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日本マイクロソフトの16年度パートナー施策、「量を売る」から「利用価値の訴求」へ転換目指す
(2015/9/3 06:00)
日本マイクロソフトは、「FEST2015」初日基調講演で言及されたパートナーとの関係強化の詳細について、報道陣向けに説明会を実施した。パートナービジネスを担当する執行役常務の高橋明宏氏が、基調講演では代表執行役社長の平野拓也氏が紹介した2016年度のパートナー向け施策の詳細を説明した。
高橋氏は今年度のパートナー向け施策のポイントとして、「CSP(クラウド・サービスプロバイダー・プログラム)は、すでに2013年に発表している。これをより拡大するために、中身を一部変更した。従来はある程度の初期投資が必要だったものを、今期からはどんなお客さまもジョインできるものとした。扱う商品にしても拡大し、お客さまの持つアプリとOffice 365を合わせた提案など、販売量を問わずジョインできる」と、量から質へとパートナービジネスを方針転換したことを説明した。
パートナーとしても、「従来はLinuxなどマイクロソフトとは縁のなかったパートナーの皆さんに加わっていただきたい」と新しいパートナーを積極的に取り込んでいく。
2016年度のパートナー向けビジネス施策は、1)クラウド事業立ち上げ支援=CSPプログラムの拡張、サポート体制強化、2)販売重視から利用価値重視へ=利用率レポートの提供、新しいインセンティブ、3)アプリによる差別化=ISV向け施策強化、Azure GTM強化の3点。
高橋氏は、従来の日本マイクロソフトのパートナーは、リセラー、システムインテグレータが中心だったことを言及し、「現在では85%のユーザーが、なんらかのクラウド導入を検討している。ただし、実際のインプリメントは欧米に比べ遅れている。これを一気に、クラウドビジネスを加速させたい」とし、クラウド中心のビジネスへの転換をパートナーとともに進めていくと説明した。
クラウドを販売する場合、AWS、Googleといったクラウド専業ベンダーが先行しているが、パートナーを介さずにエンドユーザーに直接アピールすることも多い。
「エンドユーザーに直接つながるのは、前向きで、自分たちがクラウドでどんなことをやろうとしているのかが明確な場合にはいいかもしれない。しかし、そういうお客さまばかりではない。また、現在はすべてクラウド集中傾向が出ているが、コンピューティングの歴史を見ると、そこから揺り戻しが起こるのが常」との見方から、マイクロソフトはあくまでもパートナーとの協業ビジネスにこだわるという。
その上で目指すのは従来の量を追うビジネスから、質を重視するビジネスへの転換だ。「利用率」として、ユーザーの利用率にあわせてあとからインセンティブを提供する新しいインセンティブプランも用意した。
これは、「クラウドの場合、これまでの販売と同じように販売を推し進めることで、使っていないものは次年度からの契約が切られることになる」と、利用していないものに対してはユーザーの厳しい対応となることが要因となっている。
クラウドビジネスへのシフトによって、量ではなく、利用率といった利用価値重視の質転換を実施することについては、「すべてのパートナーがこれらすべてを理解しているわけではない。利用価値重視が重要と考えながらも、売り上げをどう維持するのかを悩むパートナーが存在することも事実だろう」と高橋氏も指摘する。
現在はクラウドビジネスへの転換の最中であり、「本社からのミッションでは明日にでもすべてのパートナーに変わってほしいところだが、現実的には3年から5年のトランスフォーメーションの時間がかかるのではないか」と中期的な視野での変化が必要だと見ている。
また、日本マイクロソフト自身も、米本社から「質への転換を実践しながら、売り上げは落としてはいけないという指令が飛んでいる」と厳しい課題に取り組んでいる。
ただし海外の事例では、月1000ドルの契約から始まったパートナーが、成長することで月に2億~3億ドルと大きな売り上げへと成長するケースもあったという。「量ではなく、利用価値重視への転換は、こうした実績もあってのこと」という。
アプリケーションによる差別化は、マイクロソフト以外もAWS、日本オラクルとクラウドビジネス強化のポイントとしてあげている。クラウドの中からマイクロソフトを選択し、アプリケーションを開発するメリットとしては、「まず、シングルバイナリーでオンプレミス、クラウドを1つのアプリケーションで開発することができる。日本以外でのビジネスも可能となる。開発環境についても、1つのキットを利用できる。また、Windows用のものをAzureでも利用できることもアドバンテージになる」と説明している。