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VMwareが新ソリューションを発表、キーワードは“マルチクラウド”と“生成AI”

VMware Explore 2023速報レポート

 VMwareは8月22日(米国時間)、開催中のプライベート年次カンファレンス「VMware Explore 2023」(8/21~8/24)において、NVIDIAと共同開発したエンタープライズ向けの生成AIプロダクトや、アプリケーション開発プラットフォーム「VMware Tanzu」ポートフォリオの機能拡張などの発表を行った。

 基調講演に登壇したVMware CEOのラグー・ラグラム(Raghu Raghuram)氏は「今年のキーワードはマルチクラウドと生成AI」とコメントしており、特に急増する生成AIのワークロードに対してVMwareのインフラを最適化させた機能拡張が多い印象だ。

VMware CEOのラグー・ラグラム氏
VMware Explore 2023のテーマには、従来からVMwareが注力する「マルチクラウド」と、世界中の企業から注目されている「生成AI」が掲げられている

イベントで発表された主要なアップデート

 VMware Explore 2023で発表された主要なアップデートの概要は以下の通り。

VMware Private AI Foundation with NVIDIA

 長年のパートナー関係にあるNVIDIAと共同で開発したエンタープライズ向けのAIプラットフォームで、「VMware Cloud Foundation」上に構築されており、NVIDIAのハードウェアとソフトウェアスイート(LLMの作成やカスタマイズをPC上で行える「NVIDIA AI Workbench」、およびエンドツーエンドなAIソフトウェアスイート「NVIDIA AI Enterprise」)に最適化されている。

 “Private”とあるように、エンタープライズが生成AIを活用するときに課題となるセキュリティやプライバシー、コスト、パフォーマンスなどのバランスを考慮したプラットフォームとなっており、特にLLMの生成やカスタマイズのセキュアな実行にフォーカスしているのが特徴。ユーザーはモデル開発のフレームワークとして「NVIDIA NeMo」またはMetaが開発する「Llama 2」などを選択できる。

 また、Dell、HPE、Lenovoの3社がハードウェアパートナーとしてサポートしており、NVIDIAのデータセンター向けハードウェアである「NVIDIA L40S GPUs」「NVIDIA BlueField‐3 DPU」「NVIDIA ConnectX-7 SmartNICs」などを搭載した環境が提供される(リファレンスアーキテクチャも公開)。提供開始時期は2024年前半の予定。

VMwareとNVIDIAが複数年に渡って開発してきた“プライベートAI”のためのプラットフォーム「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」は、すでにリファレンスアーキテクチャも示されている。セキュリティやプライバシーに配慮した閉じたプライベート環境でありながら、LLMやフレームワーク、ハードウェアの選択肢が豊富である点が特徴

VMware Tanzu

 開発者ポータルを容易に作成できるSpotify製のオープンプラットフォーム「Backstage」をモダンアプリケーション開発プラットフォーム「VMware Tanzu Application Platform(TAP)」のプラグインとして新たにサポートする。

 またテックプレビューとして、アプリケーション開発者が要求するビジネス要件(セキュリティ、可用性、暗号化など)を、Application Space(TAPにおける開発チームの共有スペース)に自動で組み込むことができる「Tanzu Application Engine」を追加、異なるクラウドやKubernetes環境であっても継続的に要件を適用することが可能になっている。

 さらに「あらゆるクラウド上でアプリケーションの開発/実行/最適化を実現する」というTAPの機能を拡張することを目的に、VMwareの共通データプラットフォーム「VMware Tanzu Hub」上に新たなTanzuポートフォリオとしてML/AI機能を統合した「Tanzu Intelligence Service」が追加され、クラウドアプリケーションのパフォーマンスやコスト、セキュリティ、ガバナンスなどの最適化をML/AIのインサイトをもとに実行することができる。

 なお、今回のVMware Tanzuポートフォリオのアップデートは、一部を除いてベータ版として提供される。

モダンアプリケーション開発におけるアプリケーション開発のビジネス要件を、プラットフォームエンジニアリングに迅速に反映させるための新機能「Tanzu Application Engine」。クラウド環境やKubernetesサービスを問わずに、継続的かつ自動的に適用される

VMware Cloud(VMware Cloud Foundation + VMware Cloud Services)

 VMwareのインフラとサービスをクラウド環境で利用する顧客のニーズに応じて、「Essentials」「Standard」「Pro」「Advanced」「Enterprise」の5つのエディションを用意した。

ユーザーの規模やニーズにあわせてVMware Cloudのエディションを5つに整理

 さらに、VMware Cloud環境をデプロイ/管理する方法として以下の3つの方法を提供する。

・顧客による管理 … 顧客自身のデータセンター、またはEquinixなどコロケーションパートナーによるデプロイ
・VMwareによる管理 … VMwareの分散型クラウドサービスである「VMware Cloud on AWS」や「VMware Cloud on Equinix Metal」の利用
・プロバイダによる管理 … 「IBM Cloud」などパートナー企業が提供するVMware Cloud環境の利用

 またVMware Cloud Foundationのアップデートとして、AIワークロードのサポート強化やパフォーマンスの改善、セキュリティの強化が図られたほか、以下の新機能が新たに実装されている。

・VMware vSAN Max … 生成AIのワークロードが要求する大量のデータセットに対応可能なペタバイトスケールの分離型ストレージ
・VMware NSX+ … マルチクラウドに対応したSaaSとして提供されるVMware Cloud向けのコアネットワーキングおよびセキュリティ機能で、一元化されたクラウドオペレーティングモデルやセキュリティポリシーをマルチクラウドに適用可能にする(旧Project NorthStar)
・VMware NSX+ VPC … NSX+で完全に閉域化された仮想プライベートクラウド環境をマルチクラウド上にAPI経由で容易に作成
・VMware Ransomeware Recovery … VMware Cloudのサービス(SaaS)として提供される、ファイルレス攻撃(悪意あるコードをメモリ上で直接実行する攻撃)を受けた仮想マシンのリカバリにフォーカスした機能

VMware Cloud Foundationのストレージコンポーネントとして追加された、ペタバイト(PB)スケールの分離型ストレージ「VMware vSAN Max」

VMware Edge Cloud Orchestrator

「VMware SASE Orchestrator」のカバレッジを拡張し、「VMware SASE」と「VMware Edge Compute Stack」を統合して単一のコンソールから管理できるようにしたソフトウェアディファインドなエッジソリューション。エッジ環境におけるインフラ、ネットワーク、セキュリティの包括的な管理を実現し、ロケーションごとに適切なサイズのエッジインフラを構築しやすくする。

VMwareはエンタープライズのDXにおいて、“ソフトウェアディファインドなエッジ”を、重要な役割を果たすインフラとして位置づけている。今回発表されたVMware Edge Cloud Orchestratorは、既存の「VMware SASE Orchestrator」を拡張し、単一のコンソールからエッジ環境のインフラ/ネットワーク/セキュリティを包括的に管理する

VMware Anywhere Workplace

 従業員のデジタルエクスペリエンスを管理するソリューション「DEX」の機能拡張モジュールである「Insights」を強化、これまでモバイル/デスクトップ環境に提供してきたアノマリー検知(業務環境に問題が生じている可能性があることを通知する)機能をフロントライン用端末とVDI環境にも提供する。また、ヘルプデスクなどのサポートチームの業務を効率的にするための新たな「Playbooks」を追加、段階的な指示書を自動で作成できるようになり、インシデント発生時の問題解決を効率的に行える。

 また、統合エンドポイント管理ソリューション「VMware Workspace ONE UEM」のセキュリティとコンプライアンスを向上させるために「Intel vPro」のクラウドネイティブ連携機能を統合、業務で使用するデバイスの保護とリモート管理がクラウドから実行可能となっている。

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 基調講演には、スペシャルゲストとしてNVIDIAのジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOが登壇、VMwareによるエンタープライズ向けの生成AIの取り組みを高く評価し、共同で開発したVMware Private AI Foundation with NVIDIAについて「ようやく世界中のエンタープライズが望んでいた“プライベートなAI”が実現できるようになる。このプラットフォームを世の中に出すために何千人ものエンジニアが何年も仕事をしてきた」とコメントしている。

スペシャルゲストとして登壇したNVIDIAのジェンスン・フアンCEO。生成AIのブームにより世界的にGPUが不足している現状を挙げて「皆さんの最大の疑問は“どうやってGPUを獲得するか”だと思うけど、その解決のために今回、GeForce RTX 4090を5台、プレゼントにもってきた」とアナウンス、箱にはふたりのCEOのサインが入れられている