大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

日本IBMのクラウドビジネスの現状を追う (重点領域に位置づけるパブリッククラウドサービス)

SoftLayerの買収によってAWSへの対抗力を強化

重点領域に位置づけるパブリッククラウドサービス

SoftLayerの概要

 5つのクラウドサービスのなかでも、今後、日本IBMが力を注いでいくのが、パブリッククラウドサービスである。

 ここでは、2013年6月に買収を発表したSoftLayerが重要な鍵を握る。

 SoftLayerは、物理サーバーを含む多様な環境で構成された複雑なクラウド環境を、ひとつの管理ポータルから統合的に管理できるクラウドサービス。全世界140カ国で、2万1000社以上の企業が利用しており、オンラインサービスやモバイルアプリなど、クラウドの柔軟性とハイパフォーマンスの両立が要求される場面で利用されている。

 「Amazon Web Service(AWS)に負けない優れた機能を持っているのがSoftLayer。非常に早くサービスを利用でき、遠隔地のサーバーでも手元にあるような速さを感じる構造になっているのが特徴。ビジネスを迅速に、かつ容易に立ち上げたいというエマージング企業や、ビジネスの強化にあわせて柔軟にインフラを拡充したいという活用などで効果を発揮する」とする。

 そして、「インターネットで申し込んで、クレジットカードで決済する。これまでIBMが提供してきた製品やサービスとは違う仕組みもユニークだ」とする。

 SoftLayerは、全世界に13拠点のデータセンターを持ち、10万台のサーバーを活用。グローバルに19拠点のネットワーク接続ポイントがあるという。また、これらは、グローバルなプライベートネットワークで結ばれている。またIBMは、ビジネスプロセスを可視化するソフトウェアをSoftLayer上で稼働させる開発意向表明も発表しており、今後は、IBMが持つ技術との融合が推進されることになる。

 同社がSoftLayerを重点製品としているのは、同社のいくつかの取り組みからも明らかだ。

 東京・箱崎の日本IBM本社受付ロビーに設置されている大型ディスプレイでは、SoftLayerの説明を繰り返し行い、本社を訪れる人たちへの認知を高めていたのもそのひとつだ。

 また、全国4カ所で開催したIBMリーダーズ・フォーラム 2013では、来場したユーザーに対して、SoftLayerの無料トライアルサービスを用意するといった取り組みも開始している。

 データホテルが展開するDATAHOTEL for Appの、国内外におけるサービス拡張のためのIT基盤として、同社はIBMのSoftLayerサービスを2013年10月から採用。すでにサービスを開始している日本と韓国のほか、米国やシンガポールなど世界4カ国で、マネージドホスティングサービスを必要とする顧客の要求に対応しているという。

 「オンラインゲームは急激にトラフィックがあがり、また、それが急になくなるといったことが起こる。予想がつかないなかで、システムの拡張スピードが要求される。SoftLayerを使うことで、こうした課題にも柔軟に対応できるようになる」という。

(大河原 克行)