Aero UIをサポートした「VMware Workstation 7」を試す
Windows 7のパッケージ発売に合わせるように正式発売されたVMware Workstation 7(以下、WS 7)。今回は、このWS 7を実際に使ってみて、どのような機能を持っているか紹介する。
■Windows 7をAero UIで動かしてみる
WS 7のテスト用に用意したのは、AMDのPhenom IIとNVIDIAのグラフィックカードを使ったPC。この環境に、WS 7をインストールしてみた。ホストOSとしては、Windows 7 64ビット版を使った。
WS 7のインストール自体は、非常に簡単だ。VMwareのWebサイトで30日間使用できる試用版が提供されている。これをダウンロードして、インストールすればOKだ。ちなみに、WS 7のプログラムは、32ビット/64ビットのWindows版、32ビットLinux、64ビットLinuxの3つが用意されているので、ホストOSの種類に合わせたモノをインストールすればいい。
WS 7では、アクティベーションコードが必要になる。アクティベーションコードは、メールで届くようになっている。テストした時点では、アクティベーションコードのリクエストが多いためか、メールが送られるまで丸一日かかっていた。WS 7をインストールする時点で、アクティベーションコードを入力する項目はあるが、スキップしてもインストールは行える。ただし、インストール後、仮想マシンを動かすときにアクティベーションコードが必要になる。
WS 7のホーム画面で「新規仮想マシン」を選択して、新しい仮想環境を構築する。便利なのは、簡易インストールを利用すると、DVD/CDメディアやISOイメージを指定するだけで自動的にOSを認識してくれるところだ。OSに最適な仮想マシンの設定(HDDやメモリ容量など)をするほか、OSのインストール時に求められるプロダクトキー、ユーザーアカウント、パスワードなどをあらかじめ入力することができる。これにより、インストールを一気に行えるので、終了するのを待つだけでOKだ。
ちなみに、仮想マシンで利用できるプロセッサは最大4つ、メモリは32GBとなっている。
WS 7のホーム。新しい仮想マシンを作成するには、「新規仮想マシン」をクリックすればOK | インストーラディスクを指定すると、OSの種類をWS 7が自動的に判断してくれる。DVD/CDメディアを直接使うのではなく、ISOイメージを使うと便利だ | 仮想マシンの設定画面。仮想マシンで使用するメモリやCPU数などが設定できる |
Aero UIを試そうと、Windows 7をインストールしてみたが、起動直後はベーシック表示になっていた。Aero UIを使うには、デスクトップの個人設定でAeroテーマに変更する必要がある。なお、Aero UIを仮想環境で利用するには、ホスト側にNVIDIA GeForce 8800GT以降、ATI Radeon HD 2600以降のグラフィックカードが必要だ(最新のドライバも)。
WS 7に、Windows 7をインストールした。しかし、デフォルトではAero UIでは動作していなかった。デスクトップの個人設定がWindows 7ベーシックになっていた | デスクトップの個人設定をAeroにすると、半透明なウィンドウが表示された。仮想環境でAero UIがサポートされるのを見るのは感動的だ | 仮想環境でも、Aeroのサムネイル表示が行われている |
VMwareは、Aero UIを実現するグラフィックドライバ「VMware SVGA 3D(WDDM対応)」は、Direct3Dなどの3Dグラフィックはサポートしていないと説明している。しかし、実際にテストしてみると、DirectX9ベースのベンチマークソフトなどが動作した。VMwareが正式にサポートを表明していないことから見れば、パフォーマンスや安定度に難があるのかもしれない。また、DirectX10対応のベンチマークソフト3DMark Vantageは、動作しなかった。もし、WS 7の仮想環境上で3Dゲームを楽しむなら、「VMware SVGA II」グラフィクドライバに変更するといいだろう。
【訂正】初出時、3Dグラフィックをサポートしていないと記載しましたが、テストした結果、動作することが確認できましたので、記載内容を一部修正しました。
ある意味、仮想環境でのGPUサポートは、最初の一歩を踏み出したところだろう。最新のGPU環境を仮想環境がサポートするには、まだ数年かかるだろう。それにしても、今まで動かないと思っていたAero UIが仮想環境で動いたのを見ると感動モノだ。
■Windows XP ModeをWS 7で動かしてみる
WS 7のもう一つの特徴が、Windows 7でサポートした「Windows XP Mode」の仮想イメージをインポートできるという機能だ。
Windows XP Modeは、Virtual PC上でWindows XPを動作させることで、Windows 7では動作しないアプリケーションをサポートするもの。このWindows XP Modeで使われているWindows XPの仮想イメージをWS 7で使えるようにするのが、このインポート機能だ。
WS 7にインポートするメリットとしては、Virtual PCでサポートされていない3Dグラフィックスを使ったり、ファイルのドラッグアンドドロップ機能を使ったりできる点にある。その代わり、Windows XP Modeで提供されているアプリケーションだけをウィンドウで表示する機能は使えなくなる。
WS 7にインポートするメリットとしては、Virtual PCでサポートされていない3Dグラフィックスを使ったり、ファイルのドラッグアンドドロップ機能を使ったりできる点にある。また、Windows XP Modeの特徴であるアプリケーションのウィンドウだけを表示する機能に相当する機能として、WS 7にはユニティモードも用意されている。ただし、Windows XP Modeがスタートメニューに登録されているアイコンをクリックするだけで、仮想マシンとアプリケーションを同時に起動するのに対して、ユニティモードは、スタートメニューにアイコンは登録できず、WS 7上でWindows XPをユニティモードで起動しなければならないという違いがある。
【お詫びと訂正】初出時、WS 7ではアプリケーションをウィンドウ状態で表示できない旨、記載しておりましたが、ユニティモードを使うことでウィンドウ状態で表示できました。お詫びして訂正します。
WS 7には、Windows 7のWindows XP Modeを変換して利用できる機能が用意されている。「Windows XPモード仮想マシンのインポート」を選択すれば、簡単にWindows XP Modeの仮想マシンをWS 7で利用できるように変換してくれる | Windows XP Modeの変換では、ユーザーは難しい設定を行う必要はない。自動で変換してくれる |
実際、WS 7のWindows XP Modeのインポート機能を試してみると、問題なくWindows XP Modeの仮想イメージが変換され、WS 7で利用できた。変換時にVMware Toolsのインストールも行われたため、Virtual PCでは利用できなかった3Dグラフィックが利用できた。なお、CPU数は、Windows XP Modeの制限により1つしか割り当てられない。
ただし、いくつか問題点もある。WS 7がインポートするWindows XP Modeの仮想イメージは、ダウンロードしたオリジナルの仮想イメージだ。ユーザーが実際に使っているWindows XP Modeの環境とは異なるのだ。このため、ユーザーがVirtual PCのWindows XP Modeにアプリケーションなどをインストールしていても、オリジナルの仮想イメージが使われているので、使用していたWindows XP環境は引き継がれない。
このため、ユーザーは、WS 7に移行したWindows XP環境にもう一度アプリケーションをインストールする必要がある。これが結構面倒だ。できれば、オリジナルのWindows XPを移行するのか、今まで使っていたWindows XP環境を移行するのかを選択できれば便利なのだが。
なお、IT管理者にとって気になるのは、Windows XP ModeのOSイメージをWS 7で動作できるように変換することは、マイクロソフトのライセンス条項として大丈夫なのかということだろう。
マイクロソフトに確認したところ、「Windows 7 Professional、Ultimateなどのライセンスを保有している場合、Windows XP ModeをライセンスされたPC上で実行させて利用する権利が与えられています。このため、Windows XP Modeを動かす仮想化ソフトに関しては、マイクロソフトのVirtual PC以外でも、ライセンス上問題はありません。また、Windows 7 Enterpriseに関しては、最大4つの仮想化インスタンスを許可しています」という回答を得た。
つまり、Windows XP Modeとして、配布されている仮想化イメージをWS 7で使用しても、ライセンス上は問題ないということだ。
■VMware ESXiをWS 7で動かしてみる
WS 7のユニークな新機能が、仮想環境上にvSphere 4やESXiを動作させられるものだ。つまり、WS 7にvSphere 4やESXiをインストールして、さらにそのvSphere 4やESXi上で複数のOSを動かせる。つまり、ネストした仮想環境を構築できるのだ。
WS 7上にESXiをインストールしてみた。きちんとインストールが進んでいる | WS 7のうたい文句のとおり、ハイパーバイザーのESXiが動いている |
WS 7でESXiなどを動作させられれば、プライベートクラウドのテストやアプリケーションの開発時に、作成した仮想イメージをそのまま実運用環境に持っていくといった使い方が可能だろう。逆に、運用環境でトラブルが起きれば、開発者のデスクトップでデバッグやトラブルのチェックが行える。ESXiを構築するために物理マシンを用意しなくて済むので、開発者にとっては便利になるのではと感じた。
調子に乗って、Hyper-Vをインストールしようと思ったが、エラーが出て断念。WS 7では、Hyper-Vはサポートしていない |
ただ、残念なのは、vSphere 4やESXiしかサポートしていない点だ。実際、Windows Server 2008 R2のHyper-Vをインストールしようとすると、エラーが出てインストールできなかった。できれば、Windows Server 2008 R2など、ほかのハイパーバイザーもサポートされると、開発環境としては便利に使えるのだが。