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Salesforce、AIエージェントの可視性と制御性を解決する機能を強化した「Agentforce 3」を発表
2025年6月27日 12:01
米Salesforceは現地時間23日、AIエージェント構築プラットフォームの最新版となる「Agentforce 3」を発表した。Agentforce 3は、企業がAIエージェントを安心して拡張させるために必要な可視性と制御性を提供。企業のリーダー層が、自信を持ってAI労働力を監視・改善・拡張できるとしている。
新たに導入された「Agentforce Command Center(以下、Command Center)」は、AIエージェントの監視、測定、最適化を実現する可観測性ソリューション。AIエージェントの健全性を監視し、パフォーマンスを測定し、成果を最適化するための統合ビュー(単一画面)を提供する。機能はAgentforce Studioに組み込まれており、大規模にAIエージェントを理解し、改善するためのツールによって、AIエージェントのライフサイクルを完結させる。
Command Centerは、あらゆるAIエージェントとのやりとりを分析し、特定の会話を掘り下げ、使用傾向を理解することで、タグ付けされた会話タイプに対してAIによるAgentforceの改善提案を提供する。レイテンシー、エスカレーションの頻度、エラー率といった指標について、詳細なライブ分析が可能。さらに、予期しない事象が発生した際にはリアルタイムでアラートが届くため、チームは迅速に対応し、AIエージェントを安定的に稼働させられる。
また、AIエージェントの導入状況、フィードバック、成功率、コスト、トピックごとのパフォーマンスなどを追跡できる、詳細なダッシュボードを提供する。これにより、チームはどの取り組みが効果を上げているのか、どこに改善の余地があるのかを一目で把握できる。
Agentforceは、すべてのAIエージェントの活動を、Data Cloud上のネイティブで拡張可能なセッショントレーシングデータモデルに記録し、分析、モニタリング、リアルタイムアラートに活用する。この仕組みは、OpenTelemetry標準に基づいて構築されており、Datadog、Wayfoundをはじめとするモニタリングパートナーのツールともシームレスに統合され、既存のスタック全体にわたるエンドツーエンドの可視性を実現する。
AIエージェントの活動を人間のチームメンバーと並行して、業務フローの中でリアルタイムにモニタリングできる。この機能は、まずService Cloudから提供を開始。AIエージェントの活動がリアルタイムのウォールボード上に表示されることで、コンタクトセンターのスーパーバイザーがパフォーマンスを追跡し、即座にエスカレーションできるようになる。今後は、あらゆる部門に対して、それぞれのAIエージェントの最適化されたCommand Centerが順次提供される予定としている。
Agentforce Studioでは、自然言語で入力するだけで、トピック、指示、テストケースを自動生成できる。さらにテストセンターでは、状態注入(コンテキスト変数や会話履歴の入力)や、AIによる評価(AI-driven evals)を用いた大規模な動作シミュレーションが可能。これにより、本番稼働前にAIエージェントに対して徹底的に負荷テストを実施し、確実な運用準備を整えられる。
さらに、Model Context Protocol(MCP)およびAgent2Agent(A2A)対応による、セキュアなエンタープライズ接続を実現。MCPのようなオープンスタンダードの普及により、相互運用性の新たな可能性が広がる一方で、ガバナンス、ID管理、制御に関する課題も生じているが、Agentforce 3は、オープンな接続性とエンタープライズレベルの信頼性を組み合わせることで、こうした課題を解決するとしている。
AgentforceにはMCPクライアントがネイティブに組み込まれ、カスタムコードなしでMCP準拠のあらゆるサーバーにAgentforceのAIエージェントが接続できるようになる。「AI版USB Type-C」のように、企業向けのツール、プロンプト、リソースに対してシームレスにアクセスでき、既存のセキュリティポリシーのもとで管理されるとしている。
新しいMCPコネクタを活用することで、MuleSoftはあらゆるAPIやインテグレーションを、セキュリティポリシー、アクティビティの追跡、流量制御機能を備えたAIエージェント対応のアセットへと変換する。これにより、チームはマルチエージェントによるワークフローの連携とガバナンスを実現できる。
Heroku Managed InferenceとAppLinkを活用することで、カスタムMCPサーバーのデプロイ、登録、管理、接続が迅速かつ容易に行える。Herokuの安全なインフラとDevOps自動化機能により、開発者は信頼性の高いカスタムアクションをスムーズにAgentforceへ組み込める。
AgentExchangeは既に、パートナーが構築したエージェントアクションやテンプレートを通じて、迅速に価値創出できる信頼性の高いツールを簡単に整備できる仕組みを実現している。今後、企業は30社以上のパートナーが提供するMCPサーバーを利用できるようになり、新たなサードパーティ製ツールやリソースへの信頼性の高いアクセスが可能になるとしている。これらのサーバーは、セキュアなAIエージェントゲートウェイを介して、Agentforceとシームレスに接続される。MCPローンチパートナーには、AWS、Box、Cisco、Google Cloud、IBM、Notion、PayPal、Stripe、Teradata、WRITERなどが名を連ねている。
Salesforceでは、あらゆる業界のAgentforceの顧客は、200種類以上の、業種別に事前作成されたアクションを活用することで、AIエージェントから迅速に価値を引き出せるようになると説明。これらのうち半数は、2025年夏に新たに追加予定のもので、患者の予約管理、広告提案書の作成、車両の整備対応などが含まれる。また、Agentforce 3では、Sales Cloud、Service Cloud、業界別ソリューション向けの新たなSKUとともに、シンプルかつ柔軟な価格体系も導入され、これにより、ユーザーごとの価格設定と、従業員向けAIエージェントによるアクションの無制限利用が可能となり、各チームはスピーディーに導入を開始し、大胆に労働力を拡張できるとしている。
Agentforce 3は、グローバル展開を拡大し、カナダ、英国、インド、日本、ブラジルでの展開を通じて、各地域内でのAIエージェントのトラフィックに対応可能となると説明。また、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、日本語、ポルトガル語の6言語が新たに一般提供され、今後数カ月以内に30以上の追加言語が順次展開される予定としている。