大河原克行のキーマンウォッチ

「クラウドビジネスの成功モデルを確立したい」~富士通マーケティング・生貝健二社長 (“強い”パートナー商品の展開をFJMがお助け)

“強い”パートナー商品の展開をFJMがお助け

 3つ目はパートナーが持っている強い商品を、FJMの販売網、サポート網を活用して広げていくお手伝いをするという取り組みです。

 パートナーが独自に展開しているパッケージソフトウェアやクラウドサービスがありますが、なかには、いい商品ではあるが、全国規模での販売網を持たない、あるいはデータセンターの展開で苦労しているといった課題を持っている場合があります。

 こうした課題をパートナーとの協力で解決したい。各地域にいくと、シェアが高く、強い商品を持っているパートナーがたくさんあります。FJMを通じて、ほかの地域に横展開していくといったこともできますし、新たなビジネスモデルの構築にも乗り出すことができると考えています。

――パートナー支援策という観点での重点ポイントは何になりますか。

 富士通全体で見ると、過去には、中堅・中小企業向けビジネスは、パートナーにすべてをお願いしてしまい、真剣にやってこなかったという反省があります。富士通グループとして、中堅・中小企業の市場に、どう向き合うべきか、ということを真剣に考えていく必要がある。いま、パートナー各社とは、エリアや業種を決めて、どの市場を狙っていけばいいのか、ということを相談しています。

 FJMとしては、プレマーケティングや同行訪問を含めて、商談開拓支援、新規ユーザー開拓支援、ソリューションの共同展開を行う体制を整えるほか、パートナーの営業力やスキルを高めることを目的としたスペシャリスト教育のトライアルも開始しています。

 パートナーでは、今後数年の成長戦略をどう描くかが課題となっています。こうした課題をFJMと共通化し、そのなかで今後数年にわたって、どうビジネスをしていくのかといったことを考えていかなくてはならない。かつては、FJMは敵なのか、味方なのかといった議論もあったが、そうした議論はもはやなくなり、協業できる関係が構築できたという評価を得ていると考えています。

 前社長の古川(=古川章取締役相談役)が、「市場でパートナーと競合したときには、FJMは降りてもいい」ということを明確なメッセージで訴えたことも、パートナーからの信頼を得ることにつながっているのではないでしょうか。

 また、同行訪問の成果が出始め、パートナービジネス営業本部を通じて、数々のパートナー支援策を展開し、パートナービジネスを広げることに真剣に取り組んできたことも評価されてきたと、自己評価しています。FJMが率先して活動し、その成功モデルをみせていくことも重要な役割だと考えています。

 中堅・中小企業の市場における富士通のシェアは、10%前後のマーケットシェアです。伸ばしていける余地は多々あるが、新規ユーザーを獲得していく力がいまひとつ。そこをパートナーと一緒に開拓していきたい。自社ユーザーはきちっと守っているのがFJMの特徴。シェア拡大に向けて、パートナーとともに、新規顧客を獲得していきたいと考えています。まずは、中堅・中小企業において、10%のシェアを早く超えるのが目標です。

“黒帯”スペシャリスト育成を進める

――FJMが取り組んでいるスペシャリスト教育とはどんなものですか。

 中堅・中小企業向けビジネスは、顧客数が多い分、一人の営業担当者やSEが、複数の顧客を対象にします。大手企業の場合は、4人も、5人も人を割いて提案するが、中堅・中小企業はそういうマーケットではない。一人が何役もこなしながら、提案活動を行っていかなくてはならない。

 また中堅・中小企業では、CIOや経営者と直接商談することも多いわけです。そのためのスキルアップはきちっとやっていかなくてはならない。つまり、個人のスキルアップ、戦闘力を高め、それを効率よく動かすことが重要になります。

 FJMが取り組むスペシャリスト教育は、FJMとパートナーを対象にしたもので、第一線の担当者が高いスキルを身につけ、コンサルタント的な手法と技法を身につける狙いがあります。

 当社では、2年前から、ブラック、グリーン、ホワイトというようにレベルを設定し、厳密な審査を行いながら、資格を与えています。これは、柔道の黒帯、白帯と同じで(笑)、ブラックが最も高いレベルとなります。

 資格取得者は、賞与を含めて、給与に反映していくことになります。きちんとしたルールのなかで社員のスキルアップを行う仕組みであり、次のステップとして、これをパートナーにも展開していきたいと考えています。

――ちなみに黒帯は何人いますか。

 ブラックとして認定している人は、営業全体の10%です。これを今年中には12%にしたい。また、ブラックのなかに「マイスター」と呼ばれる人がいます。これはFJM全体の730人に対して、8人しかいません。それだけ厳しい基準を持ったものであり、しかも毎年更新するという形にしています。

 一方で、ホワイトは全体の4割ぐらい。ホワイトまでいっていない人も約2割います。グリーンをブラックにあげていく、またホワイトをグリーンにあげていく、そしてホワイトの取得者を増やしていくというように底上げし、社内にプロフェッショナルを育てていきたいと考えています。

 パートナーについては、この制度の展開を前に、昨年から教育支援を開始しています。パートナーに対しては、昨年度だけで、当社社内の施設を活用した研修で19社38人、分野別に分けた小規模の研修では28社83人を対象に実施しました。

(大河原 克行)