大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
IoT、人工知能を活用したソリューションで社会を変革 日立の最先端研究開発への取り組みを見る
2016年7月29日 06:00
日立製作所(以下、日立)が、東京・国分寺の日立 中央研究所国分寺サイトにおいて開催した、同社の研究開発の成果を発表する研究開発インフォメーションミーティング。基本的には写真撮影が禁止されたが、初公開の技術を含めて、20を超える技術や製品、サービスを公開する貴重な機会となった。
いち早く顧客起点体制へと再編した研究部門
研究開発インフォメーションミーティングの冒頭、日立 執行役常務 CTO兼研究開発グループ長の鈴木教洋氏は、日立グループの研究開発戦略について説明。2015年度を最終年度とする「2015中期経営計画」において、日立グループ全体として、事業収益の拡大に向けて、プロダクトアウトからマーケットインによるお客様起点への転換を図ったことを示しながら、「研究開発体制は、いち早く再編に取り組み、イノベーション力を強化。顧客の近くに研究者を配置することで、協創を拡大し、マーケットニーズに応える革新技術を創生させた」と、過去3カ年の取り組みを総括した。
日立では2016年4月から、フロント機能を強化したマーケット別体制を敷いているが、研究開発グループにおいてはそれに先行する形で、2015年4月から顧客協創型の組織に再編している。
具体的には、各地域の顧客とともに、ニーズにあわせたソリューションを開発する「社会イノベーション協創センタ」、プラットフォームやプロダクトにおけるグローバルナンバーワン技術を確立し、ソリューション開発に必要な技術基盤を開発する「テクノロジーイノベーションセンタ」、長期的視点に立って、社会課題を解決するなど、未来の社会イノベーション事業を創生する「基礎研究センタ」を設置。
さらに2015年10月には、顧客とともに事業機会を探索・発見して新たな事業コンセプトを創生し、ビジネスモデルを検討するための施設を東京・赤坂に開設している。
社会イノベーション協創センタは、北米100人、欧州70人、中国115人、アジア65人、日本200人の合計550人体制。テクノロジーイノベーションセンタは、日本に2050人体制。基礎研究センタは日本に100人体制となっている。
「日本だけでなく、北米、欧州、中国といった形で、グローバルにイベントを開催し、顧客とのコミュニケーションを強化した。顧客と議論した案件数は、2014年度には81件であったが、2015年度は179件と2倍以上になっている。また、顧客と協創したプロトタイプ実証件数は27件から74件へと拡大した。これらの取り組みによって、研究者のマインドが大きく変わってきている。仮説を立てて、アイデアを生み、それを実用化につなげ、さらにマネタイズするという意識も浸透してきた。研究開発投資営業利益比(営業利益÷研究開発投資)の数値をグローバルレベルの水準に持って行きたいと考えている」とした。
そして「2018中期経営計画」では、日立全体が「IoT時代のイノベーションパートナー」を目指すなかで、研究開発グループでは「不確実性のなかでのビジネスイノベーション」を基本方針に掲げ、「顧客協創の加速によるサービス事業創生」、「サービス・プロダクト事業成長に向けた技術基盤の構築」、「オープンイノベーションによる将来の社会課題への挑戦」の3点に取り組むとした。
日立グループの研究開発投資は、2015年度実績で3337億円。2016年度は3500億円を計上し、2018年度まで売上収益の4%を投資する計画だという。
2016年度は、ビジネスユニット資金による依頼研究が約50%、先行研究が20%、コーポレート資金の先端・基盤研究が30%の構成比とし、これは前年度と変わらないが、「先端・基盤研究のうち、2015年度には24%だったデジタルソリューション関連研究比率は、2016年度には64%にまで引き上げる」とした。