仮想化道場

Haswellアーキテクチャの最上位プロセッサ「Xeon E7 v3」

最大の特徴はRun Sureテクノロジー

 Xeon E7 v3の最大の特徴は、システムのトラブルをハードウェアが検知するRun Sureテクノロジーだ。Xeon E7 v3では、Xeon E7 v2で採用されたRun Sureテクノロジーの機能を拡張して、さらに多くのマシントラブルをチェックできるようになっている。

 具体的には、システムRASといわれるエンハンスド MCA Gen2とメモリRAS機能などが用意されている。

 Xeon E7 v3では、MCA(マシン・チェック・アーキテクチャ)でチェックできるイベントの数を増やしている。MCAからのイベントは、Itaniumと同じようにファームウェアにエラーが伝えられる。もし、メモリのパリティエラーなど、MCAより下層の段階でエラーのリカバリが済むようなトラブルは、ファームウェアにエラーログを残し、上位のOSなどにエラーをその時点では伝えないようにすることも可能になった。

 この機能により、ファームウェアがインテリジェンスを持ち、ある程度のエラーを修正できるようになる。重大なトラブルが起こるエラーだけをOSに通知し、OS側で処理することで、細かなエラーでシステムをシャットダウンすることがないようにする。ある程度修正可能なエラーがある場合でも、OSやアプリケーションの処理を優先して行い、システムのメンテナンスを遅らすことで、ミッションクリティカルサーバーとして、止まらない、止めないサーバーが構築できる。

 メモリRAS機能としては、アドレス・レンジ・メモリ・ミラーリングという機能がサポートされた。Xeon E7 v2では、DIMM単位でのメモリミラーリングしかできなかったが、Xeon E7 v3では、特定のアドレスのメモリだけをミラーリング可能になっている。

 これにより、OSが使用するメモリ領域だけをミラーリングして、冗長性を持たすことができる。OSが使用しないDIMMの領域は、アプリケーションなどに開放することが可能になった。つまり、メモリのミラーリングを効率よく使用するための機能といえる。

 これ以外にも、メモリの冗長性を高める機能として、メモリにトラブルが起こった場合、同じメモリコントローラに接続されている別のメモリに自動フェールオーバーする機能が追加されている。また複数のランク・スペアリングが可能になった。

 またDDR4メモリがサポートされたことで、プロセッサにメモリのパリティエラーが通知されても、DDR4メモリを使用している場合は、再度処理を行い(トランザクショナル処理)、パリティエラーのリカバリを行うDDR4コマンド/アドレス・パリティ・エラー・リカバリ機能が追加された。

 この機能はプロセッサが自動的に行うため、OSなどが関与しない。DDR4メモリで構成されたシステムなら、すぐにでもメリットを享受することができる。

Xeon E7 v3のRun Sureテクノロジーは、Xeon E7 v2の機能を強化したモノだ
エンハンスドMCA Gen2では、リカバリ可能なエラーはファームウェアで処理して、エラーログに書き込む。これによりOSに頻繁にエラーが届くことがなくなる
アドレス・レンジ・メモリ・ミラーリングは、DIMMの特定アドレスだけをミラーリングする。ほかの部分は、リニアなメモリ空間として提供する
メモリにトラブルが起きたときに、別のメモリにフェイルオーバーするランクスペアリング機能も追加された
DDR4メモリを使えば、パリティエラーをプロセッサがリカバリすることができる。OSにエラーを出さずにハードウェアで処理するため、信頼性が向上する

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 Xeon E7 v3を採用したサーバーは、それほど多くリリースはされないだろう。

 まず考えられるのは、HPのSuperdome Xだ。現在はXeon E7 v2を採用しているため、早急にXeon E7 v3にアップデートされるだろう。このほか、Dell、Oracle、Lenovo(旧IBM)、日立、富士通などは、Xeon E7 v2を採用したサーバーを提供しているため、Xeon E7 v3対応のサーバーがリリースされるだろうと思われる。これら以外にも、Xeon E7 v2をすでに採用しているサーバーは、Xeon E7 v3へのアップデートが行われるだろう。

 しかし、現状でXeon E7系のサーバーをリリースしていないサーバーベンダーからは現状、リリースされないのではないか。ホワイトボックスサーバーなど開発しているODMの一部からリリースされる可能性もあるが、高コストなサーバーとなるため、ユーザーからのリクエストに応じた、受注生産のような形になるかもしれない。

 エンドユーザーから見れば、Xeon E7 v3は、ミッションクリティカル分野で使われるサーバーとなる。つまり、今までメインフレームやUNIXサーバーがカバーしていた領域をx86サーバーに切り替えることになる。リリースされたとしても、すぐにサーバーが導入されるわけでもない。Xeon E5などを使った2ソケットサーバーよりも、長期間の導入スケジュールやシステム開発に時間がかかる。

 このように考えれば、Xeon E7においては、1年ごとのプロセッサのリリースは速すぎるのかもしれない。将来的には、Xeon E7は、2年おきぐらいのアップデートスケジュールに変わっていくかもしれない。

【お詫びと訂正】
初出時、Xeon E7系サーバーをリリース済みのメーカーについて、記述内容が適切でなかった部分があったため、修正いたしました。お詫びして訂正いたします。

山本 雅史