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米Oracle ハードCEOの基調講演に8人のCIOが参加

CIOが情報投資への現状と改善成果を示す~Oracle OpenWorld 2014

 米Oracleが開催している「Oracle OpenWorld Sun Francisco 2014」の開催2日目となった30日の午前8時30分(米国時間)から、先ごろ、CEOに就任したばかりのMark Hurd氏の基調講演が行われた。

大手企業8社のCIOが登場

 基調講演のテーマは、「The Business Value Cloud」。IT部門が予算の80%をITシステムの維持、運用のために費やしていることを示しながら、Hurd氏は、「CIOの仕事は大変である。ボートレースで多くの人が声をあげて指示をしているが、漕いでいる人は1人。いまのCIOはこれに近い状況にある。各部門から要望があり、それに1人で対応している状況だ」などと切り出し、「この基調講演を通じて、なにが現実であり、それに対してOracleがなにをできるのかということを示したい」とした。

 今回の基調講演を、「Main Stage Conversation」と呼んだように、Oracleからの一方的な情報発信だけでなく、参加者とともにコンファレンスを構成するという姿勢を打ち出したのが特徴だ。

 Mark Hurd氏の基調講演は、その狙いを踏襲したものとなり、大手企業8社のCIOが登壇し(一部はビデオメッセージ)、Hurd氏が各CIOに質問をする形で講演を進行した。

米OracleのCEO、Mark Hurd氏

 米小売り大手のWalgreenのCIOであるTim Theriault氏は、「小売店舗におけるサプライチェーンととともに、医薬品のサプライチェーンを運用することで、店舗における適切な在庫を確保し、品切れがない状態を実現している。IT予算は昨年に比べてダウンしたが、技術力を駆使することで顧客に価値を提供できる。予算が下がっても、イノベーションは実現できる。一方で、セキュリティが大変重要になっている。顧客の情報を守るということを最優先していく」と語った。

 また、「Oracleは、買収した企業を含めて、シームレスな形で幅広いソリューションを提供することで、われわれの価値の増大につなげることができる。その価値をクラウドで提供してもらい、低コスト化することにも期待している」と語った。

 GEのCIOであるJamie Miller氏はビデオで登場。「データアナリティクスに大きな投資を行ってきたが、ここでは、いかに有機的にハードウェアとソフトウェアを結びつけることができるか、いかにシンプルにするかということが課題であった。ユーザーにモバイル環境を提供し、アプリの管理を容易にすること、プロセスを標準化することが重要であった。そのためには、オープン化したツールを活用すること、可能にものに関してはクラウドに持って行くことが大切であると考えた。クラウドは今後10年を考えても重要な取り組みになる」とコメントした。

WalgreenのCIO、Tim Theriault氏
ビデオで登場したGEのCIO、Jamie Miller氏

 P&GのCIOであるFilippo Passerini氏は、「昨今では、リアルタイムでデータが集まり、さらにソーシャルから情報を集め、それをスクリーン上に表示し、商品の売れ行きの変化などに瞬時に対応できるようにしている。これにより、意志決定の時間を短縮することができている。複雑な情報をビジュアルで表示することが情報を理解するのには最適であり、これこそが短時間で意志決定することに直結するコツである」と語り、「買収後15カ月でのGillette統合は、Oracleのパートナーシップなしには実現できなかった」などと述べた。

 dunnhumbyのCIOであるYael Cosset氏は、「モノから発信される最新のデジタルテクノロジーを取り入れて、顧客データを分析するために、Exadataを導入。信頼性が高い環境において、情報を提供することができている。もしシステムがダウンした場合には、何万人もの体験機会が失われることになる。今後は、スケーラブルで、信頼性の高いクラウド環境を活用したいと考えている」とする。

P&GのCIO、Filippo Passerini氏
dunnhumbyのCIOであるYael Cosset氏

 一方、ビデオメッセージを寄せたPEARSONのCIOであるAlbert Hitchcook氏は、「買収を通じて事業を拡大するなかで、それぞれの会社が持っていたITを見直して、ひとつのERPに統合し、合理化する取り組みを行ってきた。そのためにはITをシンプルにするとともに、ユーザーの利用体験を高めることが必要である。そして、これがちゃんと利用されているか、プライバシーを保護できているか、各国の規制当局のルールを順守しているかというとを検証していくことが必要である。Oracleが提供するイノベーションはこれを満たすものである」と述べた。

PEARSONのCIO、Albert Hitchcook氏はビデオで登場

重複したシステムを整理してレガシーシステムを削減

 XeroxのCIOであるSteve Little氏は、「Xeroxには、全世界14万5000人の社員がおり、158の企業内システムが稼働している。それを解決するために、グローバルHCMの導入に取り組み、さらにクラウドベースのERPも導入を開始した。ITとビジネスプロジェクトをひとつにとらえ、価値の提案につなげようとしている。しかし、そうしたなかでもIT予算は削減されている。社内には30年前のシステムがあり、それが重複した作業をしている。すべてを無くすことはできないが、レガシーシステムを削減していく必要があるだろう」などと語った。

 ビデオメッセージで登場したFedExのCIOであるRob Carter氏は、「インフラサービス、プラットフォームサービス、ビジネスサービスの利用は、伝統的なシステム構築とは異なる。FedExでは、インフラ部分をモジュラー形式とすることで、柔軟性と信頼性を持つ環境を構築した。また、プラットフォームもクラウドのなかでモジュラー化している。そして、自社で構築したものについても、クラウド環境で活用し、ハイブリッドクラウド環境を実現した。この考え方は、インフラにも適用できなくてはならない。当社の業務は、時期によって取引ボリュームが大きく変化する場合がある。それに柔軟に対応する必要がある」などと語った。

XeroxのCIO、Steve Little氏
ビデオで登場したFedExのCIOであるRob Carter氏

 IntelのCIOであるKim Stevenson氏は、「どの企業も、もっと生産性を高めたいと考えている。ビジネスの速度がますます加速しており、むしろ、ITの方が遅れている、あるいはセキュリティが邪魔だと考える人が多い。これを解決する必要がある」としたほか、「Intelは、Intel Insideのマーケティング活動において、ソーシャルリスニングキャンペーンマネジメントなどのプログラムを実施し、マーケティングを自動化。人々がどんなコンテンツが気に入るのかといったことを導きだし、メッセージをより効果的に伝えることができるようになった。この結果、見込み客一人あたりにかかる費用が、2年間で300ドルから25ドルに減少。見込み客の誘導にかかる時間は75%改善した」といった効果を示した。

IntelのCIOであるKim Stevenson氏

 最後に、Hurd氏は「Oracleはこれからもイノベーションに取り組み、ベストオブブリードの製品を提供することに取り組む」と語り、講演を締めくくった。

 なお、初日のLarry Ellison会長の基調講演で、Oracle Zero Data Loss Recovery Applianceをすぐに購入した人は10%OFFとしていたが、Hurd氏は、「私は、今週購入してもらえれば15%OFFを提示する」としたほか、「もう少し簡単な、わかりやすい名前に変えたい」と、Ellison会長が命名した長い製品名に苦言を呈した。

大河原 克行