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まだエージェントとは呼べない? 「AIエージェント元年」の実際
2025年4月7日 11:40
「エージェントの多くはチャットボットやAIアシスタントにすぎない」
「エージェントに関するいくつかの会話は、昔の象の話のようなものなのかと思う」と、金融サービスCapital Oneのチーフサイエンティスト兼エンタープライズAI部門の責任者Prem Natarajan氏はWall Street Journalに述べている。「誰もが象の異なる部分に触れているのだ」。つまり、それぞれ異なる側面からエージェントを語り、全体像が見えていないということだ。
混乱の元はAI研究で言う「知的エージェント」とのずれにもある。英国の研究者Michael Wooldridge氏とNicholas Jennings氏の「Intelligent Agents」(1994年)は早くにエージェントを論じた有名な論文だ。その中では「知的なエージェント」の基本的な特徴として「主導的に、目標指向の行動を示す」(to exhibit goal-directed behaviour by taking the initiative)ことが挙げられている。
学術界でいうエージェントは自らの目標を持って積極的に行動するものだが、AIブームの中で次々に発表されるエージェント製品は、まだその域には達していない。
Fortuneは、どの企業も「AIエージェント」に少しずつ異なる定義づけをしていると解説する。以前は「AIアシスタント」と呼ばれていた多くのツールも、現在では「エージェント」と呼ばれていると言う。「アシスタント」とは一般的に、タスクの自動化、検索、ナビゲーションなど人間の仕事をサポートするものを指す。
「人間から提供された特定の詳細情報に基づいてアクションを起こすだけならエージェント的ではない」と、GartnerアナリストTom Coshow氏はWall Street Journalに述べている。「企業が現在AIエージェントと呼んでいるものの多くは、実際にはチャットボットやAIアシスタントにすぎない」と同氏は言う。