【Dreamforce 2010】Force.comの進化と、新たなDatabase.comの狙いとは
~米salesforce.com担当ディレクターに聞く
米salesforce.comがサンフランシスコで開催中のDreamforce 2010では、クラウド時代の新データベースであるDatabase.comが発表されるととも、プラットフォームであるForce.comの進化などが明らかになった。「Database.comの投入はsalesforce.comにとって自然な流れ。そして、Force.comの進化によって、より多くの開発者がクラウド環境を利用できるようになる」とする、米salesforce.com プロダクトマーケティング担当ディレクターのアンドリュー・リー氏に、Force.comの進化の狙いと、Database.com投入の意味を聞いた。なお、インタビューは共同で行われた。
■Database.comは、データの定義が変わってきていることをとらえた技術
――今回のDatabase.comの投入はどんな意味を持ち、Force.comの進化は、どんな点を解決したものになりますか。
米salesforce.com プロダクトマーケティング担当ディレクターのアンドリュー・リー氏 |
リー氏:振り返ってみますと、10年以上前にsalesforce.comが設立された際には、まずはパッケージソフトでスタートし、その後、リレーショナルデータベースをクラウド上で展開し、マルチテナント型のCRMを提案してきた。こうしたアーキテクチャの存在があったからこそ、現在の成功があります。
アーキテクチャの進化とともに、開発環境を整えるために、salesforce.comでは、Apexを提供。セキュリティと性能、信頼性を兼ね備えた環境を実現し、異なる種類のアプリケーションが開発できるようになった。そうした経験を経るなかで、salesforce.comは、データにはソーシャル的な要素があることに着目し、Database.comを提案しました。
競合ベンダーからは、「これは10年前の技術ではないか」という指摘もあるが、データの定義が変わってきていることをしっかりとらえた技術である点が、他社のプラットフォームとは異なる。3、4年前にデータのことを考える時に、ソーシャルメディアが持つフィードや、どんな情報にもプロフィールが付くということは考えられなかった。こうした点を反映し、いまの時代に活用しやすい新たなデータの定義を加えたものが、Database.comといえます。
salesforce.comは、パートナーや顧客の成功によって成長し続けてきた企業。それによって、当初は想像もしなかったところに連れていってもらっている。iPadのような新たなデバイスや、モビリティ環境での活用など、革新的な技術を当社もしっかりとサポートしていかなくてはならない。ですから、今後は、Force.comに関しても、年間3回、4回というぐらいの急ピッチでアップデートしていかなくてはならないと考えています。
■競合他社が投入している技術は20年も前の技術
――競合他社との違いはどんな点ですか。
今回の進化で、Force.comのプラットフォームを革新的なものに変ぼうさせることができた。マイクロソフト、SAP、IBMなどが投入している技術は、もはや20年も前の技術であり、時代にそぐわないと考えている。将来にわたって通用はしません。
次世代の開発環境としては、当社が提案しているようなモバイル環境やFacebookなどのソーシャルネットワークに適応したものが求められている。競合他社は、「salesforce.comが提供しているものと同じものを提案できますよ」とはいうが、デリバリーの手法ひとつを取ってみても、salesforce.comと他社の手法はまったく異なります。求められているのはカスタマーが使いやすい仕組みです。その点では、Chatterのデリバリーはその最たるものだといえるでしょう。
そして、salesforce.comは、すべてを自分たちだけでやろうとは思っていない。当社とパートナーとが一緒になって、次世代のコンピューティングを考えていきましょう、といっているわけです。
例えば、GoogleやAmazonとは競合相手とみられる場合もありますが、戦略的パートナーシップを結んでおり、プリインテグレーションをした形で提供できる。GoogleやAmazonの製品が、当社のプラットフォームの上で動作する。Force.comの進化、Database.comの投入によって、この関係はさらに強化されることになるでしょう。
現在、開発者は、数多くのプラットフォームの上で製品を開発している。当社の最終的な目標は、どのプラットフォームでも、いかなる環境でも、そして、自分がなじんだ環境でも開発できるようにしたいということ。いままで以上によりオープンにしていく考えであり、.NETやJavaで開発したものをプラグインしていくこともできる。
作業が効率的に進み、TCOを削減し、俊敏な対応が可能になる。オープン戦略を加速することによって、さらに多くの開発者をサポートすることができるようになると考えています。
――Windows Azureからの移行も視野に入れていますね。
願わくば、そういう利用者がいてほしいですね(笑)。
世界中の開発者のうち3分の1は.NETで開発し、2分の1はJavaで開発しているといわれる。こうした動きをとらえて、できるだけ多くの開発者をサポートしていきたい。.NETのように、旧来型のオンプレミス向け技術に基づく開発環境で作ったアプリケーションも、salesforce.comのクラウドベースのデータベースにプラグインすることで、速度を高め、iPadのような新たなデバイスにも活用できるようになります。
■Database.comの投入は自然な進化
――一方で、なぜ、この時期に、Database.comを新たに投入したのですか。
会場内に展示されていたDatabase.comのパネル |
salesforce.comにとって、Database.comの投入は、自然な進化だといえます。Database.comは、これまで当社が提供してきたデータベースとまったく同じ技術、同じアーキテクチャを採用したものです。それをもとにセキュリティ、機能、信頼性を高め、ネイティブツールを使う方法だけにとどまらず、いかなる環境でも開発できるように、プラットフォームをオープンにした。クラウド上のデータベースが優れているということを、証明できるデータベースになると考えています。
つまり、Database.comとは、ひとことでいえば、新しいブランドというよりも、マルチテナント環境で進化してきた当社のデータベースを拡張したものです。CRMアプリケーションがオープンになったのと同様に、さまざまなカスタムアプリケーションがオープンになることにつながるでしょう。
■クラウドへの不安感は時間を掛けて払しょくしていく
――クラウドに対する不安感を持っているユーザー企業はまだ多いといえます。そうした点に対しては、どんな提案をしていきますか。
クラウドは、過去50年にわたるIT産業の歴史のなかで、最も革新的な出来事であるといえます。その変化を誰もが経験していかなくてはいけないが、データをクラウド上に移行するといった動きに対しては、もっと時間を掛け、理解を得ることが必要でしょう。
Gartnerによると、企業のITプロジェクトは2015年までに約50%がクラウド上に移行するだろうと予測が出ている。また、当社のマーク(=CEOのマーク・ベニオフ氏)が語るように、いまから1年前にはiPadといった端末は出ていなかったわけですし、iPadに似たスレートPCはこれからたくさん出てくることが予想されている。
こうした劇的な変化もクラウドへの理解を高め、移行を促進することにつながる。クラウドは、オンプレミスに対して5倍速く、コストは半分であるというのが当社のメッセージです。
――Database.comを利用していて、解約したいという場合にはどうしたらいいのですか。
いつでも好きな時に、データを取り出すことができる。その点では心配する必要はないといえます。salesforce.comは、クラウド・コンピューティングの普及に向けたエバンジェリストの役割を10年にわたって務め、すでに8万7000社への導入実績がある。
日本においても、すでに、日本郵政が長年にわたってこれを活用していることからも明らかなように、マルチテナントアーキテクチャとしては、実証済みのプラットフォームです。ユーザビリティが確保され、セキュリティ面でも高い信頼性を持ったものが提供できます。これからもDatabase.comおよびForce.comの信頼を維持していくことが大切だと考えています。
また、オンプレミスから移行した方が効果的であるということも、すでに実証されている。現在、Force.com上には18万5000本以上のアプリケーションがあります。ここには、ERP、会計、プロジェクト管理、契約管理、受注といったアプリケーションが含まれている。富士通はフルイベントリ、オーダーエントリーのアプリケーションも用意している。これまでの会計システムは、経理、財務部門では使っているが他部門では使えないというものだったが、セールスフォースを活用して、これを横展開していくといった動きも出ています。
■VMforceはオープン化への重要なステップ
――ところで、VMforceの進ちょくはどうなっていますか。
VMforceはいまから6カ月前に発表したものですが、これはsalesforce.comのプラットフォームを、よりオープン化するといった上で、重要なステップだといえます。これにより、.NETやJava、PHP、Rubyにも対応できる地盤ができた。2011年には、VMforceやSiteforce、ISVforseが本番稼働することになります。ぜひ期待していてください。