“クラウドのためのサーバー”Dell PowerEdge C6100を試す


 4月にデルが発表したPowerEdge C6100(以下C6100)は、北米などで、大手クラウド事業者やデータセンター事業者向けにビジネスを行っている米Dell DCS(Data Center Solutions)事業部のノウハウが詰まっている製品だ。

 今回は、このサーバーをお借りすることができたので、詳細をレポートする。

クラウド事業者でのノウハウを生かして標準製品化したサーバー

 Dell DCSは、データセンター/クラウド事業者に向けてカスタムメードのサーバーやサービスを提供している。これは、多くのデータセンターやクラウドでは、通常のサーバーとは違ったニーズがあるためだ。

 データセンター/クラウド事業者は、サーバー自体のパフォーマンスをアップさせるよりも、台数をそろえて、システム全体でパフォーマンスをアップしている。このため、データセンターやクラウドで必要とするサーバーは、通常の企業向けのサーバーと仕様が異なる。

 例えばデータセンターでは、サーバーを高密度なブレードにして、1台のラックに入るサーバーの数を増やしたい、といったニーズもあるし、また、1台のラックに多数のサーバーを収容することになるため、省電力化ということも大きなテーマになる。

 逆に、クラウドなどでは、仮想化が前提となるため、サーバー自体に多数の拡張カードを使用する必要はない。それよりも、大容量のメモリが搭載されている方が使い勝手がいい。

多くの検索エンジン事業者、データセンター事業者が、デルのDCS事業部のフルカスタマイズしたサーバーを採用している

 Dell DCSは、こういったニーズを満たすため、それぞれのデータセンター/クラウド事業者にむけて、フルカスタムメードのサーバーを提供している。こういった取り組みを評価されたため、Dell DCSベースのシステムを導入する企業は増えている。

 例えば、Dell DCSのシステムは、Facebook、Windows Azure、中国の検索エンジン百度(Baidu)などで採用されている。これ以外にも、米国の検索エンジンのトップ5のうち3社がDell DCSを採用している。これらの企業では、数千~数万台のDell DCSサーバーが運用されている。

 Dell DCSは、導入企業にあわせて、フルカスタマイズでサーバーが構築されている。これは、数千、数万台という数を導入する企業だからことできることだ。そこで、企画されたのが、Dell DCSでもっともニーズに高いサーバーを標準品として用意した「PowerEdge Cシリーズ」だ。

C6100を初めとするPowerEdge Cシリーズは、DCS事業で培ってきたノウハウを導入した製品で、データセンター/クラウド事業者のニーズを満たすサーバーを、標準製品として発売したデルは、プライベートクラウドやパブリッククラウドなどの構築のために、ハードウェアだけでなく、さまざまなサービスを展開している
Dell DCSでは、通常の企業が必要とするサーバーではなく、クラウド事業者などのニーズにマッチさせているため、製品としてはシンプルCシリーズのポジショニング。DCSのようなフルカスタマイズではなく、ユーザーのニーズにマッチした製品をラインアップに追加。標準化されることで、製品のコストも下がる

シンプルかつ、高密度なサーバー「C6100」

 C6100の最大の特徴は、2Uのサイズに4つのサーバーユニットを収納できることだ。サーバーユニットは、ブレードのような形状になっていて、2Uサーバーの上下に4台収納できる。

 また、サーバーユニットのCPUとしては、インテルのXeonを2個(2ソケット)採用。さらに、メモリスロットはDDR3対応のものを12スロット(6枚×2ソケット)用意している。これにより、1つのサーバーユニットで最大96GBまでのメモリ容量をサポートしている(C6100全体で、最大384GBもの大容量メモリをサポート)。

C6100は、2Uのシャーシに、4つのサーバーユニットを搭載したクラスタサーバーだ

 C6100では、Xeon 5500もしくは、Xeon 5600シリーズ(開発コード名:Westmere-EP)が採用されている。2010年の春に発表されたXeon 5600を使用すれば、最大6コア/12スレッドをサポートしているため、2ソケットで12コア/24スレッドを、1つのサーバーユニットで実現する。これが、4ユニットあるということは、C6100 1台で48コア/96スレッドをサポートするサーバー群が実現する。

 これだけの性能を持つサーバーが、2Uのシャーシに入ってしまうのも驚きだ。今までの企業向けのサーバーだと、C6100のサーバーユニット1つが2Uのサーバーにあたる。このため、面積的にも1/4で同じパフォーマンスのサーバーが構築できる。

これが、1つのサーバーユニット。2ソケットのXeon 5500/5600、メモリは各CPUに6スロット(全体で12ソケット)。通常の2ソケットサーバーから考えれば、非常にコンパクトサーバーユニットが2Uのシャーシに上下2段に合計4つ搭載されている
サーバーユニットは、簡単に抜き差しできるようになっている。もちろん、ホットプラグ&ホットスワップもサポートされているから、メンテナンスも簡単に行える

 C6100は、単に高密度のサーバーユニットを採用しているだけではない。メンテナンス性を高めるため、サーバーユニットは、ホットプラグ&ホットスワップを実現している。このため、トラブルがあれば、サーバーユニットを引き抜き、新しいサーバーユニットを差し込むだけで、メンテナンスが行える。HDDなどの接続に関しても、バックプレーン経由で接続されるため、サーバーの内部を開けなくても、サーバーユニットを差し込むだけでOKだ。

 C6100のフロントには、HDDのドライブベイが用意され(2.5型24台、もしくは3.5型12台)、HDDは、SASやローコストなSATAも使用できる。1サーバーユニットには、2.5型HDDが6台、もしくは3.5型3台が接続される。もちろん、オプションでRAIDカードも用意されている。

 拡張カードとしては、PCI Expressスロットが2つ(×8、×16)しか使用できない。また、挿せる拡張カードの大きさにも制限がある。

 ネットワークとしては、標準でGigabit Ethernetが2ポート用意されている。オプションで拡張カードを挿せば、さらに2ポートを拡張することが可能だ。

 ハードウェアとしては、C6100は非常にシンプルだ。ある意味余計なモノはなく、シンプルな構成になっている。その分、コンパクト化されていて、同じ面積4倍のサーバーシステムが構築できる。

 気になるのは、消費電力と発熱だが、2Uのシャーシに強力なファンを4つ採用しているため、HDDからサーバーユニットまでをきちんとクーリングすることができる。ただ、CPUなどには、Xeonの低消費電力版のEシリーズなどを使用した方がいいかもしれない。

C6100を試してみる

 今回、デルからC6100をお借りして実際に試してみた。CPUはXeon E5540(4コア/8スレッド)を使用している。

 C6100は、フロントベイのHDDからブートすることになる。ほかのサーバーのように、内部にSDカードやUSBポートは用意されていない。さらに、フロントベイに各サーバーユニットに接続するUSBポートなどもない。このため、プライベートクラウドなどで使用する場合も、ハイパーバイザーをHDDなどにインストールしておく必要がある。

 工場出荷時に、ユーザー独自のOSやハイパーバイザーのイメージをHDDにインストールしてくれるサービスなどもオプションで用意されている。これなら、クラウドやHPCなどを構築する場合でも、独自のイメージをデルにわたしておけば、インストレーションなどを行ってくれる。このため、ユーザー側では、ラックにセットして、すぐに運用を開始することができる。

 プライベートクラウドなどは、ストレージネットワークを利用することが必須になっている。標準では、インテルのGigabit NICが2ポート入っている。オプションでNICを増設することもできるが、現状ではGigabitのデュアルポートのNICしか選択できない。できれば、10GbEのNIC、もしくはクアッドポートのGigabit NICなどが利用できるようになると、ストレージネットワークを利用する上では便利になる。

 ネットワーク関連で気になったのは、サーバーユニットにNICのポートがある。このため、ネットワークケーブルを個々のサーバーユニットに接続する必要がある。

 ある程度の台数を接続するクラウド環境を考えれば、サーバーユニットにトラブルが起こった場合のメンテナンス性は、若干面倒そうだ。LANやネットワークスイッチを含めて、モジュール式で簡単にメンテナンスできるようになれば非常に便利になるだろう。

 また、それぞれのサーバーユニットにモニター出力が用意されている。しかし、実際の運用を考えれば、4台のサーバーユニットにそれぞれモニターを接続するというのは考えにくい。こういった部分でも標準でKVMが用意されていれば、便利かもしれない。実際にはIPMIを使用することになるのかもしれないが。

デルでは、パブリッククラウド、プライベートクラウドに向けた各種コンサルティングサービスを強化している

 パフォーマンスに関しては、不満となる部分はほとんどない。今回は、4コアのXeon E5540モデルをお借りしたが、今後の導入を考えるなら、少しコストがかかってもXeon 5600シリーズの6コアCPUを使う方がいいだろう。また、消費電力の面からも32nmプロセスを採用したXeon 5600シリーズの方が低消費電力化されているため、高密度のC6100にぴったりだ。

 実際に使ってみると、ハードウェアではなく、OSやソフトウェアのデプロイメントが重要になってくることがよくわかった。デル側で工場出荷時に、OSやソフトウェアをインストレーションしてくれるため、初期導入時には問題はないだろう。

 しかし、運用していく中で、OSやソフトウェアのコンフィグレーションを変更していくことを考えれば、きちんとした管理システムが必要になる。このあたりは、データセンターやクラウド事業者が、日々の運用を考えて管理ソフトウェアを導入しておく必要がある。

 デルでは、C6100のターゲット層をクラウド・プロバイダー、HPCクラスタ、オンライン・ゲーム、大規模Webファームなどに向いているとしている。

 ただ、企業のデータセンターがプライベート・クラウド化していくことを考えれば、C6100はある程度の規模の企業においてもメリットがあるサーバーとなるだろう。同じ1ラックに、今までの4倍のパフォーマンスのサーバーシステムが構築できるのは、データセンターのスペースや消費電力などを考えても大きなメリットがあるだろう。

R610を84台使ったクラスタサーバー(2ラック)が、C6100を使えば1ラックですむ。スペース効率はもちろん、重量自体も1/2になる。もちろん、省電力性にも優れているCシリーズは、オプションのCFI(カスタム ファクトリ インテグレーション)サービスを利用することで、工場出荷時にサーバーのOSイメージをインテグレーションすることができる。さらに、ラックへの搭載やケーブル接続サービスを使えば、ラックを搬入して、電源を入れればすぐにサーバーを運用することもできる
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