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Oracle CEO キャッツ氏、米CIAのデジタル化、メガバンクのクラウド化にOracleが貢献していると紹介

Oracle CloudWorld 2024の基調講演で5社の顧客が登壇

Oracleの年次イベントOracle CloudWorld 2024

 データベース、クラウド・サービス・プロバイダー(CSP)のOracleは、9月9日~9月12日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガス市の会場で、同社の年次イベント「Oracle CloudWorld 2024」を開催している。会期2日目の午前中には、Oracle CEO サフラ・キャッツ氏によるメインの基調講演が行われた。

 この中でキャッツ氏は、ご当地ラスベガスのカジノホテルを運営するMGM Resort、米国政府の情報機関CIA(米国中央情報局)、グローバルに展開する金融機関BNP PARIBAS、セキュリティソフトウェア企業のCloudflareといった顧客企業を壇上に呼び、Oracleを活用していることが顧客のビジネスをどのように加速しているのかを紹介した。

Oracle CloudWorld 2024で講演するOracle CEO サフラ・キャッツ氏

多くのエンタープライズで採用されているOracle Database、それを武器にクラウドへの移行を促すOCI

 Oracleは1977年にデータベースなどのソフトウェアを開発・提供するソフトウェアベンダーとしてスタートした企業。1970年代に、現在も同社の会長 兼 CTO(最高技術責任者)を務めるラリー・エリソン氏が開発したOracle Databaseが、企業のミッションクリティカルなデータベースとして採用され、1982年に現在の社名であるOracleに変更してから、成長を続けて現代に至っている。

 Oracleの強みは、Oracle Databaseが大企業のミッションクリティカルな業務に利用されていることで、汎用機などから徐々にOracle Databaseへの移行が進み、オンプレミスのミッションクリティカル向けのデータベースでは圧倒的なシェアを誇る。現在の最新バージョンは「Oracle Database 23ai」で、生成AI由来の機能実装が進められている。

 そのOracleが、Oracle Databaseのクラウド化を武器にしてクラウド事業として展開しているのが、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)。オンプレミスのOracle Databaseからクラウドへの移行を目指したい企業にとって、第一の選択肢となっている。近年のOracleは、OCIをそうしたOracle Databaseのクラウド版という位置づけから脱却させ、Oracle Databaseにあるデータを活用した生成AIアプリケーションの導入などを進めており、より汎用的に使えるクラウドサービス事業へと移行を進めている。

 今回行われたOracle CloudWorld 2024も同様に、OCI向けに新しい機能を追加する発表が多く行われている。9月10日の午前中に行われたOracle CEO サフラ・キャッツ氏の基調講演に先だって、OCI向けの新しいサービスとなる「OCI GenAI Agents」が発表され、その最初の製品として「RAG Agent」、Oracle Database 23aiを利用して生成AIのアプリケーションの開発を行う「エンタープライズ向け生成開発(GenDev)」、さらにはOCIのネットワークインフラストラクチャをゼロトラスト化する「OCI Zero Trust Packet Routing」などが発表された。

長年の競合だったAWSと歴史的なパートナーシップを発表したOracle

 Oracle CEOのキャッツ氏は、「我々の会長でありCTOであるラリー・エリソンのリードの元、Oracle Databaseは発展を続けてきた。そして今はクラウドを構築してきて、新しいサービスを皆さんに提供している。昨日我々は重要な発表を行った。それは長い間我々の競合であったAWSとの連携だ。既に我々はGoogle、Microsoftとの連携を行っており、どのクラウド・サービス・プロバイダーでも我々のデータベースが使えるようになったことになる。どのクラウドを利用するかは顧客次第だ」と述べ、この基調講演の前日に発表されたAWSとの提携なども例に挙げながら、Oracle Databaseを核にしたOracleのテクノロジーがさまざまなクラウドに採用されていることをアピールした。

Oracle CEO サフラ・キャッツ氏

 これまでOracleは、Google CloudとMicrosoft Azureに対してOracle Databaseの技術を両者のクラウドサービス上に実装する取り組みを行ってきたが、AWSに関してはAWSが自社でオンプレミスのOracle Databaseを導入して顧客にサービスを提供するなどしており、AWS上にOracleがOracle Databaseを最適化して実装するという取り組みは行われてこなかった。

 今回の発表で、そうした状態に終止符が打たれ、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、そしてOracle自身のOCIと、4大CSPすべてでOracle Databaseがサービスとして提供されることになる。

 CSPのリーダーであるAWS、そしてエンタープライズ向けデータベースのリーダーのOracleが、競合関係を超えてパートナーになったことは、両者の顧客にとって大きな意味がある。なお、このキャッツCEOの基調講演の数時間後に行われる、エリソン会長 兼 CTOの基調講演で、AWS CEOのマット・ガーマン氏がゲストとして登壇することが明らかにされており、そちらで詳細が説明される見通しだ。

MGM Resortsのデジタル化、CIAのオフィサーのデジタル化に貢献しているOCI

 キャッツ氏は、会場となったラスベガス市を本拠地とする、ホテル・エンターテインメント(カジノ事業)などで知られるMGM Resorts International、米国政府機関であるCIA(米国中央情報局)、欧州のメガバンクBNP Paribas、クラウドセキュリティ企業のCloudflare、チリの通信事業者Entel Chileの5組織のゲストを壇上に呼び、それらの組織がどのようにOracle製品を利用しているのかを説明した。

 MGM Resorts International 社長 兼 CEOビル・ホーンバックル氏は、地元ラスベガス市内に複数のカジノホテルを所有するMGM Resortsが、どのようにOracle製品を活用しているかを説明した。MGM Resortsは噴水で有名なBellagio、MGM Grand、Park MGMなどの著名なカジノホテルを複数所有するエンターテインメント企業で、ラスベガスのみならず、米国外でカジノホテルを建設する時にはその事業者として必ず名前が挙がるほど、カジノホテル界隈では名の知れた企業だ。

 ホーンバックル氏は「コロナ禍でラスベガスのデジタル環境は大きく変化した。今やデジタルチェックインは35%近いユーザーが利用しているし、デジタルコンシェルジュを利用している。それにより我々も運営コストを下げることが可能になっており、大きなメリットを享受している。我々は2020年5月にデジタルをもっと活用にするに戦略を変更し、財務システム、レポート作成などを従業員がより効率よく行えるようになった。こうした施策により、それらに費やされていた労働力を25~30%削減することが可能になり、ほかのことに労働力を振り分けられるようになった」と述べ、Oracleのシステムを利用して業務効率の改善を図れたと説明した。

 また、AIの導入がMGM Resortsのビジネスにどう影響を与えるかは「日々1万5000~2万もの予約確認などの電話がかかってくる。AIにより、それらをある程度処理できるようになれば、業務効率化の効果は大きい。また、我々の収益のうち約半分は1%の顧客に由来していることがわかっており、パーソナライズ化が重要になっているが、AIツールはその助けとなる」と述べ、MGMが導入しているOCIのAIツールが、業務の効率化だけでなく、顧客にパーソナライズしたサービス提供にも活用できると述べた。

MGM Resorts International 社長 兼 CEOビル・ホーンバックル氏(左)とキャッツ氏(右)

 また、CIAのCIO(最高情報責任者)のラナイア・ジョーンズ氏は、「CIAはインテリジェンス(国家的情報管理)のコミュニティで常重要な役割を果たしており、常に最新のテクノロジーの導入を図っている。ITに関してももちろん例外ではなく、最近では生成AIの発展などにも注目し、可及的速やかに業務に取り込むことが重要だと考えている。特にインテリジェンスで重要なのはデータのセキュリティで、それをどうやって維持するのかが重要になる。また、生成AIの便利な点である翻訳や要約なども積極的にビジネスに取り組んで行き、係官が効率よく情報を収集したり、分析したりするのを助けたいと思っている」と述べ、Oracle Databaseなどの高いセキュリティを実現しているシステムを長年使ってきたが、ここ近年では、生成AIなども積極的にCIAの業務に導入して活用していると説明した。

CIA CIO(最高情報責任者) ラナイア・ジョーンズ氏(左)とキャッツ氏(右)

BNNP ParibasのようなメガバンクがOCIを利用してクラウド化を実行、Cloudflareはマルチクラウドの利点を評価

 BNP Paribasからは、取締役 副会長 ジャン-イヴェス・フィロン氏とCIO(最高情報責任者)ベルナール・ジョヴァンニ氏が登壇し、欧州のメガバンクでBNP Paribasが、お堅い産業の代表と言える銀行業が、どのようにしてクラウド・サービスへと乗り換えたのかを説明した。BNP Paribasのフィロン氏は「クラウド・サービスへと乗り換える最大の動機になったのはグローバルのビジネス展開での利便利性だ。我々のビジネスでは80カ国で60の異なる通貨を扱っている。そうした中でグローバルの展開が容易なクラウド・サービスを選択するというのは合理的な選択だった」と述べ、クラウド移行がなかなか難しいと考えられている銀行業であるBNP ParibasがOCIに乗り換えた理由はグローバル展開と複数の通貨を扱うといった地域ごとにニーズが異なることだったと明らかにした。

左からBNP Paribas CIO(最高情報責任者)ベルナール・ジョヴァンニ氏、BNP Paribas 取締役 副会長 ジャン-イヴェス・フィロン氏、キャッツ氏

 CIOのジョヴァンニ氏は「我々には一万を超えるデータベースがあり、それを一つの領域に簡素化して、同じツールで扱えるようにする必要があった。その時の現実解がOCIであり、顧客の利益を損なうことなくそれを実現できたことを誇りに思う」と述べ、サイロ化(細分化)してしまっているデータベースを一つにまとめる必要があって、それを実現するソリューションがOCIだったと述べた。

 Cloudflare 共同創業者、社長 兼 COO(最高執行責任者)のミッシェル・ザトリン氏は、「OCIを選択した理由はいくつもあるが、その代表的なものはマルチクラウドだ。我々自身や顧客はクラウドを単体で使うのではなく、マルチクラウドで利用している。そうした時に、OCIのような柔軟な姿勢を持っているCSPは魅力的な選択肢に見えた」と述べ、OCIがCSPの中でマルチクラウドに対して一番オープンな姿勢を持っているように見えたことがOCIを選択した理由だと述べた。

Cloudflare 共同創業者、社長 兼 COO(最高執行責任者) ミッシェル・ザトリン氏(左)とキャッツ氏(右)

 このほか、チリの通信会社EntelのCEOであるアントニオ・ブッチ氏は、OCIを活用して生成AIなどのツールを活用したことが、自社の顧客満足度を上げることにつながったと説明した。

Entel CEO アントニオ・ブッチ氏(左)とキャッツ氏(右)