Infostand海外ITトピックス

Xからのユーザー大量流出 ソーシャルメディアに地殻変動

ソーシャルメディアを引っ越す

 ブラジルでのX停止がもたらした効果はほかにもある。「BlueArk」という“XからBlueskyへのコンテンツごと引っ越しツール”だ。

 BlueArkを開発したのは、ブラジル在住開発者のNicolas Catellani氏とAmos de Silva Bezerra氏という2人だ。X停止によって自分たちのやり取りが失われることを残念に思い、移行ツールを思いついたという。Blueskyの技術がオープンであることも役立った。Blueskyのアカウントとパスワード、Twitter IDなどの情報を伝えるだけで、Xの投稿をBlueskyに移動してくれるものだ。

 有料だが、サービス開始から約1カ月で数千人のユーザーの200万件以上の投稿を移行させた。データにして2テラバイトに相当するという。2人は「私たちがやりたかったのは、みんなが以前からBlueskyにいるかのように見せること」だと言う。これをBusiness Insiderは「Blueskyに過去を与える」と表現している。

 一方で、問題もある。Business Insiderは、ツイートの日付を改ざんしてねつ造ができる点を指摘する。実際、2001年9月11日(9/11事件の日)という偽のタイムスタンプとともに「今日は悪いことが起こらないといいな」という投稿があったという。

 これに対しBluesky側も、インポートした古い投稿にアーカイブタグをつけるなどの対策を講じると述べている。

 Business Insiderの記事は、XからBlueskyに移行した体験をレポートして、こう述べている。「それは、ほろ苦いたき火のようだ。Twitte上の投稿を消去することは、参加してきた全ての会話から自分を消し去ることでもある」

 まさに、住み慣れた町から新しい町へ引っ越すような感覚だ。ソーシャルネットワークの研究者、Joe Bak-Coleman氏は「(過去のツイートがある)その部分のインターネットは永遠のものであるというのは、誤った信念なのだろう」と述べている。

 Business Insiderの記事は、「そうではない」としながら、こう結んでいる。「私は他の多くの人と同様、自分のツイートを新しい領域へと運び出している。私たちはついに自分の歴史を持ち出すことができるようになった。しかし、インターネットは将来に向かって進んでいる」