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欧州もAIレースに巨額投資 安全の議論が追いやられた「AI Action Summit」
2025年2月17日 11:19
米中の2大勢力がAI覇権を巡ってつばぜり合いを繰り広げている中、欧州がこれに続こうと名乗りを上げた。2月10日からパリで開催された「AI Action Summit」の場で、欧州委員会(EC)はAIに総額2000億ユーロ(約31兆9000億円)を投資することを明らかにした。米国では、5000億ドル(約77兆円)を投じる「Stargate」プロジェクトが発表されたばかり。国・地域を挙げてAIに資金をつぎ込む流れが起こっている。一方で各関係者の方向の相違も浮き彫りになった。
欧州もAIに2000億ユーロを投資
2月10日から2日間にわたって開催されたAI Action Summitには、約100カ国の政府関係者や企業、研究者らが参加した。Emmanuel Macron仏大統領とNarendra Modiインド首相が議長を務め、欧州委員会(EC)のUrsula von der Leyen委員長、米国のJ.D.Vance米副大統領らが顔をそろえ、AI企業からもOpenAIのSam Altman氏、AnthropicのDario Amodei氏、Google DeepMindのDemis Hassabis氏ら幹部が集まった。
サミットの成果としては、61カ国が署名した「オープンで包括的かつ倫理的なAIの発展」を目指す共同宣言「Inclusive and Sustainable Artificial Intelligence for People and the Planet」の採択がある。そして地元欧州は、AIへの2000億ユーロの投資をvon der Leyen委員長が表明した。
巨額だが、EUは既存のプログラムなどから500億ユーロを、残りは投資家やAirbusなど産業界からかき集めるようだ。その中には、“AIギガファクトリー”への200億ユーロの投資も含まれている。目指すのは、研究者が集まって素粒子研究をリードする存在となっている「欧州原子核研究機構」(CERN)の再現だ。
「欧州はAIをリードする大陸の1つになる可能性を秘めている。ECはその実現のために役割を果たしたい」(von der Leyen氏)
その前夜には、主催国フランスのMacron大統領が、「フランスをAIのパワーハウスにする」として1090億ユーロ(約17兆円)以上を投資することを発表した。このうち300億ユーロ以上はアラブ首長国連邦(UAE)の資金で、フランスのデータセンター建設に投じる。カナダの投資会社Brookfieldも200億ユーロを投資する予定だという。