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初日の目玉はセキュリティ重視の次世代クラウド「Gen 2 Cloud」発表
Oracle OpenWorld 2018基調講演レポート
2018年10月24日 06:00
米Oracleは10月23日から25日(現地時間)の3日間、米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで、年次イベント「Oracle OpenWorld 2018」を開催している。
全世界175カ国から約6万人が来場。基調講演は1900万ビューの視聴が見込まれているという。また、会期中には2371のセッションが行われるほか、18のショーケースと、シアターでも148のセッションを開催。219のデモも実施される予定だ。
あわせて、253社が出展する展示会場では最新ソリューションを展示している。
さらに、これまで併催していたJava Oneを拡張する形で、Oracleの開発者コミュニティも参加する、「Oracle Code One」と名付けられた新たな開発者向け会議を同時開催。635の技術セッション、50のハンズオンラボなどを用意しているという。
Gen 2 Cloudを実現する2つの技術
今年のOracle OpenWorld 2018では、日曜日夕方に行われるのが恒例だった米Oracleのラリー・エリソン(Larry Ellison) 経営執行役会長兼CTOによる基調講演が、開催初日の月曜日へ移動。講演は10月23日午後1時45分にスタートした。
エリソン会長は、まず「今日は、Generation 2 Cloud(第2世代のクラウド、以下Gen 2 Cloud)について説明を行う」と切り出し、「われわれは、安全にクラウドを利用できるようにするために、もう一度、クラウドを再構築した。そのために、2つの鍵となる技術を生んだ」とする。
そのひとつは、「脅威を侵入させないために、専用の独立したネットワークとコンピュータを用意したこと」とし、「これは、顧客ごとにゾーンを作り、悪意を持った利用者がいても、それをほかの顧客のゾーンには広げることができず、侵入を許さない安全な仕組みとなっている」と説明。
さらに、「もうひとつは、侵入した脅威を破壊するために最新の機械学習技術を活用したAutonomous Robotsの実現である。いち早く脅威に対応するためには、人手では対応できない。データを守るためには、システムを走らせながらパッチを当てることができる自動化が前提になる。自動化すれば人件費を削減でき、人的ミスをなくすことにもつながる」と発言。これを、「スターウォーズ並のサイバーディフェンスを実現する製品である」と位置づけた。
ここ数年のOracle OpenWorldにおけるエリソン会長兼CTOの基調講演では、必ず、AWSをターゲットとした発言が出ており、AWSとの比較デモが行われている。それは、今年も同様だった。
エリソン会長は、「第1世代のクラウドは、高い価格性能比があり、高い処理能力を持っている。だがその一方で、クラウドコントロールコンピュータのコードを見ることができ、コードを変更したり、顧客データを見たり、データを容易に取り出したりすることが可能になっている。AWSは、そうした仕組みになっており、これは大きな問題だ」と言及。
「そこでOracleは、これらの問題を解決する第2世代のクラウドを実現した。顧客のもとに設置したベアメタルコンピュータや共有して利用するコンピュータにおいても、入れないようにしている。自分のゾーン以外には行くことができない。そもそもアクセスする方法がないので、クラウドコントロールコンピュータにはアクセスできず、クラウドコントロールコードを書き換えることもできない。脅威は入れず、ほかの顧客に伝搬することもない。第2世代のクラウドは、データを確実に保護できる最もセキュアな環境が実現できる」と、自社の仕組みをアピールした。
またGen 2 Cloudは、セキュリティを高めたひとつのプラットフォームとして構築され、データベースやすべてのエンタープライズアプリケーションを走らせることができるのが特徴だとアピール。
さらに、今後は、世界中のデータセンターで、Gen 2 Cloudによるパブリッククラウドを提供できるようにする考えや、企業のデータセンターにもGen 2 Cloudを配置できる仕組みを提供する考えも示した。
なおOracleはクラウドリージョンのロードマップを示し、2019年末までに豪州、カナダ、欧州、日本、韓国、インド、ブラジル、中東にリージョンを拡張。さらに米国のバージニア州、アリゾナ州、イリノイ州においては、公的機関や国防総省向けにクラウドサービスを提供するという。日本では、東京および大阪のデータセンターから提供を開始することが図のなかで示されていた。
「現在、Oracleの第1世代クラウドを利用しているユーザーは、2019年夏には、ボタンをひとつ押すだけで、第2世代のAutonomous Database Cloudに移行できる」とも語る。
エリソン会長は、「より高い機能性を提供し、オンプレミスよりもパフォーマンスを高め、アップグレードやパッチも自動化する。そして、高速であり、価格競争力を持っている点がGen 2 Cloudの強みだ」とあらためて説明。
その上で、「AWSと性能だけを比較すると、50%も高いコンピュートパワーを提供でき、ブロックストレージでは5倍の性能差があり、ネットワーキングでは2倍の性能差が生まれている。それでいて、コストはAWSの3分の1で済む。Oracleに変えるだけでコスト削減につながることになる。また、AWSからほかのクラウドに移行させる場合には、Oracleクラウドからほかのクラウドに移行させる場合に比べて、100倍もの費用がかかる。ユーザーは、データやアプリケーションを移行させることを前提に考えた方がいいが、AWSを使い始めると、もはや移行することはできないといえるだろう。それは大変な問題である」などとAWSとの比較をアピールし、自社の優位性を強調していた。
Oracle Autonomous DatabaseとAWSとの比較デモ
講演の後半には、Oracle Autonomous DatabaseとAWSとの比較デモを行った。
ここでは、Oracle Autonomous Database Warehouseが、Amazon RedShiftに比べて9倍速く、8倍安いことや、Oracle Autonomous Transaction Processingが、Amazon Auroraに比べて11倍速く、8倍安いこと、ワークロードを組み合わせたデモでは、100倍速く、80倍安いことなどを示す。
さらに、パッチを当てる作業においてAWSの方がクラッシュしてしまったことを示し、「AWSは、自動運転の機能や、信頼性を高める自己チューニングの機能もなく、自動でパッチを当てる機能もない。それでいて価格が高い。クラッシュしてしまったら、人が介在しなくてはならなくなる。この時点で、Oracle Autonomous Databaseは、速さや安さにおいて、無制限ともいえる水準でAWSを上回るといえる」などとした。
そして、「今回発表したGen 2 Cloudは、侵入が不可能であるサイバー防御を実現し、クラウドコントロールコンピュータの顧客ゾーンを守り、外からのハッキングが不可能である。共有されているコントロールコードがないのが、AWSのクラウドとの大きな違いである。前面でAutonomous Robotsが脅威を検知して防ぎ、仮にDatabaseに対する脅威を発見すれば、それを破壊することができる。ロボットがデータを守ってくれるために、人の作業による遅れやミスがなく、脅威の対抗できる。企業は、生産性を高め、アプリケーションを高め、よりよい形でデータ解析ができ、決して落ちない信頼性がある」とする。
加えて、Oracle Autonomous Databaseを2TB分を無料で利用できるキャンペーンを実施することを紹介。「ぜひ、Oracle Autonomous Databaseを試してほしい。これを気に入ってもらえるはずだ」と締めくくった。
さまざまな新製品を発表
一方、初日午前に行われた基調講演で、アプリケーション製品開発担当のスティーブ・ミランダ(Steve Miranda) エグゼクティブバイスプレジデントは、いくつもの新製品を発表してみせた。
「Oracle Enterprise Resource Planning (ERP) Cloud」および「Enterprise Performance Management (EPM) Cloud」では、AIの機能を強化。データドリブン型の最新機械学習によって、新たなビジネスモデルへの挑戦、新しい市場での収益機会の創出、生産性向上を図るための洞察力を強化できるという。
また、ルールベースの処理をインテリジェントに行うIntelligent Process Automation、見逃しがちなデータパターンをAIの活用によって検出し、コンテキストに応じた洞察を適切なタイミングで提供するIntelligent Performance Management、チャットボットアシスタントによて、効率的かつ正確に経費を処理するExpense Reporting Assistantなどの機能を提供する。
「企業は、コアビジネスプロセスの自動化や、異なるシステムとの統合、財務ビジネスプロセスとテクノロジー要件の合理化を実現できる。Oracleは、世界ナンバー1のクラウドERPスイートを加速できる」(ミランダ氏)。
Oracle ERP Cloudは現在、世界85カ国において、23の業界で5500社以上の企業が採用しているという。
また、顧客データ管理に向けた独自手法を採用する「Oracle CX Unity」も新製品の1つで、「顧客行動の盲点を排除するための仕組み」と位置付けている。オンラインやオフライン、サードパーティから提供される顧客データといったあらゆる消費者データを、文脈や前後関係に応じてリアルタイムに収集・理解し、機械学習を活用して顧客に向けたインタラクションを実行することで、売り上げ増加や顧客満足度の改善、顧客のライフタイムバリューの向上を図れるとする。
「Oracle Human Capital Management(HCM) Cloud」のアップデートでは、人事部門が、より強力なチームを迅速に作成して従業員の離職率を低下させ、従業員エクスペリエンスを強化できるように、人材と人事プロセスを構築することを支援するとしている。
AIを活用することにより複雑な人事プロセスを合理化し、LinkedIn Recruitingとの統合や最適な候補者を抽出するBest-Fit-Candidate、人事に関する質問にボットで回答するDigital Assistantsの提供、組合労働者や労働協約など代表労働者向けの契約管理を自動化するルールベースのプロセス提供などを通じて、変化するビジネス部門の期待に応えられるプラットフォームとして提供できるという。
このほか、「会期3日目の水曜日には、新たな製品『Expense Chatbot』を、エリソン会長が発表することになっている」などとした。
一方で、Oracleデータベース担当のアンドリュー・メンデルソン(Andrew Mendelsohn) エグゼクティブバイスプレジデントは、Oracle Autonomous Databaseについて「世界唯一の自律型データベースであるOracle Autonomous Databaseは、2018年8月に提供開始したOracle Autonomous Transaction Processingと、2018年3月に提供を開始したOracle Autonomous Data Warehouseで構成される。データベースの自己稼働、自己保護、自己修復機能を備えており、パッチ適用やチューニング、アップグレードなどの重要管理プロセスを自動化し、重要なインフラストラクチャの自動的な稼働を維持できるのが特徴だ。機械学習を活用し、優れた可用性や高パフォーマンス、セキュリティ強化を従来よりも低コストで実現する」と紹介。
「パッチの適用を含む月間ダウンタイムは2.5分未満であり、CIOにとってはコストとリスクを低減でき、開発者にとってはアプリケーションの拡張と強化を加速できる。そしてDBAに対しては、ビジネスに対して価値を高める仕事に集中することができるようになる」と、担当者それぞれの立場に応じた価値を提供できるとした。
加えて、「Oracle Autonomous Databaseはデータマネジメントを再定義した製品である。基幹業務データベースの実行から複雑性を取り除き、これまでにないコスト削減やセキュリティ、可用性を提供できる」ともアピールしている。