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富士通マーケティング、食品業向け基幹業務パッケージを発売~2013年度にはクラウドでの提供も計画

 富士通株式会社および株式会社富士通マーケティング(以下、FJM)は11日、中堅企業向け統合基幹業務パッケージ「GLOVIA smart」の新製品として、食品製造業・卸売業向けの「GLOVIA smart 食品 FoodCORE(フードコア)」(以下、FoodCORE)を発表した。まずはオンプレミス型で投入するが、2013年度にはクラウドサービスとしての提供も開始するという。

カスタマイズの必要性を少なくした食品製造・卸向けパッケージ

 FoodCOREは、同社が2006年から発売していた「GLOVIA smart食品製造・卸」と、2005年から発売している食品業向け業務ソリューション「FoodStudio」を統合した製品。これまでカスタマイズが多かった機能を標準化し、502の機能を提供しているという。また、GLOVIA smart会計などのカスタマイズレスでの連携も可能としており、短期間、低価格での導入を実現するほか、業務効率化や決算早期化を実現するとした。

 両社ではこの特徴を「一部にはカスタマイズは残るが、標準機能を搭載したパッケージを利用することで、約6カ月で構築できるようになる。また、年商100~300億円規模の企業の場合には、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、SEによるサポート費用などを含めて、3500万円程度を想定している。これまで2年間かかっていた期間や、あるいは2~3億円かかっていた投資に比べて、大幅な期間短縮、コスト削減ができる」と説明する。

FoodCOREの概要
FoodCOREの特徴

 また、主に日配食品、生鮮食品、加工食品などを扱う中堅食品業を中心に、損益の見える化を実現しており、生産、販売管理、発注仕入れ管理、物流管理、経費支払い管理、管理損益などを一元化。入荷予定と先付け受注を考慮した在庫管理や、製品の完成とともに原料を消費する工場在庫管理、一元的所要計算などが可能となる。

 さらに原価の概算計上という新たな考え方を取り入れた「日々管理損益」機能を採用することで、製造原価から営業利益までの財管一致した日次の管理損益が把握できる点も特徴とのこと。

 富士通システムズ・イースト 食品事業部第二食品ソリューション部の山城眞一部長は、「管理損益では、部門別、得意先別、単品別などのさまざまな切り口による帳票を12種類用意し、リアルタイムでの経営の見える化が実現できる」と述べ、同機能は、業界初の機能だとアピールした。

 加えて、食の安全や安心に向けたトレーサビリティ、賞味期限や消費期限といった鮮度管理、得意先との取引形態や売上高計上基準への対応、リベート管理などの食品業界特有のニーズにも対応している。

 なお、酒類に関しては、酒税への対応を行っていないことから対象外となる。また、海外から直接食品を輸入する場合には、貿易管理ソリューションとの連携によってシステムを提供する考えだという。

原価、利益、管理損益の見える化が可能

 FoodCOREの価格は、基本システムが200万円。それに加えて、販売管理が250万円から、生産管理が200万円からとなっている。

 メインターゲットは、年商100~300億円の食品製造、食品卸といった業界で、2015年度までに120セットの販売を目標にする。

ターゲット市場
販売・サポート体制と今後の販売目標

 なお、提供を予定しているというクラウドサービスは、現時点では、パブリッククラウドで提供するのか、プライベートクラウドで提供するのかといった点についても検討段階だとのことで、オンプレミス版の機能を絞り込んだ形での提供を検討。「クラウドサービスでは、翌日からすぐに利用できるという環境で提供するものになる」とした。

食の安全・安心と収益の確保を考慮

 富士通システムズ・イーストの山城眞一部長は、「FoodCOREは、食の安全・安心の確保と、収益の確保の2つの観点で開発したもの」と位置づける。

 食品業界では年商1000億円を超える企業が約110社ある一方で、年商100億円以下の企業が約3800社あるという。だが、少子高齢化の影響から加工食品を中心に需要が縮小し、年間市場規模は16兆円に縮小した。さらに、異常気象の影響などにより小麦などの原材料価格が高騰するものの、最終価格に反映しにくいという状況にもあるし、食の安全・安心への取り組みが必須条件となっているという背景も見逃せない。

 こうした点を受け、「FoodCOREによって、消費者、取引先への信頼維持、サービス向上および問題発生時の迅速な対応を可能とする一方、きめ細かい原価を把握することで、資源、経費、人件費などの改善点が見え、精度の高い利益管理が可能にすることで、本来の企業価値向上に向けた取り組みが可能になる」とのメリットを強調した。

業界で必須になったという、食の安心・安全に向けた取り組みにも対応する
ユーザーへの導入効果
富士通システムズ・イースト 食品事業部第二食品ソリューション部の山城眞一部長

 なお富士通グループでは、20年以上にわたって食品業界向けにシステムを提供してきた経験を持ち、年商1000億円以上では約30%のシェアがあるという。だが、年商1000億円未満の市場におけるパッケージ製品のシェアは4.4%にとどまる。

 「食品業界は、規模も、細業種も幅広い。ユーザーが選べる商材をそろえるという意味がある。今回のFoodCOREと、食品製造を中心とする利用に最適化したGLOVIA smart 製造 PRONES食品テンプレート、販売管理による完全パッケージとして提供するGLOVIA smart きららの3つの選択肢によって、食品市場にアプローチしていく」(FJM GLOVIA smart事業部 プロジェクト統括部長の渥美直幸氏)としている。

 FoodCORE、GLOVIA smart 製造 PRONES食品テンプレート、GLOVIA smart きららの3つの製品により、1000億円未満の市場において、500セットの販売、シェア10%の獲得を目指すという。

 なおFoodCOREは、すでに都内の日配企業が、2013年3月から本稼働を予定しているほか、2013年1月から導入プロジェクトを開始するユーザーが4社。そのほか、約20社と商談が進んでおり、65社からデモンストレーションなどの要望が出ていると、ビジネスの進ちょくを説明している。

FJM GLOVIA smart事業部 プロジェクト統括部長の渥美直幸氏

(大河原 克行)