仮想マシンのアプリをウィンドウで表示-VMware Workstation 7のユニティモードを試す


 前回、VMware Workstation 7(以下、WS 7)ではアプリケーションをウィンドウ状態にできないと書いたが、読者の方からの指摘により、ユニティモードを失念していたのに気づいた。大変失礼しました。そこで、今回はWS 7のユニティモードにあらためて注目してみる。


ユニティモードの使い方

 WS 7のユニティモードは、仮想マシンのアプリケーションをウィンドウとして表示する機能だ。ある意味、特殊な表示モードといえる。

 このユニティモードは、Windows 2000以降のWindows OSやLinux(試験サポート)などのゲストOSでサポートされている。ただし、ユニティモードを使用するには、各ゲストOSにVMware Toolsがインストールされている必要がある。

 ユニティモードを使うのはシンプルだ。WS 7の[表示]メニューの[ユニティ]を選択すればいい。アプリケーションが起動していれば、そのアプリケーションがウィンドウで表示される。複数のゲストOSをユニティモードで表示することもできる。このときは、左下にあるWindowsのスタートボタンの上に、仮想マシン名のボタンが複数表示される。

 ユニティモードで表示すると、アプリケーションのウィンドウの枠に色がついて表示される。枠線の色は自由に変更できるほか、表示しないようにもできる。これらの設定は仮想マシンの設定編集で行える。


ユニティモードは[表示]メニューから切り替えるユニティモードを使えば、バージョンの異なるIEをあたかもローカルアプリケーションのように利用できる枠線の色は自由に指定できる

 このユニティモードは、WS 7のVMware Toolsが持つ仮想ディスプレイを利用して、アプリケーションウィンドウだけをホストOSのデスクトップに表示するようだ。そのため、アプリケーションを起動していなくても、IMEツールバーだけホストOSのデスクトップに表示されたりする。また、ユニティモードで起動しているゲストOSのタスクバーに表示されるメッセージなども、そのままホストOSのデスクトップに表示される。

 つまり、ユニティモードはゲストOSのデスクトップに表示されたモノを、そのままホストOSにリダイレクトして表示しているようだ。これを表すように、いったんユニティモードにすると、WS 7上には、ユニティモードをオフにしない限り、ずっとゲストOSのデスクトップは表示されない。

 また、ユニティモードで表示したアプリケーションのウィンドウは、ゲストOSのディスプレイモードをそのまま反映する。つまり、Windows 7をAero UIで起動しているゲストOSの場合、ユニティモードで表示されるアプリケーションのウィンドウも、Aeroを使って、ウィンドウの枠が半透明になる。ホストOSでWindows 7をAero UIで使っていれば、ユニティモードで表示されるアプリケーションはほとんど違和感なく使えるだろう。

Windows 7をホストOSとして利用した場合、同じアプリケーションを複数起動するとサムネイルにも複数ウィンドウが表示される

 ユニークなのは、ホストOSでWindows 7を使っていると、ユニティモードで動作しているアプリケーションを最小化した際、Windows 7のAero Peekを使ってウィンドウのサムネイル表示ができる点だ。もちろん、ユニティモードで同じアプリケーションを複数起動した場合には、サムネイルとして複数のウィンドウが表示された。ただし、IE 8のタブ機能は表示されているWebページしかサムネイルに表示されなかった。

 ではデスクトップが表示されない(タスクバーが表示されない)ユニティモードで、ゲストOSのアプリケーションはどうやって表示するのか。その操作はいたってシンプルだ。ホストOSのスタートボタンあたりにマウスポイントをあわせると、ユニティモードで起動しているゲストOSの名前が表示されるので、それをクリックするだけだ。すると、スタートボタンをクリックしたのと同様に、スタートメニューが表示されるので、利用したいアプリケーションをクリックすればOKだ。ゲストOSのスタートメニューがそのまま表示されるので、ユーザーとしては、それほど違和感なく利用できるだろう。なお、複数のゲストOSを起動している場合、ゲストOSの名前ごとにボタンが表示される。

 ユニティモードを終了するには、WS 7を表示し、ユニティモードで起動しているゲストOSに切り替えて、[ユニティを終了する]をクリックすればいい。すると、元のデスクトップ画面がWS 7内で表示される。


スタートメニューにマウスポインタをあわせると、ゲストOSの名前が表示される。これをクリックするとゲストOSのスタートメニューが表示されるユニティモードで動かしていると、WS 7ではこのように表示される。[ユニティを終了する]をクリックすることで通常のモードに切り替わる

Windows XP Modeと比べてみる

 Windows XP Modeでもアプリケーションをウィンドウ状態で表示できる。では、ユニティモードと比べると、どのような違いがあるのだろうか。

 まず、どちらも、ホストOSとゲストOS間でテキストやグラフィックのコピー&ペーストは自由に行える。例えば、Windows XP ModeでWebブラウザを起動して、Webブラウザの画像をコピーして、ホストOSのペイントソフトに貼り付けるといった使い方が可能だ。もちろん、逆にホストOS側でコピーして、ゲストOS側に貼り付けることも可能だ。

 では、ドラッグ&ドロップはどうだろうか、結論からいうとWindows XP Modeはドラッグ&ドロップはサポートしていないので、利用できない。一方のユニティモードは、ドラッグ&ドロップに対応している。利用方法にもよるだろうが、ドラッグ&ドロップを多用する人はユニティモードのほうが便利だろう。

 USBデバイスはどちらもサポートを表明している。ただし、内容は異なっている。

Windows XP Modeでは、USBメモリやUSB HDDは、ネットワークドライブとしてアクセスできる。これなら、ホストOSからもWindows XP Modeからもアクセスできる

 Windows XP Modeは、デジタルカメラ、USB接続のCD/DVDドライブ、MP3プレーヤー、携帯電話/PDA/モバイルデバイス、Webカメラ/ビデオカメラ、無線LANデバイスなどをサポートしている。が、すべてのUSBデバイスの動作が100%保証されているわけではない。また、USBメモリやUSB HDDなどのデバイスがホストOS側で認識されている場合、ネットワークドライブとしてアクセスすることができる。

 ただし、Windows XP ModeでUSBデバイスを認識させるには、Windows XP Modeのデスクトップを表示して、[USB]メニューからUSBデバイスを選択する必要がある。つまり、Windows XP Modeをアプリケーションウィンドウの状態で利用しているだけではUSBデバイスは利用できないということだ。いったん認識した上で、アプリケーションウィンドウで開くことで、USBデバイスにアクセスできる。

 一方のWS 7は、ホストOSに接続されるすべてのUSBデバイスをリダイレクトして接続できるため、すべてのUSBデバイスがゲストOSで認識できる。ただし、USBデバイスは、ホストOSまたはゲストOSのどちらか1つでしか利用できない排他アクセスとなる。そのため、ユニティモードで起動しているゲストOSがUSBデバイスにアクセスできる状態になっていないと、ユニティモードのアプリケーションからは利用できなくなる。


初心者はWindows XP Mode、パワーユーザーはユニティモード

 ユーザーにとってWindows XP Modeは、Windows 7 Professional以上のエディションを利用していれば、無償で利用できるのが最大のメリットだ。一方、WS 7は有償で提供されているので、コストの面では大きな違いがある。

 また、Windows XP Modeは、Windows 7のスタートメニューにWindows XP Modeのアプリケーションが登録されており、シームレスに利用できるようになっている点も大きなメリットだ。ユーザーは、仮想マシンが起動していなくても、メニューに登録されているアプリケーションを起動すれば、仮想マシンはバックグラウンドで自動的に起動して、アプリケーションだけがデスクトップに表示される。

 一方、WS 7は有償製品であるだけに、仮想化ソフトとして充実した機能が用意されている。今回取り上げたユニティモードもそのひとつだ。また、仮想CPUを複数割り当てるなど、パワフルに使うこともできる。

 こういった使い勝手をみれば、Windows XP Modeの方が初心者や単にWindows XPのアプリケーションを利用したいと考えているユーザーにはいいだろう。今回紹介したユニティモードは、仮想化ソフトをある程度使いこなしているパワーユーザー向けといえるかもしれない。



関連情報
(山本 雅史)
2009/11/9 00:00