サイボウズ、「cybozu.comカンファレンス2012」で青野社長が基調講演

クラウドサービス「cybozu.com」のビジョンなど明らかに


代表取締役社長の青野慶久氏

 サイボウズは3月7日、クラウドサービス「cybozu.com」に関する初のイベント「cybozu.comカンファレンス2012」を開催した。基調講演では、代表取締役社長の青野慶久氏が、「世界に通用する日本の企業クラウドを作る」と題して、「cybozu.com」の概要から各種サービス、今後のビジョンなどを語った。

 「cybozu.com」は、サイボウズが昨年11月から提供開始した企業向けクラウドサービス。全国3万社、400万ユーザーへの導入実績をもつ同社のグループウェア製品「サイボウズOffice」を始め、業務アプリ開発基盤「kintone」やスマートフォン用無料アプリ「KUNAI」など企業向けアプリケーションを月額500円からの低価格で提供している。現時点で、導入企業は500社を突破しているという。


「cybozu.com」のクラウド基盤

 同社がクラウドサービスに注力する背景について、青野氏は「当社では、“チームあるところにサイボウズあり、サイボウズあるところにチームワークあり”をスローガンに掲げ、コラボレーションツール事業を通じて世界中の組織のチームワーク向上を支援することをミッションとしている。そして、創業15周年を迎えるにあたり、初心に戻る意味で“Fast&Easy+Entertain”をサイボウズイズムとして定義。このサイボウズイズムをさらに追求するべく議論を重ねた結果、たどり着いたのがクラウドだった」と説明。「サービス名を『cybozu.com』という社名ドメインにしたのも、当社がクラウドで徹底的に勝負する決意表明であり、まさに背水の陣で臨む」との考えを示した。

 次に青野氏は、「Fast」「Easy」「Entertain」というサイボウズイズムの3つのキーワードに沿って、「cybozu.com」の特徴を紹介した。まず、「Fast」については、導入前と導入後に分けて、「cybozu.com」のメリットをアピール。「従来の『サイボウズ』では、導入前にハードウェアの購入やインストール作業、運用の準備などが必要だった。そのため、ユーザーに大きな負担をかけており、けして『Fast』とはいえなかった。しかし、クラウドサービスの『cybozu.com』では、これらの導入前の負担をすべて解消した」という。

 また、導入後は、「オンプレミス環境では、利用が活性化するのにともない、サーバー負荷が増大し、動作が重くなるケースが多かった。これに対して『cybozu.com』は、CPUやメモリを潤沢に使えるインフラを用意するとともに、HTTPレベルでの最適化や負荷分散、ダウンロード処理のオフロードなどさまざまなチューニングを行うことで、高速な動作環境を提供する」としている。さらに、導入後のパフォーマンス監視として、24時間365日遅延を監視し、問題を発見したときに緊急対応する「リアルタイムモニタリング」や、前日のアクセス統計から遅延の傾向を確認して改善を行う「デイリーモニタリング」も実施しているという。

 2つめのキーワード「Easy」については、経営者、システム管理者、利用者の3つの視点から導入メリットを説明。「グループウェアの導入にあたり、経営者にとっては初期費、利用料、運用費といったコスト面が課題となるが、『cybozu.com』であれば初期費はゼロ。利用料と運用費についても月額500円からと安価であり、ムダなコストをかけることなく、ユーザーの増減に合わせて柔軟に導入できる点もポイントだ」と、圧倒的なコストパフォーマンスによって経営者の“導入しやすさ”を追求したと述べた。

 「システム管理者には、“運用しやすさ”をもたらす。従来までは、バックアップやバージョンアップ、セキュリティ対策、停電への対応など、運用面で多大な負荷がかかっていた。『cybozu.com』では、こうした運用作業が全く必要なくなるため、システム管理者もクリエイティブな業務にシフトできる」という。「利用者にとってのメリットは、“使いやすさ”の一言につきる。そのため、『cybozu.com』の提供開始に合わせて、『Usability Lab』を開設。社内外から被験者を招き、操作状況をリアルタイムに観察することで、ユーザビリティを検証し、その結果を素早く製品に反映している」と、利用者の“使いやすさ”では、どの製品・サービスにも負けることはないと力を込めた。

 3つめのキーワード「Entertain」について青野氏は、「当社では、ユーザーに喜んで使ってもらえる“おもてなしの心”を『Entertain』として定義している。それには、安心感と期待感の2つが重要になる」との考えを示す。実際に「cybozu.com」では、国内データセンター、ISMS取得、全レイヤーで多重化、稼働目標99.9%という安全なクラウド基盤をすべて自社開発で提供している。また、セキュリティ面においても、パブリッククラウドの中にプライベートクラウドを構築する「Protected Cloud」を実現するとともに、強固な2ファクター認証を採用することで、より安心感を高めている。


「cybozu.com」の2ファクター認証「cybozu.com」の将来ビジョン

 そして、ユーザーからの期待感を高めるために、「今後、組織のチームワークをさらに向上させるコラボレーション機能を拡充していく」と、青野氏は「cybozu.com」の今後のビジョンを明らかにする。具体的には、「サイボウズOffice」などのコミュニケーションツールや、「kintone」などの業務アプリケーションに加え、ほかのソフトウェアとの連携機能を強化。そして、これらの機能をスマートフォンなどデバイスを問わず利用できる環境を提供するという。特に今回、「『cybozu.com』のクラウド環境内で、ユーザー独自のアプリケーションを開発できる基盤を提供していく計画がある」と、近い将来、PaaSの提供にも着手する構想を明らかにしている。

 なお、同社では、このカンファレンスにあわせて、クラウドサービス紹介制度「cybozu.com フレンド」を7月から正式スタートすることを発表した。「cybozu.com」上で提供するコラボレーションツールを顧客企業や知人、自らが属するコミュニティなどに紹介すると、契約状況に応じて法人口座にキャッシュバックを受けることができるという。3月7日から、情報提供を希望するユーザーからの申し込み受付を開始している。

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