Infostand海外ITトピックス

Amazonがクラウドメール参入 企業向けサービスが主戦場に

 パブリッククラウドでトップを走るAmazonがクラウド電子メールサービス市場に参入する。子会社Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウドベースの電子メール/カレンダーサービス「Amazon WorkMail」を発表した。この市場は現在、MicrosoftとGoogleが独占しているが、後発となるAmazonにチャンスはあるのだろうか。メディアは、コンシューマーにフォーカスしたEC企業から、企業向けへと拡大を図るAmazonの戦略という視点からも分析している。

「現状の電子メールの課題を解決する」

 Amazon WorkMailは、電子メールの送受信、連絡先の管理、カレンダー共有など、通常の電子メールサービスの全機能を備え、他サービスからの移行を容易にする工夫も用意している。「Microsoft Office」をはじめとする電子メールクライアントをそのまま利用できるほか、「Microsoft Active Directory」と互換性があり、企業のディレクトリサービスとの統合も可能という。Officeクライアントをそのまま利用できることで、乗り換えの壁を低くするものだ。

 電子メール・カレンダー機能をクラウドサービスとして提供するのは目新しいことではなく、既に多くのサービスがひしめいている。だが、Amazonはチャンスは十分にあると見ているようだ。

 Amazonはプレスリリースの中で、既存のクラウド電子メールサービスは、ハードウェア、複雑なソフトウェアライセンス、導入後のメンテナンスが不要な一方で、既存のディレクトリサービスと統合できず、セキュリティの懸念がのしかかると指摘する。そして、「Amazon WorkMailはこれらの要求を満たし、AWSが企業の電子メールとカレンダーにまつわる面倒な作業を管理することで企業が俊敏性(アジリティ)とコスト削減の実現を支援する」と売り込んでいる。

 Amazonが強調するWorkMailのセキュリティとは次のようなものだ。

 まずは暗号化。やりとりするメッセージはすべてSSLを利用して暗号化される。AWSの暗号化キーの作成や管理のマネージドサービス「AWS Key Management Service」と統合できるため、顧客自身が暗号化キーを管理することも可能という。

 次に、顧客は電子メールデータを保存するAWSのリージョンを選択できる。近くのリージョンを選んで遅延を少なくすることもできるし、規制順守のため地域を選ぶこともできる。このほか、モバイル側でも「Microsoft Exchange ActiveSync」プロトコルにより企業が特定したセキュリティポリシーを実行できるという。また、管理機能の「AWS Management Console」を利用して、デバイス暗号化、デバイスロックや遠隔からのデータ削除、デバイスのパスワード強化なども可能としている。

 Amazon WorkMailは2014年に発表したAWSのクラウドストレージ「Amazon Zocalo」とバンドルし、メール容量50GB、さらに200GBのオンラインストレージがついて1ユーザーあたり月額6ドルで販売する。

(岡田陽子=Infostand)