大河原克行のキーマンウォッチ
「The Most Complete Cloud」を打ち出し、クラウド事業を加速する~日本マイクロソフト・樋口泰行社長
(2014/12/2 06:00)
日本マイクロソフトが、今年2月に稼働させた「Microsoft Azure」向けの国内データセンターに続き、「Office 365」および「Dynamics CRM Online」のデータセンターを国内に設置。それぞれ2014年12月、2015年第1四半期までに稼働させることを明らかにした。
いずれも、Azureの国内データセンター同様に、東日本および西日本の2カ所のデータセンターからサービスを提供。日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「日本に根ざした企業、日本に貢献する企業を目指す日本マイクロソフトにとって、それを最も象徴する出来事になる」と語る。樋口社長に、同社のクラウド戦略と、今回の国内データセンターの取り組みについて聞いた。
クラウドは最重点事業
――2014年2月に、CEOにサティア・ナデラ氏が就任して以降、「Cloud First,Mobile First」の方針を打ち出し、クラウド事業を加速しています。7月から始まった新年度についても、その姿勢をさらに強めていますね。あらためて、クラウド事業に対する日本マイクロソフトの基本姿勢を教えてください。
いまやクラウドは、Microsoftにとっては最重点事業となっています。もともとサティア自らが担当していたのがクラウド事業ですし、CEO就任以降もクラウド事業をドライブさせており、さらに勢いがついています。Googleに対しては市場シェアで抜きましたし、成長率も当社の方が高い。これからも差がついていくと思います。
首位のAWS(Amazon Web Services)に対しては、まだ追いかける立場ですが、追いつくめどは立ってきています。追いつけ、追い越せということで、クラウド領域への投資を加速していますし、顧客獲得についても全速力で取り組んでいる。非常に高い目標を掲げ、それに向けて取り組み、その成果が形になってきているといえます。
――11月13日に、Office 365およびDynamics CRM Onlineのデータセンターを国内に設置することを発表した会見では、「The Most Complete Cloud」という言葉を初めて使いましたね。これはどういう意味でしょうか。
これは、2014年10月20日に米国サンフランシスコで開催された「Microsoft Cloud Briefing」において、サティアが初めて使った言葉であり、日本では、13日の会見で初めて使いました。MicrosoftはクラウドOSビジョンを発表していますが、これにより、プライベートクラウド、パブリッククラウドのほか、パートナークラウドとの連携や、オンプレミスと連携したハイブリッドクラウドなど、エンド・トゥ・エンドでのクラウドサービスを提供できることを、Microsoftのクラウドビジネスの強みであることを訴求しています。これが、「Complete Cloud」が示す意味のひとつだといえます。
また、SaaS、PaaS、IaaSの3つのサービスをすべて提供できること、これにより、生産性を高めるサービス、コミュニケーションのためのツール、ビジネスアプリケーションやプラットフォームといったあらゆるサービスを提供できるといった点でも、「Complete Cloud」だといえます。
さらに、これまでのエンタープライズビジネスで培った営業体制、サポート体制の強みを持つこと、強固なセキュリティ環境の実現やプライバシー保護を含めたエンタープライズグレードのクラウドサービスを提供できることも「Complete Cloud」だといえます。
そして今回、日本において、Microsoft Azure向けの国内データセンターに続き、Office 365およびDynamics CRM Onlineの国内データセンターも開設し、当社がクラウド三兄弟と呼ぶ、主要なクラウドサービスをすべて日本のリージョンから提供できるようになった。これも「Complete Cloud」です。こうしたことを含めて、「The Most Complete Cloud」ということができるというわけです。これだけそろったら、事業が成長しないわけにはいかないというほどの完璧ぶりですね(笑)。
年率3倍の成長を目指す
――実際、樋口社長は、日本におけるクラウド事業の成長に向けた高い目標を新たに打ち出しましたね。
現在の実績をみると、Microsoft Azureが前年比2.7倍、Office 365では2.3倍、Dynamics CRM Onlineでは2倍の伸びとなっており、クラウドビジネス全体でも2.5倍の成長となっています。国内クラウド市場全体の成長率が、前年比30%増であることと比較しても、その成長率が極めて高いことがわかると思います。日本マイクロソフトでは、今後、年率で3倍の成長を目指す計画です。
振り返ってみますと、Microsoft Azureの成長に関しては、今年2月の日本へのデータセンター開設のインパクトが極めて大きかったといえます。海外から日本に拠点を移したいというユーザーをはじめ、想定以上のお客さまが殺到し、一時的にはキャパシティが危なくなり、急きょ増強した経緯もあります。
Microsoft Azureにおいては、今後、具体的な活用メリットを示していくことが大切であり、まずは新たな領域において、どんな使い方ができるのかといったことを明確に示していくことが大切だと考えています。
ただ、日本マイクロソフトの営業部門にとって、垂直型の提案というのは経験が少ない部分でもあります。その点では、Microsoft Azureは、日本マイクロソフトにとって最もチャレンジングな領域であるともいえるでしょう。IT部門よりも、ビジネスディシジョンメーカーにアプローチしていかなくてはならないという点でも新たな挑戦です。それに向けて、営業の動き方を変革させるといったことも必要です。
そして、クラウドを中軸に据えてシステム構築を提案する新しいタイプのビジネスパートナーとの連携もますます重要になっていきます。それもまた大きな挑戦です。