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共和党新政権で米国のAI政策が大転換 Elon Musk氏がキーマンに
2024年11月18日 11:27
米国の大統領選挙および議員選挙は、Trump氏と共和党の圧勝で決着した。来年の政権交代に向け、陣営は準備を着々と進めている。この影響はAI業界にも確実に及ぶ。民主党と共和党のAI振興の考え方には隔たりがあり、大きな方向転換が予想されるからだ。
Trump氏のAI観
「私が再選された暁には、Bidenの人工知能に関する大統領令を破棄し、就任初日にアメリカ市民の言論を検閲する目的でのAIの使用を禁止する」。昨年12月2日にアイオワ州で開催した選挙集会で、Trump氏はこう宣言した。
Biden氏の大統領令とは、昨年10月30日に発表された「安全・安心で信頼できる人工知能」のことを言う。AIの安全性の基準、プライバシーの保護、公平性の推進、米国のリーダーシップの推進など8項目の方針を掲げ、米国でAIに関して初めての法的拘束力を持つ行政命令だ。
ホワイトハウスは先月28日、この大統領令に基づく「国家安全保障目標の達成に向けたAIの活用、AIの安全性、セキュリティ、信頼性の促進に関する覚書(AI NSM)」を発表したところだ。AI分野の米国の優位を維持し、ガバナンスの強化を図るための長文のフレームワークで、各省庁の長官に対して、詳細な政策の指針を示した。
大統領令の破棄は、これらが全て白紙になることを意味する。ではどういう方向に向かうのだろう。
Trump氏のAI観では、AIの可能性と、対中国を重視している。6月のポッドキャスト番組「Impulsive」のインタビューで、同氏は「AIは『スーパーパワー』であり、その能力は『驚異的(alarming)』だ」「われわれは最前線に立たなければならない…… 中国を凌駕しなければならない」と語っている。
中国を意識しながらAIに注力する方針は変わらないだろう。
なお、「大統領令を破棄」の発言の前、Trump氏は「Biden政権の国土安全保障省(DHS)長官は、AIを武器化して、政治的言論を理由にアメリカ市民を標的にしていることを認めた」と述べている。だが実際には、DHSの声明には「市民を標的に」といった内容はない。