大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

日本マイクロソフト、教育・研究分野でのクラウド導入を加速 「ガバメントレディクラウド元年」を掲げる

注目を集める教育・研究クラウド支援プログラム

 日本における取り組みとして世界各国からも注目を集めているのが、日本独自の「教育・研究クラウド支援プログラム」である。

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)が提供する「学認クラウド」に加入している全国800以上の研究機関および大学を対象に、参考価格から16~20%割り引いた特別価格でMicrosoft Azureを提供。

 さらに2016年9月を目標に、Microsoft AzureとSINET 5を直接接続する予定で、SINET加入の大学などは、SINET 5経由の閉域網でMicrosoft Azureの利用が可能になる。

SINET-Azure 接続概要図

 そのほか、研究者を対象に研究クラウド見積もり支援を提供し、HPC on AzureやMachine Learningなどの簡易シミュケーション、Webを通じた個別見積もりにも対応。プリペイド方式での決済や大学生協店舗での購入方法など教育機関に配慮した仕組みを導入したり、研究者のためのクラウド・ハンズオントレーニングを実施したり、といった内容を用意している。

 またAzure for Researchとして、公衆衛生、気象変動、食糧問題など、研究テーマに沿ったクラウド無料利用の提供のほか、グローバルレベルで2カ月に1回にペースで、Azure for Research Awardsを実施し、研究者を支援しているという。

ガバメントレディクラウド元年を迎える2017年度

 このように、日本の教育・研究分野においては、Microsoft Azureを活用した事例が相次いできている。

 日本マイクロソフトの織田執行役員常務は、「日本の教育・研究分野においては、わずか2年前までは、クラウドに対して距離を置いていたが、いまでは重要な選択肢のひとつにクラウドをあげている。そして、教育・研究分野におけるMicrosoft Azureの活用という点では、世界的に見ても、日本の事例が進んでいるといえるだろう」とする。

 これまではクラウドといっても、Office 365などのSaaSでの活用が中心だったが、さらなるSaaSの活用拡大に加えて、Microsoft AzureによるIaaSやPaaSの活用にまで広がりをみせている。日本マイクロソフトにとっても、教育・研究分野向けの展開が新たなフェーズに入ったといえるだろう。

 そして、日本の教育・研究分野において、Microsoft Azureが採用されてきた背景には、機械学習や自動翻訳などの革新的技術の採用や、高い処理性能や高速ネットワーク、強固なセキュリティ環境の実現のほか、日本の法律に準拠した契約を結べるといった信頼性の高さがある。そして、ここ数年、マイクロソフトが積極的にオープンソースに取り組んできたことも見逃せない要素となっている。

 2016年7月から始まった同社2017年度は、「ガバメントレディクラウド元年」と位置づける。そのなかでも、教育・研究分野は最重点領域。教育・研究分野へのクラウド提案は、さらに加速することになりそうだ。