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富士通、2025年度第1四半期の連結業績は減収増益も、調整後営業利益は過去最高益を更新

減収は為替の変動などが影響

 富士通が発表した2025年度第1四半期(2025年4月~6月)の連結業績は、売上収益が前年同期比1.2%減の7498億円、営業利益は同133.7%増の334億円、調整後営業利益は同112%増の351億円、税引前利益が同86.3%増の370億円、当期純利益が同917.8%増の1717億円、調整後当期利益は同124.2%増の292億円となった。

2025年度第1四半期決算概況

 富士通の磯部武司副社長 CFOは、「為替の変動影響などがあり減収となったが、サービスソリューション、ハードウェアソリューション、ユビキタスソリューションともに増益となり、調整後営業利益は過去最高益を更新した」とし、「第1四半期は、おおむね社内計画通りに進捗した。国内外における事業環境変化は激しいが、マーケットごとには大きな変化は見られず、想定線で推移した」と総括した。

 最終利益の大幅な増益は、新光電気工業の売却益として約1400億円を計上したことが影響している。

富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏

セグメント別の業績

事業別セグメント情報

 セグメント別業績は、サービスソリューションの売上収益が前年同期比2.6%増の5146億円、調整後営業利益は前年同期から128億円増の478億円となった。調整後営業利益率は9.3%となっている。そのうち、国内の売上収益は前年同期比6.0%増の3808億円、海外の売上収益は同6.0%減の1337億円。

 「成長ドライバーであるサービスソリューションは、引き続き、増収増益基調にある。国内ビジネスは、DXやモダナイゼーションが伸長。増収効果に加えて、採算性が向上し、利益率は2.3ポイント改善している。海外は為替影響に加えて、構造改革を進めているAPACが減収になった」と述べた。

サービスソリューションの概況

 サービスソリューションのうち、Fujitsu Uvanceの売上収益は前年同期比52%増の1467億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は29%(前年同期は19%)へと大きく拡大した。

 内訳はVerticalの売上収益が同69%増の498億円(前年同期実績は294億円)となり、Horizontalの売上収益は同44%増の969億円(同671億円)となった。また、Fujitsu Uvanceの受注高は、前年同期比17%増の1276億円となった。

 「第1四半期の進捗は、売上、利益率ともに、ほぼ計画通りである。まだHorizontalの売上割合が大きいが、Verticalのオファリングも力強く増加している。2025年度の7000億円という高い目標の達成に挑んでいく」としている。

 なお、磯部副社長 CFOは、「今後3~5年で、サービスソリューション全体に占めるFujitsu Uvanceの構成比を50%にまで引き上げる」との考えを示し、「これまでの請負型のビジネスが突然無くなることはないが、Uvanceによるオファリングビジネスを半分にすることで、採算性が高まり、リカーリング型ビジネスの獲得にもつながる。富士通の悪い癖である第4四半期集中のビジネス構造を解消でき、事業効率を高めることもできる」とした。

Fujitsu Uvanceの状況

 また、モダナイゼーションの売上収益は同25%増の517億円となり、Fujitsu Uvanceの重複分を含むと売上収益は同44%増の738億円となった。「モダナイゼーションは引き続き力強く拡大している。2025年度はUvance重複分を含めて330億円増の3300億円を目指しているが、第1四半期だけで225億円増を達成している」と好調ぶりを示した。

 なお、モダナイゼーションの受注額は前年同期の780億円を下回る747億円となっているが、「大口商談の四半期別バランスの問題である」と説明。「売上拡大を上回る受注拡大が継続している。モダナイゼーションに関するデマンドはまだまだ強い。2026年度以降も増収傾向は続くことになる。これに向けて、さらなるデリバリーの強化が必要である」と述べた。

モダナイゼーションの状況

 サービスソリューションのサブセグメント別内訳では、グローバルソリューションの売上収益は前年同期比6.4%減の1207億円、調整後営業利益は前年同期の23億円の赤字から13億円改善したものの、10億円の赤字。リージョンズ(Japan)は、売上収益が同6.2%増の2894億円、調整後営業利益は同9.9%増の416億円。リージョンズ(海外)の売上収益は同6.0%減の1337億円、調整後営業利益は前年同期の5億円の赤字から、77億円の黒字に転換した。

 「グローバルソリューションでは、2025年2月にコンタクトセンター事業を外部企業に譲渡した影響によって減収になったが、デリバリーの効率化により損失は減少している。リージョンズ(Japan)は、DXや基幹システム刷新などのデマンド拡大が継続し、パブリック、金融、製造、小売などのあらゆる分野で増収になっている。採算性向上は堅調に推移しているが、第1四半期では旺盛なデマンドへの対応を背景に、不採算案件が少し出てしまった。リージョンズ(海外)は事業ポートフォリオ改革の効果により、採算性改善には貢献したが、まだ成長モードには入っていない。いまは健康にしていくことが優先課題である」と述べた。

サブセグメント別内訳

 サービスソリューションにおける採算性の改善状況についても触れた。

 第1四半期の採算性改善による利益効果は76億円となり、グロスマージン率は前年同期から1.5ポイント向上した。「JGG(Japan Global Gateway)の活用率を高めているのに加えて、生成AIの活用を促進している。議事録作成といった日々の作業の置き換えのほか、モダナイゼーションにおける既存アプリケーションの構造解析、SI全般でのアプリケーション設計やレビューの支援、コードの自動生成、テストデータの作成などにも活用範囲を拡大させている。3万人の国内SEおよび協力会社に対して、生成AIツールの利用環境を提供している」との現状を紹介。

 また、「生成AIの利用は、拡大するデマンドに対するリソースの確保や作業の効率化にとどまらず、サービス提供のスピードアップ、サービス品質の向上につなげている。適用プロジェクトの範囲は限定されており、端緒についたばかりだが、AIの急速な進化をしっかりとデリバリーに生かすことができれば、サービスの提供価値を高める余地は大きい」と述べた。

 このほか、価値ベースのプライシング戦略、人材の最適配置による生産性向上を実現する人材ポートフォリオ最適化にも取り組んでいるとした。

採算性改善の状況

 国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年同期比1%増となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比3%減、ファイナンス(金融・保険)が同19%増、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が同4%減、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が同14%増となっている。

 「国内ビジネスの商談は、力強い傾向を維持している。第2四半期以降、受注獲得を目指している商談パイプラインの規模は、前年同期の15%増を上回る。デリバリー確保に心配はあるが、しっかりと対処しながら第2四半期以降の着実な受注拡大につなげていく」と説明。

 「エンタープライズは前年同期に大口の複数年契約があり、その反動があった。それを除くと9%増となる。特に流通が好調であり、DXやSX、モダナイゼーション案件などの引き合いが旺盛である。ファイナンスは、金融機関向けの営業店システムの大型更新商談を獲得することができた。パブリック&ヘルスケアでは主に官公庁向けの大型案件の反動により低調な水準となった。だが、第2四半期や第3四半期に獲得予定の大型案件のパイプラインが積み上がっている。通年での成長軌道には変更がない。ミッションクリティカルでは、ナショナルセキュリティを中心に、引き続き順調に案件が積み上がっている」とした。

受注の状況(国内)

 今回の説明では、国内サービスソリューションにおける売上収益と受注残高の状況についても触れた。

 第1四半期末時点での2025年度売上予定の受注残高は8830億円であり、前年同期に比べて1010億円増(前年同期比13%増)となっている。

 「第1四半期の売上実績と合わせると、1兆2638億円が見えている。これは前年同期に比べると1226億円のプラスになる。年間計画の1兆8000億円に対するカバー率は70%となり、第2四半期以降の受注のなかから5361億円を、2025年度の売上に転換する必要がある」とし、「受注残高の状況、第2四半期以降の受注獲得を目指している商談パイプラインの拡大状況を考えると、年間売上計画達成に向けては着実な進捗であると評価している」と述べた。

売上収益と受注残高の状況(国内)

 海外の受注状況は、Europeが同77%増、Americasが同49%減、Asia Pacificが同17%増となっている。Europeではデータセンター関連で複数年契約の大型更新案件を受注し、Asia Pacificはオセアニアでのリテール系の複数年更新案件を受注したが、Americasでは前年度の大型複数年契約の反動がマイナスに影響した。

受注の状況(海外)

 ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比11.6%減の2021億円、調整後営業利益は前年同期の36億円の赤字から、13億円の黒字に転換。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同14.2%減の1671億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同4.0%増の349億円となった。

 また、ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比1.8%減の479億円、調整後営業利益は同84.3%増の82億円になった。

ハードウェアソリューションの概況
ユビキタスソリューションの概況

通期の業績見通しは据え置き

 2025年度通期(2025年4月~2026年3月)の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比2.8%減の3兆4500億円、営業利益は同35.8%増の3600億円、調整後営業利益は同17.2%増の3600億円、税引前利益が同123.9%増の1330億円、当期純利益が同77.4%増の3900億円、調整後当期利益は2500億円とした。調整後営業利益率は10.4%を計画している。

 「2025年度は中期経営計画の最終年度となる。営業利益、調整後営業利益、当期利益、調整後当期利益ともに、過去最高益を達成するというゴールに向けて、しっかりと進めていく」と語った。

業績見通し 調整後連結業績

 なお、トランプ関税の影響については、「富士通はサービスビジネスがかなりの比率を占めるため、直接的な影響は少ない。ハードウェアビジネスについても、米国への輸出はネットワーク機器が中心であり、関税影響は限定的である。だが、国際取引の不透明さがあり、お客さまへの影響については見通しがついていない。それでも、日本におけるDXやモダナイゼーションの旺盛なデマンドに対しては、潮目が変わるほどの影響はない」と述べた。