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マーク・ハードCEO、“2015年に予測した10年後”の姿をいったん検証
Oracle CloudでのAMD EPYCプロセッサ採用も発表
2018年10月25日 06:00
米Oracleが米国サンフランシスコで開催している年次イベント「Oracle OpenWorld 2018」。
2日目となる10月23日には、Oracleのマーク・ハード(Mark Hurd) CEOによる基調講演が行われた。
2015年に発表されたIT産業の未来予測を一度検証
ハードCEOは、2015年のOracle OpenWorldにおいて、その時点から10年後となる、2025年のIT産業に関する予測を発表していたが、それから3年を経過した今回の基調講演では、その内容を一度検証してみせた。
ハードCEOは、2025年には、80%のプロダクションアプリがクラウドに乗ること、2社のSaaSプロバイダーが市場シェアの80%を獲得すること、エンタープライズクラウドが最もセキュアなIT環境を実現することなどを予測しており、「当時は、かなり批判を受けた。それは理にかなわないとも言われた」という。
しかし、「その後、調査会社は私の予測と同様の予測をするようになってきた」とのことで、「2017年にはForbesが、『今後15カ月で、IT投資の80%がクラウドアプリとクラウドソリューションに投資されるだろう』としたほか、2018年にはGartner Researchが『2025年には伝統的なデータセンターはすべて閉鎖されるだろう』と予測した。さらにはForrester Researchが『2018年には、Oracle、Salesforce.com、Microsoftの3社でSaaSの売り上げの70%を占めている』」といった結果を発表していることを示す。
そして、「私は、それらをすでに3年前に予測していた。ここから導き出されるのは、私の新たな予測にも信ぴょう性があるということである」と話して、会場を沸かせた。
また、「クラウド市場は、予想以上に加速している。では、クラウドの次に来るのはなにか。それは、クラウドファンデーションとAIの組み合わせであり、それによって生産性の向上と変革をもたらすことになる」と新たな予測を示してみせた。
「AIは核となる技術であり、今後はどんなソリューションであってもAIが組み込まれていくことになる。自動化によって作業時間を短縮し、機械学習の進化により生産性が向上し、意思決定を支援することができるようになる」と述べたハードCEOは、AIの活用によって、ERPではレポート作成のための時間が30%削減され、HCMでは35%、SCMでは65%、コールセンターにおけるカスタマエクスペリエンス(CX)では60%の時間削減がそれぞれ可能になるとした。
さらに新たな予測として、2025年にはすべてのクラウドアプリにAIが組み込まれること、顧客とのやりとりの85%はAIを使って自動化されることを発表したほか、ITに関する仕事の60%は今はない仕事であり、それは2025年までに創出されることになると述べている。
「例えば、Oracle Autonomous Databaseの登場によって、今後はDBAという仕事がなくなるかもしれない。そうなった場合には、より高い次元の仕事を行う新たな仕事が創出されることになるだろう。また自動化によってサービスレベルが高まり、実現速度が速まることになる。その結果、自動化は仕事を減らすのではなく、仕事を増やすことにつながるかもしれない。例えば、ロボットを管理するスーパーバイザーという仕事が生まれる可能性がある。人とマシンのユーザーエクスペリエンスの専門家も生まれるだろう。AIを活用した医療分野のテクニシャンも登場するだろう。こうした新たな仕事が誕生することになる」などとした。
2日目もさまざまな新製品や製品強化を発表
一方、この日も数々の新たな製品発表が行われた。
まず、実ビジネスに対応したブロックチェーンアプリケーションとして、バリューチェーン全体のトレーサビリティと透明性を強化する「Oracle Blockchain Applications」を発表した。
これはOracle Blockchain Cloud Serviceを利用して構築され、Oracle Supply Chain Management(SCM) CloudやOracle Enterprise Resource Management(ERP) Cloud、その他のOracle Cloud Applicationsとシームレスに接続することができる。
また、サプライチェーンにおける商品と取引のエンドツーエンドのトレーサビリティを実現することで、遅延を減らし記録を自動化。リコール対象製品の回収や紛争解決、偽造品の撲滅、規制順守、不正からの保護が行えるようになるとした。
加えて、階層的シリアル番号のライフサイクル管理、コンポーネントの払い出しや構成、品質検査結果を記録し、製品のすべての変換点を追跡することで、製品の系譜、シリアル、起源を参照できるようにするとのこと。
また「Oracle Autonomous Database」において、データを確実に保護するための新しいクラウドセキュリティ技術を提供することも発表された。自己保護機能と自己パッチ適用機能、脅威を緩和するための機械学習とインテリジェント自動化を統合し、Oracle Cloud Infrastructure上のアプリケーションのセキュリティを向上できるという。
ここでは、Webトラフィックへの攻撃から保護するWeb Application Firewall(WAF)や、アプリケーション実行の中断を阻止するDDoS保護、セキュアな構成を監視・適用するための統合されたCloud Access Security Broker(CASB)、顧客がデータの暗号化を制御するためのKey Management Service(KMS)などを提供するとしている。
このほか、企業向け次世代チャットボット構築・運用環境「Digital Assistant Cloud」では、企業の従業員を対象に、HR、ERP、CRM、CXなど複数のアプリケーションからのドメインスキルをサポートするようにトレーニングできる。包括的なデジタルアシスタントを利用可能になる。
さらに、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で動作するネイティブアプリとして、「Container Engine for Kubernetes」「Oracle Cloud Infrastructure Events」「Oracle Cloud Infrastructure Streaming」「Oracle Functions」など9種類の製品が新たに発表された。
OracleのデータセンターでAMD EPYCプロセッサを採用
また大きなニュースとして、AMDとの協業が発表された。
OCIに対するAMD EPYCプロセッサの最初の導入事例になるとのことで、会期2日目の午前中に行われたゼネラルセッションでは、米OracleのOracle Cloud Infrastructureソフトウェア開発担当シニアバイスプレジデント、クレイ・マグワイク(Clay Magouyrk)氏は、「Oracleは、EPYCプロセッサを採用した最大のパブリッククラウド事業者になる。EPYCプロセッサによって、クラウドコンピュートコストが大幅に下がり、コア時間あたり0.03ドルで提供できる。パブリッククラウドで最も費用対効果が高い環境を実現できる」と、採用によるメリットを説明した。
一方でAMD データセンター&エンベデッドソリューショングループ担当シニアバイスプレジデントのフォレスト・ノロッド(Forrest Norrod)氏は、「64ビットの実行セットや高速インターコネクトはAMDが最初に提供したものであり、EPYCは、こうした長年の経験をもとに開発した、クラウド分野向けの新たなハイパフォーマンスCPUだ」とアピール。
さらに、「I/O性能も高く、セキュリティも強化されている。パブリッククラウドのOCIに向けて、ベアメタルと仮想マシン構成の環境双方に価値を提供できる。e-Business Suite、JD Edwards、Siebel、PeopleSoftといったアプリケーションがEPYCプロセッサ上で動作することになる」などとした。
なお、Oracleのマグワイク シニアバイスプレジデントは講演のなかで、データセンター 東京リージョンの開設は2019年5月、大阪リージョンの開設は2019年12月を予定していることを明らかにした。
また、米Oracle IaaS製品開発担当のドン・ジョンソン(Don Johnson) シニアバイスプレジデントは、報道関係者を対象にしたセッションで、昨日発表されたGeneration 2 Cloudについて言及。
「セキュリティ、経済性、コストパフォーマンスにおいて、第1世代のクラウドとは異なる、新たな世代のものを開発した。データを扱うために、Exadataクラスの性能をデータセンタースケールで稼働させることを前提としている。また、ベアメタルの環境と同じような性能を実現し、さらに柔軟性を持たせている。Exadataやデータベースのチームとの協力によって開発したものであり、Autonomousの技術が支えている」などと述べている。