは、アジアパシフィック地域の中でも「特に日本はニーズが高い」と述べる。これまでは限定的な分野でのみ利用されるケースが多かったオールフラッシュ製品だが、「価格的にも手に届くような製品を提供できるようになった。今後さらにオールフラッシュ製品は採用が広がるだろう」と述べた。

HP 3PAR StoreServ 7450をEMC VMAXと比較するHaverfield氏。EMC製品はギガバイト単価がStoreServ 7450の3.8倍になるという

沙倉 芽生