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Googleが320億ドルでWiz買収を発表 政権交代も影響か

ビッグテックへの対応を測る「リトマス試験」に

 この大型買収でどんな影響があるのだろう――。

 まず、その評価額から来る影響だ。Wizの年間経常収益は約7億ドルで黒字化はまだだが、Googleは収益の約45~65倍という破格の評価を与えた。サイバーセキュリティ業界で前例のないレベルで、市場の過熱感を示すものとForbesはみている。

 このGoogleの買収が引き金となって、競合他社の買収の動きが活発化するかもしれない。

 Forrester副社長兼研究ディレクターのMerritt Maxim氏は「GoogleはWiz買収によって一部の分野でAWSより強い能力を得られる」とCNBCに述べ、今度はAWSが大型のセキュリティ企業買収に動く可能性を指摘する。その際、Aqua Security、Orca Security、Sysdigなどのスタートアップがターゲットになるかもしれないという。

 IPO市場やM&A活動が冷え込んでいることも、買収の動きを後押しそうだという。

 もうひとつは当局の動きだ。この買収は第二次Trump政権下の初の大型買収となる。

 Trump大統領は就任後まもなく、規制当局であるFTC(連邦取引委員会)の委員長にAndrew Ferguson委員を指名した。同氏は「ビッグテックへの重要な監視を続ける」と述べているが、「保守派の論客」として知られ、規制を嫌う共和党の意向を強く打ち出すとみられている。

 さらに大統領は、FTCの2名の民主党委員を解任し、FTCは共和党一色となっている。Googleが今回、買収に踏み切ったのは、新政権になったことで独禁法上のハードルが下がったと判断してとの見方がある。

 実際、前政権ではテック大手に厳しいLina Khan氏がFTCの委員長だった。2023年末、AdobeはFigma買収を断念したが、Wizの経営陣は初回の買収交渉時にこのような事態を懸念していたとCNBCは伝えている。

 Googleは今回、Trump氏が政権を握って8週間後にWizとの交渉を再開したという。FTCがどんな態度で臨むのか、コンサルティングのWest MonroeのBrad Haller氏は「2025年のM&Aの動向を見るリトマス試験になる」と述べている。