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「モノのインターネット」活発化 課題は標準化やビジネスモデル

 「Internet of Things」(IoT、モノのインターネット)は、あらゆるものがインターネットでつながれるという概念だ。この発想はインターネットの黎明(れいめい)期からあるが、技術的、経済的課題も多く、未来の夢と考えられてきた。だが、クラウドとビックデータがメインストリームになり、ウェアラブルコンピュータが拡大する中で、急速に実現が近づいている。同時に、より具体的な課題も洗い出されてきた。

2020年には300億台~400億のモノがネットに接続

 IoTは、PC、スマートフォンだけでなく、あらゆるモノがネットワークにつながり通信する世界を指す。チップやバーコードなども使いながら、家電、自動車をはじめ、工場のコンテナや機器、さらには食品や日用品まで、ありとあらゆる物体をネットワークにつなぐ。これによって、遠隔からの識別、制御や監視が可能になり、自動化やコスト削減などのメリットがあると期待されている。類似の概念に、人の手を介さず、マシン同士が通信して自動処理を行う「M2M」(Machine to Machine)がある。

 IoTのコンセプトは、それほど新しいものではない。インターネットが普及し始めたころから、ゆくゆくはモノがネットにつながるという構想が学術界や産業界で語られてきた。だが、規模が大きく、実現のための環境整備に課題が多いため、遠い将来の技術と考えられてきた。

 しかし、状況が変わった。アイテムに装着するセンサーが小型化、低価格化し、3G/LTE、WiFiと無線ネットワークも張り巡らされ、Bluetooth、RFID、ZigBeeなど近距離無線通信の開発と実装が進行した。収集されたデータについても、ビックデータによる分析や処理のための技術開発や商用化が急ピッチで進んでいる。

 こうしてここ2-3年、IoTの実現への期待が高まっている。Gartnerは2011年、2012年と連続で、次の3年間で企業に大きな影響を与える可能性を持つ「戦略的技術」のトップ10の中にIoTを挙げている。

 IoTの実現とともにインターネットで接続されたデバイスは急増してゆく。Cisco Systemsは2020年には400億台のデバイスがネットにつながると予想。ABI Researchは、ネット対応端末が現在の100億台から、2020年には300億台に増えるとみている。

 CiscoのCEOのJohn Chambers氏は今年5月に米国で開催されたイベント「AllThingsD D11」で、「IoTは次の10年で最大のレバレッジ・ポイント(テコ)になる」とし、コスト削減によるメリットを含め14兆ドルもの収益を生み出すとの予想を披露した。

 なお、Chambers氏は公式ブログで「Internet of Everything(IoE)」を提唱している。これはIoTを含む構想で、人、プロセス、データ、ネットワーク上のモノで構成されるインテリジェントなネットワークを構築するというものだ。

(岡田陽子=Infostand)