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3200万ドルをクラウド調達 ハイブリッド端末「Ubuntu Edge」の挑戦 (ハイテク業界のクラウド調達最高記録か)

ハイテク業界のクラウド調達最高記録か

 Ubuntu Edgeのもう1つの注目ポイントはクラウド資金調達だ。最新のガジェット開発にあたってクラウド調達を利用した例はこれまでにもある。有名なのがスマートウオッチの「Pebble」だ。別のクラウドファンドサービスKickstarterで資金を募ったPebbleは1カ月で1000万ドルの調達に成功した。同じくKickstarterでクラウド調達したAndroidベースのゲーム機「OUYA」は、1カ月で850万ドル以上を集めた。

 だが、Ubuntu Edgeの目標額はPebbleの3.2倍。Pebbleとは異なりUbuntuは知名度があり、Linuxディストリビューションを長く使い続けているコアのファンやコミュニティも多い。一方でそれ故に、失敗はCanonical/Ubuntuブランドにダメージを与える可能性もある。

 そもそも、なぜCanonicalはクラウド調達を選んだのだろう。IndiegogoのサイトのFAQでCanonicalは「競争力のある価格で提供するためには十分なボリュームが必要だが、まだ大量生産されていない部品を使いたかった」と説明している。最初に台数が約束されていればCanonicalはリスクを軽減できる。創業者のMark Shuttleworth氏は、会社としてはハードウェアビジネスに拡大する意図はなく、「すばらしいテストセット」を作ることにあるとGuardianに語っている。背景には、そういう端末を求める熱心な技術ファンがいるとのShuttleworth氏の確信がある。

 Guardianは「(クラウド調達における)野心という点では一段ステップアップしたが、リスクも伴う」と見る。Canonicalが変更した新しい出資枠では、敷居が下がったものの、3200万ドルに達するには830ドル枠に8000人が出資する必要がある。Pebbleの115ドルとは金額のレベルが違うし、契約付きであれば「iPhone 5」は200ドル程度から手に入る。830ドルのスマートフォンに出資する人がどれぐらいいるのか。予想は難しい。

 Wired.comは、俳優のZach Braff氏がKickstarterで映画制作資金を募った際、“十分なリソースやコネがあるのになぜ一般人からの支援を募るのか?”などと批判を買ったことを引き合いに出し、ベンチャーのPebbleなどとは違ってCanonicalの行動に批判が出る可能性もあると見る。また、もし成功した場合、出荷が遅れたPebbleのような事態は許されないだろう、とも付け加える。

 成功を楽観する見方もある。Forbesのモバイルブロガー、Ewan Spence氏は「(期限である)8月21日までに目標額に達するだろう」と言う。そして、うまくいけばキャリアとメーカーが自社のニーズに合う仕様を決定して消費者に提供するこれまでのスマートフォンの開発・製造・流通モデルが代わり、代替OSにチャンスを切り開く先駆けになる、と期待する。さらには「エバンジェリストはこれまでにないスマートフォンを手に入れることができる」と前向きだ。クラウド調達はベンダーとユーザーが直接つながるモデルであり、双方にとってメリットも大きいとの考えだ。

 Indiegogoのキャンペーンサイトでは、29日現在、695万ドルが集まっている。開始後1週間足らずで3200万ドルの目標額の20%を上回ったことになる。残りは24日。まずはUbuntu Edgeキャンペーンの成否に注目したい。

岡田陽子=Infostand