4ソケット向けや低価格版などバリエーションが増えたXeon E5シリーズ


 3月7日に発表されたXeon E5-2600(以下、E5-2600)シリーズに追加して、5月15日には、4ソケットサーバー向けのXeon E5-4600(以下、E5-4600)シリーズ、低価格の2ソケットサーバーに向けたXeon E5-2400(以下、E5-2600)シリーズ、先日デスクトップ/ノート向けのプロセッサとして発表されたIvyBridgeコアを使用したXeon E3-1200 v2(以下E3-1200 v2)シリーズの3種類が発表された。

 今回は、それぞれのCPUに関して解説していく。


今回発表されたXeonシリーズは、4ソケット向けのE5-4600、ローコストの2ソケット向きのE5-2400、シングルソケットのE3-1200 v2の3種類だインテルでは、今回の製品をこのようなカテゴリで分類している

 

4ソケットをサポートしたXeon E5-4600シリーズ

 従来、4ソケットサーバー向けには、Xeon E7シリーズのCPUのみが提供されていた。E7シリーズは、高いパフォーマンスや高い信頼性を持っているため、ミッションクリティカルな基幹業務に適している。しかし、CPU単体のコストはその分高価になっていた。

 例えば発表当初の価格を比べると、E7-8870(2.4GHz/10コア/20スレッド)が約38万円、E5-4640(2.4GHz/8コア/16スレッド)は約22万円だ(いずれも1000個受注時)。このように、E7シリーズのサーバーは高額になる。コストを重視する用途にはE7シリーズほどのRAS(信頼性・可用性・保守性)機能は必要ない。そこで、Xeon E5シリーズの中で4ソケット向けのCPUがリリースされることになった。E5-4600シリーズでは、2.7GHz動作のE5-4650が約30万円と、E7シリーズよりは安価に設定されている

 ただ、もともと2ソケット向けのE5-2600シリーズをベースにしているため、システムの構造上でも違いがある。CPU間を接続するQPI(8GT/s)は、CPUあたり2本が出力されているだけで、E7シリーズのように4つのCPUが直接接続されているわけではない。E5-4600シリーズでは、サーバー内部で1ホップでアクセスできるCPUと2ホップでアクセスするCPUが混在することになり、2ホップの遠いCPUに対しては、レイテンシが大きくなる。

 一方、E7シリーズを4ソケットサーバーで利用する場合は、必ず1ホップで接続できる(8ソケットになると1ホップと2ホップが混在する)。

 もちろん、最も遠いCPUに接続されているメモリを使用する場合にもレイテンシが大きくなる(I/Oに関してもレイテンシーは存在するが、IOの方がQPIよりも遅いため、それほどレイテンシは目立たないだろう)。


E5-4600シリーズは4ソケットをサポート。ただしCPU間を接続するQPIが2本しかないため、すべてのCPUを1ホップで接続はできないXeon 7500番台の構成図だが、E7シリーズとは同じ構成になるので、参考までに掲載した。CPUあたり4本のQPIをサポート。これにより、4ソケットではすべてのCPUが1ホップでつながっている

 メモリに関しては、E5-2600シリーズと同じく、1CPUから4本のメモリチャンネルが出ている。メモリとしてはDDR3 1600MHzに対応している。

 なおE7シリーズでは、IMC(Integrated Memory Controller)に接続されたシリアルのメモリインターフェイスSMI(Scalable Memory Interface)を利用し、このSMIからSMB(Scalable Memory Buffer)を経由してメモリモジュールが接続されている。

 このようなアーキテクチャで1CPUあたり4チャンネルのメモリをサポートしているが、メモリアクセスにバッファやシリアル/パラレル変換などが関係するため、大きなレイテンシが存在する。


こちらもXeon 7500番台のメモリアーキテクチャだが、メモリが接続されるアーキテクチャは同じ(ピークバンド幅や最大メモリ容量などの数字はE7シリーズとは異なる)。IMCからシリアルのSMIが出て、SMIにSMBを接続し、さらにメモリモジュールを接続する

 

E5-4600シリーズとE7シリーズはどう棲み分けるか

 Intelでは、E7シリーズはRAS機能のサポートにより、企業におけるミッション・クリティカル用途のサーバーを対象にし、E5-4600シリーズはHPCや高密度サーバー(ブレード)などの用途に使われるだろうと説明している。

 確かに、E7シリーズの持つRAS機能はミッションクリティカル用途には必須の機能だろう。E5シリーズにも一部RAS機能が搭載されているが、E7シリーズほど機能が充実している訳ではない。

 ただ、プライベートクラウドやパブリッククラウド、VDIなど仮想化を前提としたサーバーは、E7シリーズほどのRAS機能は必要ないだろう。それよりも、低コストで多数のサーバーを調達して、トラブルがあれば、ライブマイグレーションで別のサーバーに移行することで、クラウドとしてのダウンタイムを小さくしていくことが重要だ。

 E7シリーズでも、4/8ソケットやそれ以上のサーバーに向けたE7-8800シリーズ(8ソケットを超える場合は独自チップを利用)、4ソケットに向けたE7-4800シリーズ、2ソケットに向けたE7-2800シリーズが存在する。コア/スレッド数や3次キャッシュメモリの容量などが異なるため、E5シリーズと単純には比較できないが、このようなことを考えれば、E7シリーズはハイエンドのE7-8800シリーズだけが残り、4ソケットや2ソケットのE7シリーズは、E5-4600シリーズに置き換えられていくかもしれない。

 なお現在リリースされているE7シリーズは、E5シリーズの前世代であるWestmere(開発コード名)世代のため、AVX命令のサポートなどが行われていない。このため、新しい世代のE7シリーズのリリースが期待されている。

 いくつかの情報を合わせてみると、新しいE7シリーズは、E5シリーズと同じSandyBridge(開発コード名)世代をスキップして、その次のIvyBridge(開発コード名)世代のCPUをベースとしてリリースされるようだ。コア/スレッド数に関しては、14コア/28スレッドもしくは16コア/32スレッドになると見られている。リリースに関しては、IvyBridge世代のE5シリーズ(IvyBridge-EP)がリリースされた後になるため、2012年末もしくは2013年になるだろう。


同じ4ソケットをサポートするE7シリーズとE5-4600シリーズだが、用途として異なる。E7は高い信頼性を必要とするミッションクリティカル向け、E5-4600シリーズはHPCなどの高密度、高パフォーマンスのサーバー向けE5-4200の高い性能により、仮想化することで、OSやアプリケーションのライセンスコストを最小化し、データセンターの管理にかかるコストも軽減できる
E5-4600シリーズは4ソケットをサポートすることで、E5-2600シリーズに比べてより高い性能を得ることができるE5-4200はE5-2600に比べて4ソケットで、最大2倍の性能向上が見込める

 

ローコスト版2ソケットサーバー向けCPU Xeon E5-2400

 E5-2400シリーズは、E5-2600シリーズをローコスト化したCPUだ。例えば発表当初の価格では、E5-2690(2.9GHz/8コア/16スレッド)が約16万円、E5-2470(2.3GHz/8コア/16スレッド)が約12万円となっている(いずれも1000個受注時)。CPU価格が劇的に安くなっている訳ではないが、サーバーシステムとして見れば、必要とするコンポーネントの数が少なくなるため、サーバー全体としてコストが抑えられる。

 ただしCPU間を接続するQPIが、E5-2600シリーズの2本から、E5-2400シリーズでは1本になり、メモリチャンネルもE5-2600シリーズの4チャンネルから、E5-2400シリーズでは3チャンネルとなっている。このため、全体性能としては、E5-2600よりも低くなる。

 また、E5-2600シリーズではCPUが直接サポートするPCI Express 3.0が40レーンだったが、E5-2400シリーズでは24レーンに縮小されている。対応ソケットに関しても、E5-2600シリーズがLGA2011だったが、E5-2400シリーズではLGA1356という新しいソケットになっている。

 ハードウェア仕様ではE5-2600シリーズとE5-2400シリーズは異なるが、サポートされている機能としてはAVX命令やターボブースト 2.0をサポートするなど、まったく同じものだ。


E5-2400シリーズは、E5-2600に比べるとCPU間接続のQPIが1本になり、メモリチャンネルが3本、PCI Express3.0が24レーンになっているE5-2600シリーズは、QPIが2本、メモリチャンネルが4本、PCI Express 3.0が40レーンになっており、E5-2400から比べると高い性能を示している

 Intelでは、E5-2400シリーズは中小規模のサーバー向けとしている。サーバーベンダーの価格を見てみると、IBMのサーバーSystem x3650 M4が約87万円(E5-2680)、x3530 M4が約57万円(E5-2450)となっている。システム構成によって価格は変動するため一概にはいえないが、E5-2450を搭載したx3530 M4は、E5-2680を搭載したx3650 M4に比べて、2/3ほどの価格で購入できるようだ。

 ユーザーにとっては2/3の価格差は気になるが、どのくらい長期間にわたって利用するかということが大きな問題になってくる。CPUは年々進化するため、頻繁に新しいサーバーを導入する場合は、コストは大きなメリットになる。

 しかし、一度導入すれば10年間ほどリプレイスをしない場合は、相当の性能に対する余裕を見ておく必要があるだろう。導入後、業務が増えて、すぐにサーバーの性能がいっぱいになるようでは、新たにサーバーを導入する必要がでてくる。長期にわたるITコストを下がることにはならない。

 こういったことから考えれば、サーバー導入時にある程度の性能を持つサーバーを購入する方がいいのかもしれない。そうでなければ、コストに優れたサーバーを導入し、業務が増えた場合はパブリッククラウドを従量制で利用するといった、ITシステムに関して根本的にコンセプトを変える必要があるのかもしれない。


E5-2400シリーズは、中小規模の企業が利用するサーバーに採用される。コストパフォーマンスに優れたCPUだ

 

小規模ビジネスに対応するXeon E3-1200 v2シリーズ

 E3-1200 v2シリーズは、コンシューマ向けに先日発表されたIvyBridge世代のシングルソケットCPU(第3世代Core iシリーズ)をサーバー/ワークステーション向けにしたものだ。最大コア/スレッド数としては、E3-1290 v2の3.7GHz/4コア/8スレッドとなる。

 E3-1200 v2シリーズが属するIvyBridge世代のCPUコア部分は、SandyBridge世代をチューニングしているが、大幅にCPU性能がアップしている訳ではない。それより、GPUコアに関しての機能アップに主眼が置かれている。

 ハードウェアとしては前述のように、E3-1200 v2シリーズと第3世代Core iシリーズとはまったく変わらない。

 グラフィック部分に関しては、E3-1200 v2シリーズがIntel HDグラフィック P4000、第3世代Core iシリーズではIntel HDグラフィック 4000となっている。ただしこれは、ハードウェア的に違いがあるのではなく、グラフィックドライバの差だとIntelでは説明している。Intel HDグラフィック P4000は、ワークステーションでの動作を考えて、各種CADソフトの認証を取得しているが、GPUコアが同じため、性能的にはコンシューマのIntel HDグラフィック 4000とは違いはないだろう。

 第3世代Core iシリーズでは、すべてのCPUでGPUが搭載されているが、E3-1200 v2シリーズではGPUが利用できない製品が多い。これは、サーバーでは高機能なGPUコアよりも、省電力化を選択したため。コア自体は、第3世代Core iシリーズと同じため、製造後に、GPUコアをオフにしている。

 製造プロセスは22nmになっているため、32nmプロセスで製造されていた前世代よりも、省電力化されている。この部分では、E3-1200 v2シリーズは大きなメリットがあるだろう。

 CPUが発表されたばかりのため、いくつかのサーバーベンダーから標準的なサーバーしか発売されていないが、省電力化されたE3-1200 v2シリーズは、Webサーバーなどで利用する高密度のMicroServerなどの用途にぴったりだろう。もう少し時間がたてば、各サーバーベンダーから、より特徴のあるサーバーがリリースされることになるだろう。


E3-1200 v2シリーズは、IvyBridge世代のCPUだ。コンシューマ向けの第3世代Core iシリーズと同じハードウェアが使われている

 今回は、E5-4600シリーズ、E5-2400シリーズ、E3-1200 v2シリーズの概要に関して解説したが、各社からサーバーがリリースされたら、実際にベンチマークを行って、性能を明らかにしていきたいと思う。

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