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連邦予算の3割削減目指す「DOGE」 武器はAI
2025年2月25日 11:41
「政府効率化」の嵐が米国で吹き荒れている。新政権発足から1カ月、Elon Musk氏が率いる「DOGE(Department of Government Efficiency)」は、連邦政府機関の内部に分け入って大ナタを振るっている。その武器はAIだ。米国のような超大国で3割もの予算削減をすることは、歴史的な大実験となる。その行方は――。
AIツールで省庁の事業と支出を精査
2月13日に立ち上がったDOGEの公式サイトには、「Wall of Receipts(領収書の壁)」という連邦政府経費の削減額を集計するページがあり、現在、総額550億ドルを節約したと掲示している。これらは政府契約の打ち切りによるものだ。AP Newsのまとめでは全米で数十万人規模の職員解雇が進行中であり、その削減分は今後、追加されることになる。
DOGEは2026年7月までの時限組織で、「連邦政府の年間予算の3割、最大2兆ドルの削減」を目標としている。トップのElon Musk氏は1月に「少なくとも1兆ドルを削減する」と発言していた。
そのため、DOGEはAIをフル活用しているようだ。2月6日付のWashington Postは2人の関係者の証言として、DOGEチームが教育省全体から集めた機密データをAIソフトウェアに入力し、同省のプログラムと支出を調査したと報じた。MicrosoftのAzure上に構築したAIツールで、契約、助成金、出張費に至るまで、同省が支出するあらゆる金を精査したという。
また、同日付のWiredは、新政権のGSA(米連邦政府一般調達局)が、契約・調達データを分析するオリジナルのチャットボット「GSAi」の開発を進めていると報じた。GSA内のTTS(Technology Transformation Services)の責任者に就任したThomas Shedd氏が中心となっており、TTSに政府全体の契約データを集約する意向を職員に説明したという。
Shedd氏は元Teslaのソフトウェア開発者で、“Musk氏の側近”とされている人物だ。同氏はGSAi開発を「AIファースト戦略」の一環と説明しているという。DOGEには、いくつものAIツールがある模様だ。Wiredは、少なくとも開発していた一つの別のAIツールが中止になったと伝えている。
匿名の教育省職員は「DOGEチームは教育省だけでなく政府全体で信じられないほどのスピードで作業している」とWashington Postに述べたという。AIツールなしでは不可能なことだ。