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Amazonがクラウドメール参入 企業向けサービスが主戦場に

Microsoftに打撃?

 企業はなんらかの形で電子メールシステムを導入している。AWSはこれらの企業に、移行の手間を差し引いても価値があると考えてもらう必要がある。AWSは、オンプレミスやライセンス管理の複雑さ、セキュリティという既存の電子メールにつきまとう問題への解決を売り込むが、果たして思惑通りにいくのだろうか?

 Bloombergは、クラウド電子メール市場の規模について、2014年で63億ドル、2018年には169億ドルと見込まれるとのThe Radicati Groupのレポートを引用している。加えて、電子メールやカレンダーサービスを含むサブスクリプション形式のサービス利用への意思決定者の関心は高まっており、2011年の56%から、2014年には73%に増えたというForrester Researchの調査も併せて紹介している。

 こうしたことなどから、Forresterのアナリスト、T.J. Keitt氏は「市場の大部分は、セキュリティを含むさまざまな理由から、まだ(MicrosoftやGoogleなどの)ベンダーに用心深い目を向けている」と述べている。そして「Amazonなどの企業がつかめるモメンタム(機運)はたくさんある」という。

 またKeitt氏はWall Street Journalに対して、「Amazonの動きは興味深い」としながらも、「Amazonが市場に影響を与えられるかどうかはわからない」と慎重なコメントをしている。

 競合については、AWSで築いたデータセンターの可用性、セキュリティなどへの信頼がプラスに働く可能性はありそうだ。Forbesは、WorkMailをフロントエンドの電子メールビジネスというよりもMicrosoft Exchangeを狙い打ちするものと位置付ける。そして、WorkMailについて考えられる懸念事項として、ストレージ容量が十分かどうか(WorkMailは50GBをバンドルする)、AWSがエンドユーザー向け生産性ツールを持たない点(つまり、企業が求めているのは一貫性のあるフロントエンド提供できるインフラベンダーである)などの点を挙げている。

 Gigaomリサーチ部門のアナリストは「Microsoftにとって大きな打撃になる」としている。ファイル共有サービスのAmazon Zocaloに追加料金なしでアクセスできること、LDAPベースの認証やシングルサインオンなどの機能があり、中規模企業が中核となるバックオフィスをクラウドで動かすことができる、というのがその理由だ。

 なお、AmazonのWorkMail発表についてMicrosoft側はWall Street Journalに、「われわれは電子メール技術で長い歴史があり、職場向けツールの改善のための投資を継続している」とコメントしている。

(岡田陽子=Infostand)