イベント

「最大のポイントはIn-Memoryオプション」、日本オラクル、三澤専務に聞くOpen World 2013の総括

日本オラクルの三澤智光専務執行役員

 米Oracleが、米国サンフランシスコで開催中のOracle Open World San Francisco 2013において、日本オラクルの三澤智光専務執行役員が、日本の報道関係者の取材に応じた。

 三澤専務執行役員は、「今回のOracle Open Worldにおいて、最大の発表はOracle Database In-Memoryオプション。データベースの常識を変えることになり、ベンダー、SIer、ユーザーの考え方を大きく変えることになる」とする。

 また、「クラウドに関しても着実に進化していることを示すものになった。SaaSはラインアップが広がり、顧客の活用が始まっている。PaaSでもJava as a Serviceが本格展開する。重要なサービスが整ってきた」などとした。

 三澤専務執行役員に、Oracle Open World San Francisco 2013を総括してもらった。

クラウドのラインアップが広がる

10のクラウドサービスが発表された

 Oracle Open World San Francisco 2013では、クラウドの進化を示すことができた点は大きな要素だといえます。

 Database as a Serviceは、Oracle Database 12c対応という形でリリースされました。また、買収したNimbulaの技術を使って、クラウド間のインターオペラビリティを上げるといった発表もありました。Oracleが提供するクラウドサービスが拡充してきたと感じています。

 ただ、勘定系システムをクラウドで動かすのはもう少し先になるでしょうね。Oracle Cloudにデータをローディングするといったことを考えると、技術的に超えなくてはならない課題もあるからです。まずは、開発用途やデプロイ環境で、Oracle Cloudを活用してもらうことになるでしょう。

 Java as a Serviceは、いわばsalesface.comのforce.comのような位置づけられますが、Oracleが提供するSaaSの機能で足りないと感じた場合にも、外付けで開発することができるようになります。

 いま北米市場では、パブリッククラウド上に、プライベートスペースを作るといったことが始まっています。例えば、Government Cloudとして、この市場に必要だと思われるものをまとめてサービスとして提供するといったことがそのひとつです。業界に特化した形で、OracleのGBU(グローバルビジネスユニット)が、クラウドサービスを開始するといったこともあります。

 しかし、クラウドサービスは北米とそれ以外の地域では、まだ取り組みに差があるというのが実態ですね。米国国内だけのサービスもあります。

 実際、Cloud Marketplaceでも、日本のお客さまからの感度は低い。これを積極的に活用するというところまでは到達していません。このあたりを訴求していく必要もあります。ちなみに、すでに日本のパートナーが、アプリケーションを登録することは可能となっています。

Microsoftなどとの提携の影響は?

 クラウドは、オンプレミスとは別のプラットフォームとなっているため、その統合作業には多くのコストがかかるのですが、salesforc.comとの提携により、同社のSFAと、OracleのHCMを、面倒な統合作業を抜きにして組み合わせることが可能になってきます。今後は、こうしたクラウドインテグレーションを、異なるサービスの間で行っていくという動きが出てくるでしょう。

 例えば、クラウド基盤であるNimbulaのような仕組みがあり、OpenStackのファンクションを持っていれば、Amazon Web Services(AWS)に乗っているOracleの仕組みを、Oracle Cloudやオンプレミス環境へと、すぐに移行できるようになります。インターオペラビリティを確保するということが、今後、大変重要になるでしょう。

 一方、Microsoftとの提携は、むしろ、Microsoftにとって大きな意味があるのではないでしょうか。この提携によって、Oracleの全プロダクトがHyper-V対応になるわけですから、VMwareとの対抗上、Oracleのプロダクトを導入しているユーザーが、Hyper-Vを選択できるようになります。

 Microsoftにとって最大のライバルであるAmazonのAWSの上でOracleのプロダクトが動いていますから、Windows AzureでもOracleのプロダクトが動くということは重要な要素となります。特に、AWSではOracle Database Standard Edition One(SE One)しか動きません(編集部注:ライセンス込みモデルの場合。ライセンスを持ち込む場合はEnterprise Edition、Standard Editionともに利用できます)が、Azureではバージョン固定がありませんから、その点でもMicrosoftは強みを発揮できるといえます。

 もちろん、Oracleにとってもメリットがあります。例えば、Azure上で選択できるエンタープライズLinuxが、Oracle Linuxになるということは大きなメリットとなります。

 Microsoftおよびsalesforce.comとの提携で、Oracleのクラウドはどこでも動くというのは、お客さまにとっては選択肢が広がるわけですから、非常にいいことだと思います。これだけ多くのクラウド環境で動くデータベース製品はほかにありません。

(大河原 克行)