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「Apple Music」発表、後発Appleは勝てるのか?

音楽業界を(またも)救う?

 音楽業界の現状はどうなのだろう。Appleは2001年のiPod発売からダウンロードサービスでデジタル音楽産業をリードしてきた。とはいえ、同社がデジタル音楽ビジネスで得ている売り上げは、高マージンのハードウェアからに比べると微々たるものだ。デジタル音楽の市場自体がなお小さいためだ。

 Bloombergによると、2014年のAppleの総売上額は、デジタル音楽市場全体の29倍にのぼるという。デジタル音楽全社の1カ月の売上額を、Appleは1日で出している計算だ。Apple MusicでSpotifyのようなサービスを抑えて市場を支配したとしても財務的には大きなメリットはないという。

 では、音楽ビジネスを展開する必要性は何だろう。Wired.comは、(1)iPhoneなどサービスのプラットフォームとなるハードウェア事業にとって重要、(2)音楽市場でのポジションを維持することでAndroidなど他プラットフォームにも展開でき、さらにはiPhoneへの移行促進が期待できること――と分析する。

 一方、Reutersは音楽業界側がApple頼みである事情を解説する。かつて音楽ダウンロード市場を立ち上げたように、Appleがストリーミング市場のパイを大きくしてデジタル音楽事業を活性化してくれるとの期待が音楽業界にあるというのだ。

 RIAAのCEO、Cary Sherman氏は「ストリーミングサービス全体の底上げになるだろう」と語っている。そのブランド力、8億人というiTunesユーザー数とクレジットカード情報から、Appleが動けば市場も動くとの考えているのだ。

 Bloombergによると、デジタル音楽業界では、有料サービスの加入者が1億人に達するとサービスが持続性のあるレベルになると予想されているという。現在、その数は4100万人。残る5900万人を埋めるには「iTunesユーザーの13人に1人が加入するだけでよい」とはじいている。

 期待を担ったApple Musicだが、当局の動きも出ている。Apple Musicが発表された翌6月9日、ニューヨークとコネチカット両州の検察当局が、独禁法違反の疑いで調査を開始したことをメディアが一斉に報じた。レーベル各社とAppleが共謀して、広告ベースの無料のストリーミングサービスを排除しようとした疑いとしている。

岡田陽子=Infostand